後、不思議研究から妖怪研究、妖怪研究から妖怪学へと変わっているので、この用語の変化から研究の進展をみることができます。明治二〇年二月五日の「こッくり様ノ話」という論文では、「こっくりとは狐こ狗狸にして、狐か狸のようなる一種の妖怪物が、その仕掛けたるところに乗り移りて……」「こっくり様御移り下されと言うときは……その実、他の場所に存在せる妖怪の霊を呼びて」と、「妖怪物」「妖怪の霊」という用語を使っています。この「こっくり」の研究がなぜ取り上げられたのかいいますと、明治一〇年代後半から急速に日本で大流行していたからです。そして、この「こっくり」によって、夫婦が離縁したり、詐欺事件が起ったり、病人に「死期」を宣言したり、というような社会問題になっていました。円了は大学時代に、この「こっくり」の源流を知っていました。すでに、述べた大学時代の『稿録』というノートには、カーペンターの『精神生理学の原理』を読ん っくり井上円了の妖怪学16
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