倫理学、という現在でも哲学科で教育されている学問はもちろん含まれていますが、そのころは心理学も重要な学問として教えられていました。この西洋直伝の心理学を学んだ円了は、「心理学を研究している間に、このこと(妖怪)を思い出し」と述べています。こうして妖怪への新たな関心を持ったのでした。明治一八年、円了は東京大学を首席で卒業しました。そして、文部省への就職の斡旋を断わり、哲学の学校を設立することを念願としていました。結局、円了は国費給費生として選ばれて、大学に残りました。そのころから、円了は妖怪に関する研究を始めていました。このことを明治二六年の『妖怪学講義』で、つぎのように述べています。 そもそも私が妖怪学研究に着手したのは、今をさること一〇年前のことで、明治一七年夏期に始まりました。その後、妖怪を学問として研究することが必要であるという理由を述べて、東京大学の内にその講究所の設置を建議したことがあ 8井上円了の妖怪学
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