どの本を読んで、円了は明治という新しい時代の「文明開化」の思想を身につけた青年に成長しました。そして、明治一〇年に、慈光寺の本山である京都の東本願寺の学校に、英語のできる青年僧侶として、全国から選ばれて入学することになりました。そこで、円了は英才であると認められ、東京への留学を命ぜられました。当時の東京には、日本で唯一の大学である東京大学が創立されたばかりでした。この東京大学には多くの外国人教師がいて、授業は英語など外国語で行なわれていました。東京大学へ入学するには、まず予備門(現在の高等学校)に入学しなければなりませんでした。全国から選ばれた青年がこの予備門の試験に集まりました。円了は明治一一年の春に東京へ来て、秋九月の受験にそなえて勉強していました。入学試験は難しかったと、円了は当時を振り返っています。なんとか合格して、東京大学の第一期生になりました。予備門は学生の二割が落とされるほど、猛勉強しなければ残れないと井上円了の妖怪学 6
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