第11回:神田剛さん(工学部建築学科2001年卒業)

 

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🔷建築を共につくるということ🔷

【学生時代

    私は現在、一級建築士として建築やインテリアの意匠設計および工事監理の仕事をしています。設計は、依頼主や私たちを取り囲む社会・環境の要求やその建築物が建つ場所の特性をデザインも含めて、まとめて形にして設計図を作ること、工事監理は工事が設計図面通りに現場で造られているか、予定工期に間に合うかなどを確認することになります。私の東洋大学での学生時代は主に建築計画学やデザインを研究する研究室に所属する一方、学外の様々な建築設計事務所で模型づくりや実際の建築図面の修正などのアルバイトをすることで、座学では習得できない実務やリアルな設計現場の空気に触れることができました。

    大学院修了後は、そのアルバイト先の1つであった建築家・隈研吾さんの建築設計事務所のスタッフとして働くようになりました。

  

1人の建築家のもとで

 隈研吾事務所での在籍期間はおよそ17年で大小数々の建築に担当者として携わりましたが、その中でも最も印象に残る担当物件は、東京オリンピックのメイン会場となった国立競技場です。今まで経験をしたことのない規模のプロジェクトで、約3年毎日現場事務所で他の設計者・工事監理者や施工者と、時には詳細部分を何時間もかけて議論し、無事予定工期通り竣工できました。関わる関係者の人数もけた違いに多いまさに国の一大プロジェクトにおいて、施工のみならず、各種法規、構造計算、設備機械、環境問題、バリアフリー、緑化、音響、照明、鉄などの工業素材、木材をはじめとする自然素材、競技場における消防・避難計画や適切な観客席配置に至るまで、それぞれの分野を極めたプロフェッショナルが必ず世の中にいて、各々がそのスキルを発揮してその知識や経験が合わさって1つの建築が出来上がって行きました。工事関係者にとって、最も充実した気持ちになるのはこのプロ同士のコラボレーションがうまく調和して出来上がった瞬間でしょう。つまり逆をいうと建築家1人だけでは建築は建たないということをこの仕事を通じて改めて痛感しました。

 

素材の面白さ

 もう1つ、国立競技場にはおよそ2,000㎥の国産認証材が使われていますが、素材への付き合い方についても深く考えるきっかけとなりました。この建築には日本全国47都道府県の杉材(沖縄県はリュウキュウマツ)が使われていますが、同じ「スギ」と名前はついてはいるものの、その木目の模様や幅、色、含む油分による艶加減、節の数などがそれぞれの地方で育った環境によって全く異なり、表情や特性が個性として現れているのです。そのような違いを実際に1つ1つじっくり見られたことは私にとって大きな経験となり、今後建築を造る際に大いに活用できると思います。先人たちは(例えば九州の杉の木は油分が多いため造船に使われていたなど)自分たちが生活する地場の素材の特性を経験的、直感的に上手に利用して素材と共に生きてきたことも日本人の誇れる点の1つでしょう。

 

 独立してから

 独立後は、木や石などの自然素材のみならず鉄やアルミ、ガラスなどの工業素材においても、その素材の持つ特性をどうすれば上手にデザインに組み入れることが出来るかを自作においての1つのポイントとして設計活動をしています。自分自身もこれからどのような建築やインテリアが生まれるのか、日々楽しみでなりません。

 

木材を内装材に多用した高校食堂改修内観(設計デザイン:神田剛建築設計事務所)

  アルミパネルを外装材に用いた透析クリニック外観 (設計デザイン:神田剛建築設計事務所)

神田剛建築設計事務所 https://www.tk-and-a.com