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センター長メッセージ

東洋大学 高等教育推進センター長(副学長・経済学部教授)
松原 聡 / Satoru Matsubara

photo――これだけ科学技術が進歩しているのに、教育だけは明治以来の、黒板と白墨というのは……

本学の菅野卓雄元学長が、20年ほど前に私に投げかけた言葉である。

今、日本全国の大学は、文部科学省の「大学教育の質の保証」の方針のもとに、教育改革に取り組んでいる。しかしそれ以前に、私たちにはみずから、黒板、白墨という明治以来の教育手法についての、真剣な見直しが必要とされているのではないか。グローバル化の進展、人工知能の進歩などによる大きな社会変動が進行しつつある今、大学は、そうした時代を読み解き、担い、さらに多様な人々と新しい文化を創造する人材の育成が求められている。だが、黒板と白墨による一方通行の、それも多くの場合大人数の講義では、それは難しい。アクティブ・ラーニングが求められるのは、ここにある。

一方、現在、MOOC(Massive Open Online Course;大規模オンライン公開講座)やJMOOCで、web上で無料でさまざまな講義を視聴できるようになっている。私は今年4月、所属する学科の入学生への挨拶でこう述べた。「今日、この場で、MOOC、JMOOCという単語を覚えてください。家に帰ってパソコンでアクセスしてください。日本中、世界中の大学の名講義を、自由に見ることができます。どんどんそれを見てほしいと思います。そして、もし私たちの講義がそれよりつまらなければ、遠慮なく言ってください。」

本学で在学4年間に学生が負担する入学金、授業料は約400万円である。1コマ2単位の講義に、学生は6.4万円支払っていることになる。私たちがおこなう、6.4万円の「大人数、黒板、白墨」の講義のほうが、web上の、無料のMOOC の講義よりも学生にとって魅力的なのか、の問いが突きつけられているのである。

本学では、スマートフォンなどを用いて、講義で双方向のやりとりが可能なシステム(respon)を導入している。学生に択一式で意見を募れば、瞬時にその結果がプロジェクターに円グラフなどで表示される。また、ひとりひとりの学生の意見も表示され、その場で代表的な意見にコメントすることもできる。私はこれを活用して講義をおこなっているが、講義を見学したresponの担当者は、「先生が、100人の受講生全員と対話をしているようだ」との感想を述べてくれた。

「大学教育の質の保証」をひとつの嚆矢として、これからの時代にふさわしい人材育成にむけて、大学教育の見直しが求められているのである。