社会学研究科 先輩からのメッセージ(白井 美穂さん)

社会心理学専攻 博士後期課程2年 白井 美穂さん

掲載されている内容は2009年6月現在のものです。

写真:白井 美穂さん

本学が養ってくれた、どんな場所でも臆さず発言する力。
議論の重要性に目覚め、研究がさらに楽しくなりました。

Q.現在、社会的にも注目が集まっている「裁判員制度」の研究をされているそうですね

はい。大学時代に受けていた法学の授業で、ある時、裁判の見学に行ったんです。その時の印象がとても強くて。私は裁判って、法律的な専門用語がたくさん使われて、終始冷静に進んでいくものだと想像していたのですが、実際に目にした裁判は、検察官が大きな声を出したり泣き出す人がいたりと、さまざまな感情が交錯するドラマチックなものでした。その時に、「裁判もコミュニケーションなんだ。心理学的な視点で研究する素材がたくさん見つかりそうだな」と感じたことが、そもそものきっかけです。
現在は、「裁判員の量刑判断における要因」をテーマに研究を行っています。簡単に説明すると、裁判の時にどんな情報を出すかによって、裁判の量刑にどのような影響があるのかといったことを分析する研究です。
でも、学部時代の私は学びへのモチベーションはあまり高くなくて、心理学を選んだのも、数ある学部学科の中から消去法で選んでいったら心理学が残ったからという程度だったんですよ(笑)。

Q.それが、大学院まで進もうと考えるようになった理由は?

ひと言で言えば、学ぶ楽しさを知ってしまったからですね。
学部生でも3、4年生になると、ゼミに所属して研究計画を立てるようになりますよね。自分で立てた研究計画に沿って、データを取って、分析して、結果を出すという一連のプロセスが想像以上におもしろかったんです。でも、学部はその醍醐味にちょっと触れたところで卒業となってしまいます。それがとても残念で……。大学院はこのプロセスを何度も繰り返して学問を究めていく場所ですよね。それで、大学院に進むことを考えたんです。

Q.他大学から本学への入学を果たされていますが

裁判心理学を専門とする先生がいたことが、この大学院に入学する決め手のひとつとなったのですが、出身大学の先生方に進学の相談をしていたときに、「社会心理を学ぶなら東洋大学がいいよ」と、真っ先に勧めてくださったからというのも大きいです。
また、大学時代のゼミの先輩がこの大学院に進学していて、キャンパスを案内してもらった際にお会いした先生方が、とても優しくフレンドリーで一気に親しみが持てたことも心を動かしました。実際に入学してみると、どの先生も気さくで、色々なジャンルの相談にも乗ってくださいますし、議論も大歓迎というスタンスでいてくれる。この自由な校風は、研究を進めていくうえでもありがたいです。

Q.議論の重要性は、学長の松尾先生もたびたび説いていますね

ええ、本当にそう思います。でも、議論をしたり人前で話をしたりすることが、以前の私は苦手だったんですよ。学会に限らず、大学院では日々の授業でも発表する機会が多いのですが、発言に対してはいつもたくさんの質問が浴びせられ、ときには批判をされることもあるんです。私も、博士前期課程で修士論文の中間発表をしたときに、予想していなかったような質問や批判をされて頭が真っ白になり、黙ってしまったことを覚えています。でも、その時から「このままではいけない」と強く思い、努力して人前で話すことに慣れるようにしました。以前の私は、せっかく交流の機会があってもなるべく避けて通っていました。外国の方などは最たるもので、英語が話せないコンプレックスから、話しかけられても逃げるようにして(笑)。でも今は、機会があればどんどん人前に出て行きたいと思えるようになりました。今年は、ラスベガスで開かれるSPSP(世界最大規模のアメリカの社会心理学会)にも行ってみたいと思っているんですよ。

Q.その変化がご自身にもたらしたものはなんでしたか?

学ぶことがますます楽しくなった、ということですね。
大学院での学びはすべて自分次第です。自分の意志に従って行動することは、常に判断力や勇気が求められるので大変な部分も多いです。でも、その大変さ以上に「学ぶ自由」を満喫できることが心の底からうれしいんです。人前でも臆さず発言できるようになったことで、自分の研究をより多くの方に知ってもらえるようになり、世界がどんどん広がっているという実感もあります。博士後期課程に入ってからは授業もだいぶ少なくなり、さらに研究に没頭できるようになりました。テーマが近い学生同士で勉強会を行ったり論文を交換したりすることで、また新しい刺激をもらっています。

Q.では、今後の夢や展望を教えてください

やはり、研究者になることが夢ですが、今は、先々のことはあまり考えないようにしています。「まずは研究を進め、できる限り論文を発表して実績を作ることが大切」と先生方もおっしゃいますし、自ら行動して実績を作るほどに未来の可能性が広がっていくということは、私自身も身をもって感じていますから。「裁判員制度」はまだ新しい研究テーマなので、さまざまな可能性を秘めていると確信しています。本学の先生方の真摯な姿勢をお手本にしつつ、ぜひ自分ならではの研究スタイルを確立していきたいですね。