修了生・在学生が語る大学院の魅力(金子迪大 さん)

社会心理学専攻 博士後期課程 在校生 金子迪大 さん

研究には未知のものを発見するという醍醐味がある

金子さん

(掲載されている内容は2017年5月現在のものです)


Q.大学院に、進学しようと思った動機・経緯は?

「幸せってなんだろう?」「どうしたらみんなが幸せになれるのだろう?」という問いに答えを出したかったのが大学院進学を決めた理由です。かつてないほど繁栄を誇る現代社会において、なぜ未だに幸せになれない人がたくさんいるのかは重要な問題です。民主主義が行きわたり、経済的にも豊かになった。ではみんなが活き活きと生を謳歌しているかと言えばそうは思えませんでした。一言でいえば「幸せではないのではないだろうか?」。人を幸せにする方法はきっと多くあると思います。どの方法を選択するかは人それぞれだし好みの問題だと思います。私の好みは「基礎的なところから積み上げていく」ということであり、目標は「全人類が未来永劫にわたって幸せであるためにはどうしたらよいかを明らかにすること」でした。目の前の人を幸せにするだけでなく、隣近所の人を幸せにするだけでなく、より広範囲の人を幸せにするような「幸せ法則」を明らかにして社会に応用していくには、大学院に進学し研究の道を志すことが最適だと考えました。

 

Q.なぜこの大学院を選んだのか?

私が学部生の時、幸せの研究をしようと志した際に専門的に学びたい領域は複数ありました。経済学、社会学、哲学、心理学。どれも面白く、どれも人の幸せに役に立つと考えられます。そんなある日、母校で「ポジティブ心理学」の授業が開講されました。そこに教えに来てくださっていたのが、今の指導教員であり東洋大学の教授であった堀毛一也先生でした。ポジティブ心理学の授業を受けているうちに気がついたのは、それが単に「幸せについて考える」のではなく、科学的に「どのようにしたら幸せになれるか」を実験や調査を用い明らかにしようとしていることでした。私の目標は夢物語やべき論ではなく人が実際に幸せになれるためにどうすればよいかを調べることでした。ならばより正確かつ丁寧に事実を扱うことができる学問が望ましいと思います。そこで堀毛先生の研究室にお邪魔させていただき、そのまま現在に至ります。

 

Q.大学院で学んでみて気づいたこと・発見したことはありますか?

大学院に進学して思ったことは、「現実は甘くない」ということでした。心理学は丁寧に事実を探究することができる学問である一方、一年や二年で壮大な話ができるほど甘くはありません。それは事実に対する徹底的なまでの厳しさがあるからだと思いますが、もともと大きなテーマを持ち込んだ身としては辛かったです。これには学部のときにまったく他の分野(経済学)を学んでいた事が大きいと思われます。ただしあらかじめ経済学を学んでいたために、心理学を相対化して捉えることはできました。
また、大学では勉強ではなく研究活動が主になりますので、自分の研究は誰の役に立つのか、この学問領域に自分はどのような貢献をできるのか、を常に意識しながら生活するようになりました。

                                             

Q.大学院の魅力は?

この大学院の魅力は、何といってもフラットなところ。先生方の仲が良く、指導下の学生以外の相談にも快く応じてもらえることは貴重な環境です。また、院生同士も異なる研究室であっても日常的に仲良くしていることが多いです。制度面でも恵まれており、研究補助制度が充実していることは素晴らしいと思います。特に、院生にとって重大な仕事である学会発表に対し補助金が出ます。私も毎年20~30万円程度の補助を受けており、国内外複数の学会を飛び回ることができています。また、東洋大学独自の研究助成金の存在も大きいです。競争的資金であるため必ずしも獲得できるとは限りませんが、獲得できれば年50万円程度の予算を使うことができます。英文の校正費用(論文を国際誌に最終的に受理されるまでに10万円以上は見積もりたい)やインターネット調査費用(安くて20万円、高ければ天井知らず)をまかなえるため、研究の進捗度合いが早くなります。

 

Q.大学院生活の中でつらかったことは?

研究はすべて自己責任。しかも研究業界は成果主義。そのため、休日をつぶして研究を行うか、将来研究職に就けないか、を常に突き付けられている状態です。必然的に休みの日という概念が無くなり、家でも研究をできるようにすることで、時間があればいつでもどこでも研究研究。土日休日年末年始は関係ありません。長期休暇は研究会や論文執筆。授業期間中は授業(実施含む)や実験・調査でデータ集め。とにかく時間がありません。「好きな事をやっているから良いでしょう」と言われることもありますが、大半はやりたくない事ばかりです。(実験実施、分析発表、資料準備、博士論文執筆など)

                             

Q.論文の研究テーマ・授業の内容

人が生きていく上で、幸せは時間と共に上昇したり低下したりします。私はこのようなダイナミックな現象に焦点を当てて研究しています。特に現在柱として取り組んでいるのが、ポジティブやネガティブな気持ちがどのようなときに持続しやすいのかということです。日々些細なことでニコッとしたりイラっとしたりします。このような経験は一瞬で終わることもあれば数分間、時には数時間続くこともあります。「ニコ」よりも「ニコニコ」、「イライラ」よりも「イラ」のほうが、より幸せに日々を送れると思います。どうすればそのような長く続く幸せ感情、短く終わる不幸せ感情を経験することができるのかを研究しています。

Q.おすすめの教員や、授業などありましたら教えてください。

1)社会心理学演習Ⅳ 堀毛先生

最先端のポジティブ心理学の内容について学べるゼミです。基本的には教科書を一冊先生が指定するので、その本をみんなで輪読します。ポジティブ心理学は日々成長している学問なので、毎年新しい本を読むことで最新の知見に触れることができるのは研究を進めるうえでとても貴重な学びとなります。

 

2)社会心理学総合研究、社会心理学専攻全教員

社会心理学専攻の全教員が参加して行う研究会です。学生は年に1~2回発表します。先輩や先生方から多種多様な意見をもらうことができます。また自分が発表していないときでも、研究上における議論のやり方を学ぶことができます。学会の模擬練習だと思うと俄然やる気が出ると思います。

                                           

Q.大学院での学びを通して、今後目指したい姿や将来進みたい道などありましたら、教えてください。

将来の展望は、希望と不安が入り混じっています。希望は、研究領域で幸せの研究を通して人々を幸せにできるようになることです。心理学を学び始めて早数年、研究もスピードアップし結果も残せるようになりました。このままの成長速度を維持できれば、人々が幸せになれるような多くの研究ができると思いす。また、いずれは大学院生を教え共同研究をする身となり、自分一人ではなく、幸せの研究を志す若い研究者の助けとなることで、より一層幸せの研究が進展することを期待しています。不安は、現代日本において研究者として生き残ることが非常に難しいことです。大学のポストは減らされており、大学教員の仕事も研究よりも雑務や授業が中心です。研究費の獲得も容易ではありません。そのような中で研究を続けていくことができるのか、とても不安です。

 

Q.現在の1週間、または1日のスケジュールは?

    実験室のアルバイト
    ゼミ
    ゼミ
    調査
    ティーチングアシスタント
    リサーチアシスタント + 研究会
    論文執筆

 

Q.今後、東洋大学大学院を目指される方たちへのメッセージをお願いします。

研究には未知のものを発見するという醍醐味があり、また専門職としてほかの人にはできない方法で社会に貢献することができます。東洋大学の大学院は金銭的にも人間的にも恵まれていると思います。研究を進めるうえでの環境は良いと思います。ただし、将来どうするのか(修士課程修了後に就職するのか、博士課程に進学して研究者となるのか)、大学院で何を学び何に活かすのかはしっかりと考えることが大事だと思います。そのことを考えたうえで、幸せな大学院生活を送ってください!

 


プロフィール

金子迪大 さん

東京大学経済学部在学中に、お金以外での幸せの在り方を知りたいと考え、ポジティブ心理学の専門家である堀毛一也先生に出会う。

その後堀毛先生のもとで東洋大学大学院博士前期課程修了。

現在は同後期課程に在学中。