先輩からのメッセージ 堀越 俊樹さん

Q.進学を決意したきっかけは?

大学で学ぶ化学に興味があり、学部三年時に大学院に進学することを決めました。当時大学一年生の私にとって、大学で学ぶ化学は難易度が高いと感じていました。1つの現象や用語に対して複数の視点から学ばなければ納得できない場合が多く、一度の説明では理解ができないためでした。しかし、次々と湧いてくる疑問を調べて解決していくと、これまで学習してきたいくつもの話が繋がり、そこで初めて知識が広がります。その時の達成感と、これまで知らなかった新しい内容に取り組む面白さに興味を持つことができ、大学院で継続して学びたいと思うようになりました。

  

Q. 現在の研究テーマを教えてください。

レーザー脱離イオン化質量分析装置を使用した、新規分析手法の開発を行っています。近年は環境問題や健康管理に対する意識が世界的に高まっていると思います。環境の面では、水質汚染などにおいて規制物質が含まれているかを監視するために分析が必要です。また、食品中の有害物質や禁止薬物の検出、臨床検査にも分析技術が使われています。このような分野に向けて、これまで測定が困難とされていた有害物質の検出や、臨床検査の診断を迅速かつ簡便に行うことができる新しい方法を探索することが私の研究テーマです。

 

Q.研究の面白みはどのようなことですか?

自分の感じた疑問を実際に検証できることだと思います。研究では新しく調べた内容や、これまでの経験を活かして自由な発想で予想を立てることができます。実験は失敗することが多いですが、測定結果から失敗した理由を知ることで、さらに次の実験につなげることができます。研究を続けていくことで研究室の仲間や先生方とも意見を交わすことができるようになり、その点も私が面白みを感じられる部分です。自分が真剣に考えたものに対して周りから指摘をもらい改善していく過程は、今後様々な場面で役立つと確信できる素晴らしい経験だと思います。

 

Q.研究での苦労はありますか?

レーザー脱離イオン化質量分析では、測定する試料と様々な分子を混合して結晶を作製し、分析装置に導入します。分析装置内では作製した結晶にレーザーを照射し、化学反応を起こすことによって分析ができます。しかし、実際にどんな反応が起こっているのかについては分析結果を読み取ることで判断する必要があり、苦労する部分です。様々な可能性を考えて模索しながら、時には文献を調べることによってヒントを得ることもあります。分析研究を通してこのような苦労に向き合うことで、「得られた結果を正しく捉えて応用する力」が育てられると感じています。

 

Q.学会発表に向けた取組み(準備・活動)を教えてください。

日本分析化学会にポスター発表で参加しました。研究内容を伝えるとき、分かりやすく丁寧な説明を心掛けると、どうしても時間が必要となり、限られた時間で発表することに困難がありました。同じような説明であっても言い回しや話す態度によって理解度は大きく異なるため、内容を十分検討して準備しました。

 

Q.学会での発表はいかがでしたか。

初めての発表はとても緊張しました。発表後の質疑応答では、先生方から他分野の研究者ならではのご意見を頂き大変刺激になったのを覚えています。それまでは研究室内での議論がほとんどであったため、普段は気が付かないような全く新しい視点の考え方や知識に触れることができた大変貴重な機会となりました。

 

Q.今後の目標をお聞かせください。

今後は開発した新規手法のメカニズムを解明することが目標です。私はこれまでに一価の遷移金属イオンを利用した新しい分析手法の開発を行いました。ところが遷移金属は一価のイオンとして安定に存在できないため、本来は難易度の高い方法になります。私の研究では材料を工夫することにより可能としているのですが、そのメカニズムは分かっていない部分も多くあります。最近では、X線の装置を使用した実験により、一価の遷移金属イオンがどんな条件で生成しやすいのかが分かってきました。分析法の開発がテーマではありますが、単に試料が測定できるだけでなく、細かな原理まで理解することで更なる改善の手がかりにしたいと考えています。

 

Q.大学院進学を検討している人にアドバイスをお願いします。

大学院では研究活動がメインとなるため、学部四年間では得られない専門的な知識や経験を得ることができます。どんな研究分野であってもなにか一つに対して自分が真剣に取り組み、考えて発表することは卒業後も役立つものと感じています。私は担当教授と進学に関する相談を行うことで、不安を感じることなく決断ができました。迷っている方は是非一度先輩や先生方に相談してみてください。研究では苦労する点もありますが、ポジティブな理由を持って進学すれば充実した時間を過ごすことができると思います。

 

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