先輩からのメッセージ 大内 和樹さん

Q.進学を決意したきっかけは?

私は研究室に配属される前から,親族からの勧めもあり,大学院進学についてある程度のイメージを持っていましたが,最終的に大学院進学を決定づけたのは,研究室配属時における将来への不安でした。研究室に配属されたばかりの時は,回路シミュレータの操作,実験データの整理,コミュニケーション能力など,様々な劣等感を研究室の学友に対して抱き,このまま社会に出て同世代と競争していけるのかがとても不安でした。しかし,卒業研究を進めていくうちに,徐々に自身の実力が向上していることを実感し,このまま継続して大学院で専門知識を深め,思考力を伸ばすことができれば,さらに自信が付くのではないかと考え,進学を決断しました。

     

Q. 現在の研究テーマを教えてください。

研究テーマは「分散電源が大量導入された電力系統のインピーダンスベース手法による安定性向上に関する研究」です。脱炭素化社会に向けて,再生可能エネルギー由来の分散電源が電力系統に多く連系され始めています。分散電源は,系統連系インバータのようなパワーエレクトロニクス(パワエレ)機器を介して電力系統に接続する必要がありますが,パワエレ機器に多く含まれる非線形・非定常要素に起因した電力系統の不安定化が新たな問題となっています。この解決には,電力系統の正確な計測と,系統安定に貢献するインバータ制御が必要なのですが,フーリエベースの線形数式モデル手法では計測精度が足りず,従来のインバータ制御では系統強靭化の指標となる慣性力が足りません。そこで私は,「インピーダンスベース解析」というデータ駆動型の新しい計測手法に,インバータで系統慣性力を模擬する「仮想同期発電機制御」と呼ばれるインバータ制御手法を併用し,電力系統の解析と安定化の向上を目指しています。

    

Q.研究の面白みはどのようなことですか?

自分の研究において,「どの手法を使えば最も良い結果を得られるか」「思い通りの結果が得られない原因は何か」など,結果に至るまでの過程を試行錯誤することが面白いと感じます。思い通りの結果や,さらに良い結果が得られたときに味わう達成感は,本当に最高です。例えば,初めて構築した系統連系インバータ試験装置は,シミュレーションのようには全く動きませんでしたが,後輩と一緒に主回路を再配線したり,プログラムコードを見直したりして,トライアンドエラーを繰り返すうちに,最終的には思い通り動作させることができました(写真.1)。初めてインバータの動作音を聞いた時の感動は一生忘れません。(ぜひ一度,聞きに来てください。)

(写真.1 系統連系インバータの製作風景)

Q.研究での苦労はありますか?

学会発表前や,他大学・学外共同研究先との定例打ち合わせ前など,〆切がある状況にはプレッシャーを感じます。できるだけ研究がスケジュール通りに進むように,日々の進捗を指導教員の先生にこまめに相談するように心がけています。また,途中目標を細かく設定して,自身のやるべきことを明確にするように意識しています。そうやって目の前の課題を一つ一つこなしていくことで,昨日より賢くなった今日の自分を実感することができます。

  

Q.学会発表に向けた取組み(準備・活動)を教えてください。

兵庫県姫路市にて開催された国際学会「The 2022 International Power Electronics Conference (IPEC-Himeji 2022 -ECCE Asia-)」のオーガナイズドセッションにて口頭発表を行いました。この大きな国際会議が2022年に日本で開催されるということは,研究室に配属直後から指導教員の先生から伺っていましたので,2021年夏頃からこれに向けたテーマを設定し,データ計測を開始しました。 Extended Summaryを2021年10月27日に提出し,Acceptanceの通知を2022年1月7日に受け取りました。Final Manuscriptを2022年3月2日に提出し,オンライン参加者向けの講演ビデオを2022年4月15日に作成・提出しました。その後,オンサイト発表用の原稿の作成,英語での発表練習などを行い,2022年5月16日に口頭発表を行いました(写真.2)。

(写真.2 IPEC Himeji 2022 ECCE Asia での発表)

Q.学会での発表はいかがでしたか。

IPEC2022より前にも口頭での学会発表は経験していましたが,COVID-19の影響によりオンサイトでの口頭発表はIPEC2022が初めてでした。しかも,初めての国際学会(英語での発表)であったため,とても緊張しました。しかし前述の準備が功を奏し,自信をもって臨んだ発表は上手く出来たと思います。一方で質疑応答では,伝えたい思いをうまく英語に変換できませんでした。この悔しさをバネに,将来必ず再挑戦したいと思っています。今回のような大きな国際学会では発表だけでなく,国内外の多くの研究者の方々と研究に関する議論を行う機会を頂きましたので,自分の今後の研究や将来像を考える,貴重な経験になりました。

 

Q.今後の目標をお聞かせください。

卒業までに論文誌への論文投稿や学会発表を何件か控えています。これらの査読コメントを参考に,現在行っている「インピーダンスベース手法を用いた電力系統の安定化」に関する研究をさらに掘り下げていきたいと考えています。具体的には,従来の線形数式モデル手法に対するこの新手法の優位性を明らかにし,さらに複雑な構成の電力系統にも適用可能な新しい回路トポロジーを取り入れることなどを目標としています。また卒業後は,現在の研究分野と近い重電・産業用電気機器メーカへの就職が決まっており,大学院で得た専門知識や問題解決能力が十分活かされると期待しています。再エネ由来の分散電源の普及を後押しし,時代の変革に伴って直面する新しい問題にも自分で解決策を提案できるようなエンジニアになりたいと考えています。

 

 

Q.大学院進学を検討している人にアドバイスをお願いします。

「今の自分に自信が持てない」,「自分の能力が社会で通用するか不安だ」という思いを持っている人は,是非大学院への進学をお勧めします。学部で卒業すると研究は1年間しかできませんが,大学院に進学すれば,凡そ3年間の時間があり,研究室配属時に感じていた不安を忘れてしまうくらい,自信を付けることができると思います。また私の研究室のように,他大学・学外の研究機関との共同研究が可能であれば,得られた自分の専門知識,思考力,コミュニケーション能力などが,どの程度社会で通用するかを確認することも可能です。
大学院へ進学することは勇気のいる選択かもしれません。もし進学に対する迷いや不安があるのであれば,気軽に先生方や院生に相談されることをお勧めします。もちろん私への相談も大歓迎です。皆さんが勇気ある一歩を踏み出せるように,全力で応援します。

 

 

 

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