先輩からのメッセージ 斉藤 郁さん

Q.進学を決意したきっかけは?

学部4年時の就職活動で、グループ面接を受けたことです。メーカーの技術職向けの選考で一緒に選考を受けた学生は全員大学院生で、面接官の質問に対する受け答えやエピソードは私のものとは比べ物にならないくらい分かりやすいものでした。そこで自己分析をし直したところ、論理的思考力、答えのない課題に対するアプローチの仕方、話し方など、理工系の人材に求められる能力が私には不足していると感じました。そのことを所属する研究室の教授や先輩にご相談したところ、研究室での生活が、そういった能力向上の訓練になることを教えていただきました。学部3年の秋学期から仮配属していたこともあり、実際にその実感もあったので、大学院進学を決めました。

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Q. 現在の研究テーマを教えてください。

研究室では、新しい炭素材料(ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等)の化学合成に関する研究が進められています。私は「マリモカーボンの合成と化学修飾」というテーマに取り組んでいます。マリモカーボンは所属する研究グループが開発し、長年研究を続けてきた新しいナノ炭素材料で、市販の炭素材料にはない特徴があります。それらの特徴を活かして、固体高分子型燃料電池の材料に用いることで、優れた発電性能が得られています。私はこのマリモカーボンに化学処理を施し、新たな機能を付加した複合材料を合成することで新しい用途開拓を目指しつつ、研究を行っています。酸化条件と生成物の関係を解明することで、任意の特性を持つマリモカーボンが作れると考えられます

 

Q.研究の面白みはどのようなことですか?

「答えがないことに取り組む」ということだと思います。学部時代の学生実験では、テキストにある実験をやれば答えが出ますが、実際の研究にテキストはなく、論文通りの実験をやっても予測通りの結果が得られないことはたくさんあります。しかし、成功にせよ失敗にせよ、そこには理由があります。データから何が言えるのか、先輩や教授にご相談しながら読み取り、次の実験条件を考え、試行錯誤を繰り返すことで、必ず新しいことが分かってきます。失敗から分かることもたくさんありました。研究をする上で新しいことが分かることはもちろん、あらゆることを自分で考えられるようになることや、考えていた通りの結果が得られた時に面白さを感じます。今までに扱ったことのない分析装置も多数使用しました。こういった取り組みは学部ではできない貴重な経験だと思います。

 

Q.研究での苦労はありますか?

たくさんあります。まず学部までの授業とは違う取り組みなので、最初は研究の進め方もわかりませんでした。研究分野の勉強をしようと思い、教授にいただいた論文を読んでみても、直訳では内容が全く分かりません。加えて私の扱っている材料は市販品ではないため、論文通りの条件でも予測通りの結果は得られないことがほとんどです。さらに、私の実験は材料の合成から評価までかなり時間がかかります。学会発表をするとなると、決められた時間の中で論文調査・実験・予稿やポスター作成を行う必要があり、計画性も必要です。特にコロナ禍で時間的制約がある中での研究活動は非常に大変でした。このように、苦労はたくさんありますが、困ったときにはすぐに相談でき、やってみたい実験は、なぜ必要かを説明すればやらせていただけます。何度も周りに相談し、失敗を重ねて研究の進め方、論文の読み方、計画の立て方、発表の仕方、資料の作り方などを学んできました。

 

Q.学会発表に向けた取組み(準備・活動)を教えてください。

2021年の9月に「INTERFINISH 2020 20th World Congress」で発表することが決まっています。現在は予稿作成の段階ですが、日本語での発表と同じようにはいきません。Titleのつけ方、単語の1つでも、どの表現にすべきか調べる必要がありました。今後追実験を行い、発表用のスライドおよび発表原稿作成や、発表練習を行う必要があります。予稿やスライド作成については、論文を参考に進めることができますが、発表に至っては研究の知識以外にSpeakingListening両方の能力が求められます。非常に難しいことですが、国際学会での発表が自分自身の成長につながることは間違いないと思うので、周りに協力を仰ぎながら精一杯取り組みたいと考えています。

 

Q.今後の目標をお聞かせください。

酸化処理によって導入されるマリモカーボンの表面酸性官能基の種類や量、物性を制御することです。系統的に酸化処理を行った結果、酸化条件と生成物の官能基の種類や量に関係が見えてきました。今後は物性測定などを行い、任意の特性を付与したマリモカーボンをつくりたいです。これにより、マリモカーボンと酸化処理による効果を掛け合わせた新しい材料が出来るだけでなく、マリモカーボンの酸化反応機構の解明にもつながると考えられます。マリモカーボンは共同研究先も含めて、たくさんの研究が行われています。私の研究が後輩たちの研究に役立つこと、さらには材料としての利用に貢献できるように研究を進めていきたいです。

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Q.大学院進学を検討している人にアドバイスをお願いします。

理工系の大学院で学んだ経験は、業種・職種に限らず活かすことができると思います。私は自分自身のスキルアップの意味で進学を決めたので、進学決定後もしばらくは研究がやりたい、面白いという実感はありませんでした。しかし小さなことでも成功体験を積むと、次に踏み出すことができます。4年生の最後にそのことに気づき、研究に力を入れて取り組むようになった結果、今まで知らなかった新しいことに気づくようになり、自分の視野や出来ることの幅も広がったと、就職活動をしていて実感します。研究は実験だけではなく、むしろそれ以外のことを多く学べる良い手段だと思います。現時点で研究がやりたいと思わなくても、やりたいことが決まっていない・働くことに不安がある方は、社会人の一歩手前の準備段階として大学院に進学することを強くお勧めします。社会人になる前の今のうちに、多く経験と失敗をして成長に繋げてもらいたいです。ちなみに女性の修士卒は需要があると聞きます。迷ったら興味のある研究室の先生にご相談してみてください。

 

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