先輩からのメッセージ 浅海 裕一郎さん

Q.進学を決意したきっかけは?

学部4年生の頃先輩の学会発表を見に行った際、多くの発表を見て自分には研究の議論をできるだけの知識が足りないこと、自分の想像以上に多種多様な研究が世の中にあることを知りました。その時に、まだ世に出ていない技術や知見を探求する研究というものに魅力的に感じ、自分ももっと専門的な知識を身につけ、研究する能力や議論する能力を身につけたいと思ったのがきっかけです。また、同じように研究をしている人たちと多く出会い、その人の考え方や想いを共有することで、物事を多角的にみる力を身につけ、自分の視野を広げていきたいと思い、大学院への進学を決意しました。

  

Q.現在の研究テーマを教えてください

腫瘍細胞の血管外遊出を評価するための、マイクロ流体デバイスを開発しています。がんの転移は、腫瘍細胞が血流に乗って体内を循環し、血管外へ遊出して増殖することで起こります。この際、遊出を促進する物質の多い臓器に転移しやすいと考えられているため、このような物質に対する腫瘍細胞の応答や、応答を阻害する物質の影響の評価が必要です。そこで、血管外遊出評価用のマイクロ流体デバイスを開発しています。マイクロ流体デバイスは、ビーカーやフラスコといった実験器具に比べ格段に小さいので、極めて少ない量の試料と試薬で、短時間で分析を行うことができます。本研究はがんの転移のしくみを明らかにするだけでなく、転移を抑制する薬剤の開発にもつながります。

 

Q. 研究の面白みはどのようなことですか?

ほかの多くの研究にも言えることですが、「何が正解か分からない」ことです。学生実験ではこうすればこうなるという結果が分かったうえで実験を行います。しかし、研究では予測していたことが起こるとは限りません。予想外のことが起こるたびに考察し、それを解決していくことに面白さを感じます。また、自分の目では見えない細胞の移動や、物質の濃度勾配をどのようにすれば数字やグラフとして見えるかを考え、検討し、実際にデータが出た時にはやりがいを感じます。そしていつか自分の研究が人の役にたつ可能性があると考えると、研究へのモチベーションが高くなります。

 

Q. 研究での苦労はありますか?

研究での苦労は、なかなか結果が出ないことです。私は、1年以上全く結果が出ませんでした。大学院に入った当初は「たくさん学会発表しよう」と意気込んでいました。しかし、結果を出さなくては、学会発表することはできません。思っていたように結果が出ず、モチベーションも下がり、つらい日が続きました。それでもあきらめず、担当教員や同じ研究室の友人に相談したり、多くの論文や本を読んだり、ひとつひとつ原因であると思われることを検証しました。その結果、学会申込〆切の数週間前に原因を見つけ出し、実験が計画通りにできるようになり、学会で成果を発表することができました。

 

Q. 学会発表に向けた取組み(準備・活動)を教えてください。

今年3月初旬の「International Symposium on Nanoarchitectonics for Mechanobiology」に参加し、ポスター発表をしました。学会発表の準備で一番時間をかけたのは、スムーズに英語でポスター内容を伝えるための発表練習です。英語での発表は初めてだったので、練習では言葉に詰まり、ポスター1枚を説明するのに数十分かかりました。研究発表では、日常会話とは違い専門用語が数多く出てきます。その専門用語を英語で話せるようにするだけでなく、用語についての説明をしなくてはいけないので、一つ一つの単語を念入りに確認しました。その結果、最終的にはポスター1枚を10分程度で説明できるようになり、発表当日もスムーズに発表することができました。

 

Q.学会での発表はいかがでしたか。

学会自体は日本で開催されたもので、国際学会ではありますが、日本人の参加者が半数以上を占めていました。しかしながら、ポスターを見に来てくれたのは外国の方ばかりでした。練習した甲斐もあり、テンポよく聞き手に伝わるように発表することができました。また、質疑応答でもしっかりと議論することができました。ただ、ネイティブでない人と議論する際に、相手側が少し訛っており、ところどころ聞き取りづらい言葉や単語があり、英語を母国語としない人と専門的な話をすることの難しさを感じました。伝えるのは大変でしたが、お互いに理解しようとする姿勢の大事さを感じました。

 

Q.今後の目標をお聞かせください。

今後の目標は、マイクロ流体デバイス内の環境をより生体内に近づけていくことです。腫瘍細胞の転移には、免疫細胞や血小板、血流などいろいろな因子が関係してきます。今はまだデバイス内で生体内のほんの一部しか再現できていないので、今後は多くの因子を加えていき、デバイス内を実際の生体内に近づけていくことで、より精度の高い結果を得られるようにしたいです。精度の高い結果を得られることができれば、転移を抑制する薬剤や、転移の仕組みの解明につながり今後のがん治療に貢献できると考えています。また、この自分の研究をより多くの方たちに知ってもらえるように、学会やゼミを通してプレゼンテーション能力を磨いていきたいです。

 

Q.大学院進学を検討している人にアドバイスをお願いします。

大学院では、ただ単に専門的な知識だけではなく、人に伝える能力や計画的に物事を遂行する能力、問題解決力など社会に出た時に大事であろう能力も身につけられると思います。また東洋大学の大学院では、奨学金制度や国際学会での英語発表のためのワークショップなど様々な制度が充実しているため、多くの経験をしてステップアップしたいと思う方にはおすすめの環境だと思います。私は大学院に進学し、思っていた以上に色々なことを学べ、とても満足しています。大学院進学を検討しているなら、入った後自分が何をして何を得たいかを明確にすることが大切かもしれません。

 

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