先輩からのメッセージ 鈴木 郁弥さん

Q.進学を決意したきっかけは?

学部生だった当時、院生の先輩との出会いが、大学院進学に興味を持ったきっかけでした。豊富な専門知識や、高い解析技術を持ち合わせており、純粋な憧れから大学院に興味を持ったことを覚えています。学部1年生の頃から現在の研究室の活動に参加させて頂いておりました。それでも4年間ではあまりにも時間が足りないと感じました。大学院での時間はそれまでの大学生活とは違い、講義も少なく、自分が充てたい時間に多く時間を費やすことができるのがとても魅力的でした。専門分野をより深く学び、自分の成長に繋げたいと思いから大学院への進学を決意しました。

 

Q.現在の研究テーマを教えてください。

学部の頃から伝統木造建築物について研究してきました。伝統木造建築物は日本の伝統、文化そのものであり、後世に残していくことは私達の義務と言えるでしょう。しかし、建てられた年代が古いため、当然現在の建築基準法で定められた規定は満足しておらず、構造性能の把握、確保は急務となっています。そんな中、僕は2016年に発生した熊本地震で話題となった余震に着目しました。本震では耐えた建物も、余震の影響を受け倒壊に至ったという事例が数多く報告されており、現在無視できない問題となっています。そこで僕は、伝統木造建築物が余震に対してどの程度耐えうるのかということについて研究を進めています。

 

Q.研究の面白みはどのようなことですか?

研究活動は自分で問題提起や仮説を立て、それに対して自分なりの着眼点や指標をもって答えを模索する作業だと思っていますが、もちろんその道中に空振りや検討違いも生じてきます。しかし、そのような時こそ、これまでに自分の中になかった知見が積み重ねられ、思考の幅を広げるチャンスだと感じています。一見見当違いな分析であっても、新たな仮説が生まれたり、これまで関心の薄かった分野に視野を広げたりすることに繋がります。こうして、分析や検討を繰り返し、様々なことに寄り道をして、自分の知識が増えていくことが研究の面白さだと思います。

 

Q.学会発表に向けた取組み(準備・活動)を教えてください。

私は2017年度日本建築学会大会(中国)と2018年度日本建築学会大会(東北)で学会発表を行いました。いずれの発表も、小幅板で構成された新たな木造耐力壁の有用性の提案を行いました。新たな耐力壁の提案なので、教授と共に試行錯誤し、様々なパラメータを一つ一つ追跡しながら壁の構成を決定していき何度も実験を重ねました。実験がひと段落つき、分析などに目途が立っても、一年目は論文というもの自体に馴染みがなかったので、書き上げるのにも苦労しました。先輩や教授に何度も校正していただき、作成したのを覚えています。また、発表資料も限られた時間の中で初めて聞く方々にできるだけ分かりやすく伝えるため、何度も訂正し作り上げました。

 

Q.学会での発表はいかがでしたか。

学会発表の場はとても刺激的でした。それこそ一年目は自分の発表のことで一杯一杯になり、質疑応答もあまりうまくいってなかったと思います。しかし、二年目になりようやく他の方々の発表を聞いたり、冷静に質問に対して受け答えしたりすることが出来ました。他の参加者の発表は、自身の知識になることはもちろん、同年代の研究状況などを知ることができ、とても刺激になります。また、自分の発表においても質疑応答により第三者の新鮮な意見をもらい、さらなる研究への飛躍につながります。実験、分析、執筆、そして発表と苦労する道のりが長く感じますが、自分の成長に大きくつながる場だと思います。

 

 

Q.今後の目標をお聞かせください。

現在の研究テーマである、伝統木造建築物の余震に対する構造性能をより精度よく評価することです。これまで行ってきた研究では、建物が地震を受けた時にどれくらい変形したかという応答変位のみを指標としてきたのですが、余震の特徴でもある地震の継続時間という観点から、地震のエネルギー量に着目して検討を行っています。視点が変われば指標も変わり、分析の手法も変わってきます。構造性能評価という分野に正解という概念は存在しませんが、様々な角度から問題を検討し、一歩一歩着実に知見を重ね、より高い精度での評価ができるように精進していきたいです。

 

Q.大学院進学を検討している人にアドバイスをお願いします。

大学院の2年間は、学部の時間とは全く違った密度で過ごすことができます。専門知識が増え、電算システムなどのテクニックも身につき、それによって研究の質も向上します。確かにまわりの友人が就職していく中で、大学院という選択をすることは、少し勇気がいる行為かもしれません。しかし大学院で経験できることのほとんどは、今後の人生ではなかなか経験しにくいことが多いです。そして何より自分の好きなようにしていい時間が与えられるのは、ほとんどの方は大学院が最後の機会だと思います。是非もう一歩を踏み出して、未来の自分に投資して欲しいと思います。

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