教員からのメッセージ(国際観光学専攻 吉岡 勉准教授)
思考回路を訓練し、物事を整理し、考え、悩み、新たなものを生み出す
(掲載されている内容は2018年12月現在のものです)
Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。
高校卒業後にシステムエンジニアとしてIT業界で働いているなかで、マネジメントを行うために必要な管理会計の知識がないことを痛感し、34歳にして大学で学び始めました。その後、大学院への進学を志すようになり修士(MBA)課程へ進学し、その頃には漠然と、「学ぶ側」から「研究し、教え、指導する側」を目指すようになりました。学んだ管理会計の知識が実務においてすぐに役立ったので、その事柄を探究し、広く世に知らせる側に身を置きたいと思ったからです。ちょうど修士課程の1年次に履修した科目のご担当が一般企業勤務を経て博士学位を取得なさって研究者になられた先生でしたのでご相談申し上げたところ、博士学位の取得が不可欠とのアドバイスを頂き、MBA取得後すぐに大学院(博士後期課程)へ進学しました。そして2012年に研究者になりました。
Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。
これまで「サービス業の管理会計」をテーマとし、具体的にはホテル業、レストラン業についての管理会計(レベニュー・マネジメント、マネジメント・コントロール、生産性など)を研究しています。企業が顧客へ提供するものに、無償のものは存在しないと考えています。つまり、すべてのサービスは有償で提供されており、それが本来の姿だと思います。提供するサービスでいかに収益を獲得するのか、そして費用がいかなるもので、どのように利益を獲得するのか、いかにキャッシュを獲得するかといった点は、今後ますます研究していく必要のある分野です。とくに観光に関する領域のサービス業について、研究を深化発展させていきたいと考えています。
Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったこと?
つらかったことは、「生みの苦しみ」です。博士後期課程在学中は仕事と研究の両立がたいへんでした。毎朝5時前に起床して出勤までの時間を研究に用いるとともに、夜遅くまで研究に打ち込みました。毎週の研究指導では、指導教授より数時間に及ぶ指導をいただき、その週末のうちに文献をかき集め、翌週の研究指導に備えてレポートを作成するという日々が続きました。
嬉しかったことは、やはり博士学位の取得です。長時間に及ぶ口頭試問(ディフェンス)の後、合格の知らせを受けたときは感無量でした。自室でしばらく動けなくなったことを覚えています。
最近でも、つらかったこと(今でもつらい!)は変わりません。文献リサーチやフィールドリサーチ、各種の分析に取り組んでいる期間、また、それらを論文の形に仕上げることは、けっして楽ではありません。しかしその論文を投稿し、査読を経て受理されたとの連絡を受け取ったときは、嬉しさがひとしおです。
Q.大学院で学ぶことの魅力とは?
自らが大学院生だった頃のことを思い返すと、「思考の訓練」を受けたのだと思います。物事を論理的にとらえつつ、論理的ではない物事を見抜き、いかに論理性を持たせるかといった訓練を受けられたことによって、その後の研究において物事の因果を整理しつつ問題点を浮き彫りにし、その解決に向けてまた論理的に思考することが(以前よりは)できるようになりました。
定量的な研究であれば当然のこと、定性的な研究であっても論理性は不可欠です。また、ビジネスの実務においても同様です。そこで、大学院での学びは、研究と実務の両面に有益なものであると確信しています。
Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。
先人の知恵から学び、その上に新たなものを築きましょう。
大学院は研究の場です。単に先人の知恵を学ぶにとどまらず、先人の知恵を参考にしながら、つまり先行研究を学び、指導教授のアドバイスを受けつつ、指導教授と議論しながら、自らオリジナルの理論を構築していくための研究機関です。これは、誰にでもできることだと思っています。ただし条件としては、「やる!」と決めてその意思を貫く人であることです。新たなものを生み出すプロセスが容易ではないことは事実です。しかし、やりがいのある、人の一生においてそう多くはないチャンスでもあります。
プロフィール
氏名: 吉岡勉(よしおかつとむ)経歴: 現在、東洋大学大学院国際観光学研究科国際観光学専攻 准教授
1986年に茨城県立竹園高等学校卒業後、システムエンジニアとして企業勤務。
その傍ら、2002年に大学(通信教育課程)へ入学し2006年卒業、2007年に大学院(MBA課程)へ進学し2009年修了、2009年に亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科(博士後期課程)へ進学し2012年修了。
博士(経営学)。2012年に大学教員となり、2017年に東洋大学へ移籍
専門: 管理会計
論文等:
吉岡勉 [2018] 「宿泊・飲食サービスにおける生産性の問題に関する一考察-先行研究レビューによる一考察」 『余暇ツーリズム学会誌』 (5) pp. 85-90.
吉岡勉 [2016] 「マネジメントコントロールシステムとしてのマザーリングマネジメント」 『余暇ツーリズム学会誌』 (3) pp. 25-32.
吉岡勉 [2014] 「料飲産業のレベニュー・マネジメントに関する考察 - 宿泊産業におけるレベニュー・マネジメントとの比較に焦点をあてて」 『余暇ツーリズム学会誌』 (1) pp. 49-56.
吉岡勉 [2012] 『ホスピタリティ戦略会計-ホテル産業における戦略会計に関する研究-』(博士論文) 亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科.