先輩からのメッセージ 渡邊 夢良己さん

Q.進学を決意したきっかけは?

大学院に進学した理由はいくつかありますが、最も大きな理由となったのは、学部の学びでは物足りなさを強く感じたことです。学部時代には自分自身の知見を広げるために、所定の単位数以上に、コースやカリキュラムは気にせず、少しでも興味のある講義は受講することを心がけていました。元々、机に向かって何かを暗記するという高校までの「勉強」はあまり好きではなかったのですが、大学に入ってからの「学問」は、理解ができないのではなく知らないということが多く、自分の知識にないものをはじめて見聞きすることが興味深く、非常に有意義に過ごすことができたと感じていました。

しかし、就職活動を意識した際に自分のものになっている知識の少なさに気づき、同時にもっと学びたいと強く感じたことから、進学を視野に入れ始めました。その折、所属研究室の先生や先輩から大学院の話を聞くとともに、“飛び級制度”についても案内を受けたことから、前向きに検討するようになっていきました。そして実際に、進学するかもしれないということを踏まえた上で卒業研究を始め、進めていくなかで自分の知識の未熟さを痛感し、同時に“このまま終わらせたくない”と強く考えました。そして、学部最後の1年間をより濃厚なものにしたいと考えたため、飛び級制度を利用することを決めました。

 

Q.現在の研究テーマを教えてください。

デジタル化する社会の中で私たちの利便性は非常に高まっているかのように感じます。従来議論されていたデメリットはほとんど解消されていますし、あらゆる場面において、私たちの生活はもはやデジタルを常に活用しています。しかし、私たちはデジタル化され、いち機能となったツールよりも実際に手にして重さや質量を感じる道具を大切にしてはいるのではないでしょうか?例えば、スケジュール管理アプリよりも紙の手帳を用いたり、電子ノートよりも紙のノートと筆記具を用いたりといったことを好む人が多いと考えます。それはなぜでしょうか?そのような観点から、アナログ(従来のモノ)の魅力を明らかにし、再確認したうえで、それらをデジタルに組み込むという近年のデジタル化に対する新たなアプローチであるという考えを基に様々な研究をしています。修士課程においては、ドローウィングソフトを題材に研究を進めてきました。実際に描く感覚をデジタルに組み込むために様々な要因を検討し、その中から「音」に着目し、検証を重ねた上で実装しました。

 

Q. 研究の面白みはどのようなことですか?

もちろん在り来たりではありますが、研究が順調な時、開発で滞りなく正常に動作した時や、実証実験で期待した通りの結果が出た時など、やりがいや面白味は強く感じます。しかし、もっとも研究を進める中で、最も面白みを感じる瞬間を挙げるとするとそれは少し異なります。
自分の研究内容を進める中で行き詰まってしまっても、必ず、誰かからヒントをもらうことができます。それは、今日まで続く学問とその情報からであったり、研究室の先輩方や先生方からであったりと様々でした。ときにそれは、自分のことを思わず「すごい!」と思ってしまうような閃きがあり、調査した結果、すでに存在していたというケースもあります。そのような件も含めて、上記のような環境に自分が身を置くことができていることへの感謝の気持ちや、愕然とする気持ちなどを含め、自分の知らない知識を手に入れることができた時、研究を進めることができることが何よりも面白いと考えています。

 

Q. 学会発表に向けた取組み(準備・活動)を教えてください。

初めて学会に参加することとなり準備を進める際、まず、これまで自分が行ってきた研究を文章にすることが大変でした。研究に関しては、毎日多くの時間を費やして調査を進め、自分でわかるように整理し、時に検証し、時に実証し…というように、やるべきことが決まっている状態であったため、それほど負担は感じませんでした。

しかし、そのどれもが、自分の研究に興味や知識のある先生や研究室の先輩方と進めていた内容であったため、全く理解も興味もない第三者に伝えるために、わかりやすく、かつ専門的に稚拙にはならないように説明をするということに一番時間がかかりました。実際に学会への参加が決まった後は、採用された論文の内容を今一度確認しながらスライドにまとめたり、旅程を立てたりといった事務的作業はありましたが、それほど負担に感じることはありませんでした。

 

Q.学会での発表はいかがでしたか。

私が参加したのは国際学会であったため、日本語ではなく、英語での発表でした。原稿は用意していたものの、英語で説明するということは初めての経験だったため、きちんと伝わっているかという不安がとても大きかったです。また、質問された際の返答の仕方などは非常に戸惑いました。英語がもともと得意ではなかったため、ちゃんと喋れるかということに非常に緊張感を抱えていました。しかし、実際に発表を終え、banquetなどで交流する際に自分の研究について話す機会も増えていくことで、そのような不安はだいぶ薄まってきたように思います。もちろん言語の壁はありますが、正誤ではなく伝えるということを目的として接することによって、なんとか乗り切っているかと思います。

他の様々な研究に触れることができるという点でも非常に面白いです。自分とは全く関係ないような話を聞き、将来の可能性を知ることができるのも、関連性がありそうな研究について聞き、議論を交わすのも、とても有意義だと強く感じます。

 

Q.今後の目標をお聞かせください。

研究内容に対しては様々な方から助言をいただける立場にありますし、未熟である・未完成であるという点からの「精進せねば」という気持ち的な課題などは別として、それほど「ここが課題だ」と強く認識したことはありません。現在私自身が感じている課題としては、金銭面です。進学してから、研究に費やす時間を増やしたいと考えると、なかなか金銭的にシビアな状況になるという両立の仕方・兼ね合いは常に課題としてついてまわっています。年代的に一般的には安定した稼ぎがあるという点から、両親などから金銭的な援助が一切ないことに加え、実家に生活費を納めていることもあるため、万人に共通する課題ではないと考えますが、現在の課題となると私にとってはこの点が最も大きいかと思います。

模範的な回答とはかけ離れてしまうかもしれませんが、現在、将来の夢として掲げているような職業的目標はありません。もちろん様々な可能性を検討し、そのどれもが魅力的だとは思っている一方、目指すところは定まっていません。これだけ社会が目まぐるしく変容している今日において、自分が社会に出て職につく時は、今はまだ存在していないものもたくさん出てくるのではないかと考えていますし、新たな働き方が一般的になっているのかもしれません。だからこそ、私が選んできた結果である博士後期課程に対してまずは真摯に向き合いたいと考えています。

  

Q.大学院進学を検討している人にアドバイスをお願いします。

進学を決意するためには、本当に様々な検討事項があると思います。自分の人生に関わる大きな決断になるかと思いますし、誰かに相談することも安易ではないかと思います。ただ、だからこそ自分で決断することで、より有意義な時間を過ごすことにつなげられると私は考えています。

私は大学院に進学したことを後悔していません。自分の好きなことや学びたいこと、知りたいことなどといった、自身が選択したテーマに時間のある限り没頭することができるという環境は、日常生活のなかではなかなか手に入れることが難しいと考えます。しかし、大学院においてはそれが当たり前のことです。進学を検討していた頃、そのような状況に身を置くことができるのは、チャンスとしても自分自身の気持ちの熱量としても「今しかない」と強く感じていました。もし、そのような気持ちを抱いているのであれば、進学をおすすめします。

 

先輩からのメッセージトップへ