佐藤 里野

〈新入生へのメッセージ〉

 この学科の1年生が必ず履修する「フレッシャーズ講読セミナー」は、ひとクラス20名程度の少人数の演習形式の授業です。テーマ別のクラスではないため、受講生の興味の対象(文学、言語学、英語教育、あるいはまだわからない・・・)は様々です。それでも多くの学生に共通していることは、英語圏に留学したい、あるいは旅をしてみたいという目標や希望があることです。英米文学科での学生生活の早い段階で、海外での勉強や経験を視野に入れている学生がたくさんいることはとても良いことだと思います。もちろん、大学生全員が留学するわけではありませんし、ましてや留学さえすれば大学生活が充実するというわけでもないのですが、教員として、より多くの学生が、国際的に学び、活躍できるよう、サポートしていきたいと考えています。

 一方で、学生の皆さんには、ここ東京で学ぶことにも、海外に向けるのと同じくらいの興味や熱意を持ってほしいと思っています。これは、私が自身の留学生活で感じたことでもあります。アメリカ演劇や舞台芸術を専攻していた私は、大学院時代の1年間をニューヨークで学びました。授業には休まずまじめに取り組み、劇場や美術館に足を運び、また、お金がかからなくても出来ること―様々なイベントに参加したり、図書館を利用したり―にも時間を使いました。ニューヨークで過ごすことのできる限られた時間の中で、出来るだけ多くのことを得なければという、半ば焦りのような気持ちにも突き動かされて、日々忙しくしていました。そんな中でふと、東京にも、ニューヨークと同じくらい、見るべきもの、聞くべきもの、触れて学ぶべきものがたくさんあった/あるのだということに気付きました。そして、留学生活と同様、東京で学ぶことのできる時間にも限りがあるものなのだということにも。

 当たり前のことを言っていると思われるかも知れませんが、わかっているつもりでも、東京でついつい漠然と時間を過ごしていると、身近にある学びの機会に気付かず、それを逃してしまうかも知れません(実際私自身も、そうだったように思います)。専攻するのが演劇でなくとも、英米文学科で学ぶ皆さんにとって、東京という都市で学ぶことの利点は少なくはありません。白山のキャンパスから遠くないエリアに、劇場、美術館、アートギャラリー、映画館は数多くありますし、積極的に探せば、英語で行われるイベントもたくさん見つかります。ありふれている、いつでも行ける、などと思っていると、時間はあっという間に過ぎてしまいます。今の環境にある様々な機会を無駄にしないよう、東京での日々を有意義に過ごしてください。ここで身につけた知識や視点は、海外に行ったときに必ず役立つはずです。まずは日頃の授業から、目的を持って積極的に取り組みましょう!

 

〈自己紹介コラム〉

専門分野:アメリカ文学(演劇)

主な業績:

「小説から演劇へ―Suzan-Lori ParksのThe Red Letter Playsにおける文字の役割」 『アメリカ文学』(日本アメリカ文学会東京支部会報77号)

「ブルータス・ジョーンズの死と『銀の弾丸』―黒人の魔法に溶ける貨幣・労働・自己」 『アメリカ演劇』(日本アメリカ演劇学会26号)

研究テーマ:現代アメリカ演劇における上演とテクストの分析

 

〈関連サイト〉

研究者総覧(researchmap):https://researchmap.jp/rs50771284

 

〈新入生のための推薦書〉 

書名:『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』

著書名:水村美苗

出版社:筑摩書房

推薦理由:この本のテーマは、英語が共通言語とされているグローバル社会の中で、日本語の在り方、そして日本語の未来について著者が感じている諸問題です。「十二歳で父親の仕事で家族とともにニューヨークに渡り、それ以来ずっとアメリカにも英語にもなじめず、親が娘のためにともってきた日本語の古い小説ばかり読み日本に恋いこがれ続け、それでいながらなんと二十年もアメリカに居続けてしまった」という経歴の持ち主である著者のユニークな体験に基づいて書かれた文章がとても魅力的です。

 

書名:『アンティゴネー』

著書名:ソポクレース(呉茂一訳)

出版社:岩波文庫

推薦理由:政争の果てに戦死した兄を埋葬することも悼むことも禁止された妹、アンティゴネーの物語です。権力に屈することなく、毅然として自分の正義を貫くアンティゴネーのキャラクターは、読者の想像力を大いに刺激します。ギリシア悲劇の傑作として名高い作品ですが、演劇に限らず、英語圏の文化・文学に興味がある学生に、ぜひ読んでもらいたい一冊です。