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【2015年度】人間環境デザイン学科デザインレター

2015年度

Designletter19  2016年3月31日
スウェーデン王立工科大学からインターン生受け入れ
プロダクトデザインコース・教授 高橋良至

1昨年末、スウェーデン王立工科大学(KTH: Kungliga Tekniska Högskolan)大学院 生産・経営工学研究科メカトロニクスコースと東洋大学大学院 福祉社会デザイン研究科人間環境デザイン専攻の間に、教育や研究に関する交流協定が結ばれました。この協定に基づく初めての試みとしてKTHの学生をインターンとして東洋大で受け入れることとなり、 KTHメカトロニクスコース修士2年生のジミー・カールス君とヨハン・シーレンシャーナ君が2月中旬に来日しました。修士課程は2年間ですので、彼らは6月の課程修了に向けた最後の課題である修士論文の研究に取り掛かるためにやって来ました。ちなみにスウェーデンの学年末は日本と異なり6月で、新学期は9月となっています。

2彼らは本学でパーソナルモビリティビークル(PMV: Personal Mobility Vehicle)に関する研究に取り組みます。人間環境デザイン専攻メカトロニクス・デザイン研究室(高橋良至研究室)では、超小型の乗り物の開発を行っています。跨って脚で地面を蹴り移動するもので、蹴り出しによる加速をセンサで検出し、車輪のモータで走行をアシストすることで蹴り出す力が弱くても楽に移動することができます。公共交通機関と自宅などの間の、いわゆる”ラストワンマイル“と呼ばれる超短距離移動をサポートすることが目的です。また、足腰が弱っている人が可能な限り自分の体を動かして移動することで健康に過ごす期間を延ばし、介護予防にも役立てることを目指しています。今回インターンの学生は、安全な運転、直感的な運転操作を実現するために、モータのアシスト量やハンドルを切る量をコンピュータで最適に制御する方法等について研究を行います。研究に対する彼らの姿勢はすばらしく、全体の研究計画、今日やること、今やらなければならないことを議論し、リストアップして順位をつけ、素早く確実に実行して行きます。このようなシステム工学に基づく問題解決のアプローチは、期間内に成果を出さなければならないプロジェクトの実施に最適な手法です。

3二人ともスウェーデン出身で、普段はKTHのメインキャンパスがある首都ストックホルムで暮らしています。日本に来るのは初めてとのことですが、スウェーデンでは日本食が人気とのことです。寿司が好きとのことなので、先日居酒屋で注文しました。しかし、スウェーデンではネタの種類は少ないようで、ウニやコハダなど初めて食べるネタをしげしげと見ながら食べていました。納豆を強く勧めましたが、二人とも全く手をつけませんでした・・・。桜の花が咲いてきたので、これから研究室の学生と花見をする予定です。

Designletter18  2016年3月1日
魅力あふれるアジアのユニバーサルデザインの研究
空間デザインコース・教授 髙橋儀平

私は2006年よりアジアユニバーサルデザインを研究してきました。ユニバーサルデザインは日本がアジアの中で最も進んでいると思われていますが、ユニバーサルデザインは国や地域によって発想も表現も、そしてプロセスが違います。ここでは東アジア・東南アジアの魅力あるユニバーサルデザインを紹介します。

  • 少子高齢化とユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザイン関係の法律ではアジアではシンガポールが最初です。1981年のことです。東アジアでは、世界の高齢化社会のトップを走る日本が最初です。韓国や中国は日本の直後にバリアフリー法を作りました。実は日本の地下鉄では当たり前の駅のナンバリングはソウルの地下鉄から始まっています。地下鉄のユニバーサルデザインではシンガポール、香港、韓国、日本、中国の順でしょうか。台湾の地下鉄も全く負けていません。アジア各国には細かなユニバーサルデザイン基準が作られています。

まち全体のユニバーサルデザインを考える法律は日本が進んでいます。日本には「バリアフリー基本構想」という仕組みがあって、まちの中のある範囲を決めて、誰もが移動し利用しやすいバリアフリーを優先的に整備する世界でもユニークな取り組みがあります。

  • 写真で見る東南アジア、東アジアのユニバーサルデザイン

日本のユニバーサルデザインの発展と同様、アジアでも急速に交通施設や建築物のユニバーサルデザイン化が進められています。写真1はシンガポール郊外の地下鉄駅、写真2~4はソウル地下鉄、写真5は台北地下鉄の可愛いエレベーター、写真6はシンプルな香港の地下鉄駅です。いずれも駅や交通機関のシステムは似ているようですが、微妙に異なる地域性を持っていて面白いです。

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【写真左】シンガポールの地下鉄、ホームドアがアジアで最も早く進められています。多国籍化が進んでいることもユニバーサルデザインの味方です。
【写真右】ソウル市地下鉄の路線図、乗り換え路線もわかりやすく、色と路線番号で表示されています。自動券売機の案内は4か国語対応,日本語もあり便利です。

東アジアにおける観光客の流動はこれから益々増加するでしょう。人々のグローバル化とともに、重要になってくるのが、観光施設や歴史的建造物のユニバーサルデザインです。世界の観光ブームの中では真っ先にユニバーサルデザイン化が求められる施設といってよいでしょう。写真7は北京を代表する世界遺産、万里の長城です。2008年の北京オリンピックを契機に世界の観光客を招くために大規模なユニバーサルデザインの取り組みが進められました。大胆にもロープウェイも建設されたのです。

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【写真左】ソウル地下鉄、改札口前の絵文字と距離表示のサイン方式は日本よりもかなり早いのです。
【写真右】ソウル地下鉄改札口、子ども、車いす使用者、ベビーカーの人を最優先している改札口が必ず設けられています。

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【写真左】台湾の地下鉄で見かけた可愛いエレベーターのディスプレイ。このような表現ならば、賑やかですがユニバーサルデザインの許容範囲でしょう。
【写真右】香港の地下鉄で見かけたスマートな地下鉄駅。香港はごみごみした印象がありますが、地下鉄のユニバーサルデザインは日本よりも10年進んでいます。

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【写真】北京を代表する世界遺産「万里の長城」、2008年北京オリンピックを契機に一気にバリアフリーが進んだ代表的事例。傾斜路により車いす使用者でも長城を少し登れるようになった。

  • 2020東京オリンピック・パラリンピックへ

いよいよ4年後は東京オリンピックです。現在全国各地でキャンプ地の誘致に伴う都市や競技施設の整備が進められようとしています。沢山の観光客が来日し、日本の高齢者の移動も多くなるでしょう。ホテルや寺社仏閣のユニバーサルデザインも避けては通れません。

アジア諸国を学ぶことは日本の文化や歴史を学ぶことでもあります。私のゼミでは毎年東アジアツアーを行っています。沢山の研究テーマや学ぶことがあります。ぜひ人間環境デザイン学科であなたの学びをスタートさせませんか。

Designletter17  2016年2月22日
卒業制作のプロセスと新しいツールの紹介
プロダクトデザインコース・准教授 北真吾

人間環境デザイン学科では、自分のデザインアイデアを模型製作によって具現化します。
一般的に模型製作では木やスタイロフォームなどの素材を用い、旋盤、ジグソーなどで加工を行いますが、近年はレーザーカッターや3Dプリンタなどの新しいツールが導入され、今までのツールでは難しかった模型制作も可能になりました。

北研究室では模型の精度を高めるために、それら新しいツールを積極的に使用させています。ここではプロダクトデザインコースの村山明子さんの作品(2015年度卒業制作)を例に、その制作過程を通じて新しいツールの適用事例を紹介いたします。

村山さんの卒業制作テーマは「2つの香りを楽しむアロマディフューザー」でした。彼女の目標は実際に機能する物を作成することで、外観デザインだけで無く、内部の複雑な機構もデザインする必要がありました。そのためツールとして3Dプリンタやレーザーカッターの使用は必須となりました。

以下、最初のスケッチから完成までの過程を順に説明いたします。

1.いくつかのアイデアから絞り込まれた最初のスケッチ。初期アイデアはほとんどが手書きのスケッチとなります。村山さんのデザインは中身もあるので内部構造のレイアウトもこの段階で大まかなスケッチとして検討しています。
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2.スタイロフォームや紙粘土、スチレンボードによる原寸のラフ模型。これにより全体のサイズや機能そして外観のフォルムを決定します。
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3.3Dソフト(Cinema 4D)による3次元データの作成。全ての部品を3Dプリンタで出力するのではないため、この過程でどの部品をどのツールで造るのかも計画して設計します。
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4.3Dプリンタによって出力された模型。この過程では出力結果に満足がいかない場合、再度データを修正して出力を繰返します。
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5.出力された模型を組み立ててます。部品は3Dプリンタだけでなくレーザーカッターによるものや手で作成したものもあり、それらを調整しながら、全体を組み立てます。
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6.最後に塗装を行い完成となります。
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以上が村山さんの制作過程となります。3Dプリンタやレーザーカッターがなければとても時間のかかる作業ですが、それらの時間が軽減されたことによって、限られた制作時間の中でとても重要なデザイン質を高めるための検討時間が出来たことが、完成度の高い模型に繋がりました。

Designletter16  2016年2月8日
2015 卒業制作優秀作品展のご案内
プロダクトデザインコース・准教授 北真吾

東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科では2015年度卒業制作の優秀作品を以下の日程で展示公開いたします。都市・建築・支援機器・プロダクトデザインなど、各分野の作品を展示すると同時に卒業研究の成果も公開いたします。卒業制作優秀作品展

皆さまのご来場をお待ちしております。

日時
平成28 年2 月17 日(水)~19 日(金)
17 日12:00 ~19:00
18 日9:00 ~19:00
19 日9:00 ~14:30
※入場無料

場所
自由学園明日館
〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-31-3
http://www.jiyu.jp/kanren/contact.html

Designletter15  2015年12月18日
ミラノ工科大学での海外特別研究 現地レポート
プロダクトデザインコース・准教授 柏樹良

01私は今年度の1年間、海外特別研究制度を利用してイタリアのミラノ工科大学に滞在しています。
一年間、授業をお休みして海外の研究機関で研究に集中できるという制度です。

イタリアはデザインの国と評されていますが、その中でも特に中心的な役割を担っている教育機関がここミラノ工科大学のデザインスクールです。このデザインスクールにはプロダクトデザイン、インテリアデザイン、ファッションデザイン、グラフィックデザイン、ビジュアルデザインなどの各コースがあり、イタリアのデザインを勉強しに世界中から学生が集まってきています。 

私は現在ここで、家具をはじめとする生活環境とコンピュータ技術の関係を研究しています。日常生活の中で使用する家具や日用品が高齢者の住環境や生活の質の向上に活かせないかをテーマに、来年度以降に向けた国際連携研究チーム発足の準備もすすめています。また形態学の演習授業では日本の文化と形態について講義をしたり、フィジカルコンピューティングの研究にも参加しています。

イタリアの人々や世界中から集まって来ている研究者や学生達と、その国や地域の生活環境や風習、デザインに対する考え方や取り組みについて議論するのもまた楽しく興味深い時間です。

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また、ミラノの街は一見古くて歴史的な街並に見えますが、実際に生活をしてみると所々に日本とは少し違ったデザインに対する考え方や思い入れが垣間みられます。街角の人々の暮らしぶりや生活習慣、社会システムの考え方や人々の生活ルールなど、実際に暮らしてみてはじめて分かることも沢山あります。そして、改めて私たちが住む日本のことも色々と考えさせられます。

イタリアのデザインは華やかであり、時にユーモラスにも感じますが、特に他のヨーロッパの国々に比べると人間の感情や感覚をとても大切にしていると感じます。デザインする上での大きな判断基準として「人がそれをどう感じるか」という部分を決して踏み外さないようにしているようです。最先端の技術や流行よりも「人の感覚により添った」デザインを保っていく姿勢は我々日本でも見習うべきものだと思います。

今回の滞在で、デザインとは生活の仕方を考えることだと改めて感じています。この1年間の滞在期間中、出来るだけ沢山の場所に出かけ、色々な人達とコミュニケーションの時間を持ち、沢山のことを皆さんにご紹介できるよう持ち帰りたいと考えています。

Designletter14  2015年12月3日
転倒予防リーフレットを作成して家庭内事故を防ぐ試みに向けて
生活環境デザインコース・教授 水村容子

水村研究室では、長年にわたりスウェーデン発祥の安全・安心のまちづくり活動「セーフ・コミュニティ」の効果を研究しています。この活動は1970年代、スウェーデンの地方都市ファルシェーピンで、事故予防のための普及啓発活動を実施したところ、交通事故をはじめとした様々な外傷事故の発生件数が減少したことから始まった活動です。

近年、日本でもこの活動を取り入れている自治体が多く存在しています。京都府の亀岡市、青森県の十和田市、神奈川県の厚木市などがあげられますが、水村研究室では、長野県小諸市、東京都豊島区、埼玉県北本市・秩父市の活動に協力してきました。そして、近年超高齢化の進む我が国において、この活動の中で特に高齢者の家庭内事故予防啓発活動が注目されています。日本では、家庭内事故で亡くなるお年寄りや子どもは交通事故死をはるかに上回る状況なのです。

その予防策として、水村研究室ではゼミ生の協力のもと、一昨年北本市の活動の一環として、転倒予防のためのリーフレットを作成しました(写真1、写真2)。事前に地域のお年寄りにヒアリング調査を実施し、事故経験などを踏まえた上で作成したリーフレットであり、地域の高齢者の皆さんに大変喜んでいただきました。そして、現在、同じくセーフ・コミュニティ活動を展開している秩父市からの依頼により、高齢者と子どもの家庭内事故予防のリーフレットを作成しています(写真3、写真4)。

このような普及啓発活動を通じることによっても、家庭内での事故を防ぐことは可能です。皆さん1度ご自身の住まいの点検を行ってください!
リーフレットの表紙 リーフレットの内容
▲写真1(左) リーフレット表紙 / 写真2(右) リーフレット内容

高齢者リーフレット案 子どもリーフレット案
▲写真3(左) 高齢者リーフレット案 / 写真4(右) 子どもリーフレット案 

Designletter13 2015年11月19日
学科10周年記念シンポジウム(第5回)を開催しました。 
助手:菊池沙美

2015年10月5日に学科10周年記念シンポジウム(第5回)が開催されました。今回は「4カ国協議〜海外で働くこと、生活すること〜」と題して各教員の海外でのご経験をお話しました。
ゲストスピーカーとして本学の健康スポーツ学科淺間正通教授をお迎えし、本学科の名取発准教授、嶺也守寛准教授、司会の水村容子教授によるシンポジウムでした。

淺間教授からは「知識・行動・感情」をテーマに異文化コミュニケーションの本質に迫る内容でした。「知識」ではフィンランドでの教育とITについて。
森と湖の国のイメージのフィンランドは実はとてもデジタル国の最前線であり、一方で夏休みには森にこもり、メールも見ない生活をするといった、デジタルとアナログを協調し得る国民性だというお話でした。またフィンランドの教育は結果に至るプロセスを大事にしていて様々な角度からの応えがあるということを気づかせてくれる国だと教えてくれました。
「行動」ではアメリカでのサプライズパーティーでの主体的に動く行動力を、「感情」ではヨルダンでの空手指導でのご経験をお話し、空手の型の披露もしてくださいました。

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名取准教授からは、学生時代の長期ヨーロッパ、シンガポール、マレーシアの旅行記をお話くださいました。また上海での建築調査での生活、中国語の難しさ、最後には国際結婚のすすめもお話してくださり、学生も教員の新たな面を見て和やかなムードでした。

嶺准教授からはセネガル日本職業センターでのセネガル勤務でのお話を、クイズも交えながら、体験談と共に語ってくださいました。学生も情報の入りづらいアフリカ大陸のことを知り、興味深そうに聞き入っていました。 

最後に質問&トークセッションを行い、危機一髪の体験談、コミュニケーションの秘訣などをお聞きしました。
自国のことを理解することの大切さも感じながら、海外に魅かれるシンポジウムとなり学生に良い刺激になったと感じました。

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Designletter12 2015年11月4日
グッドデザイン賞受賞に寄せて「住宅を考えることはこんなに楽しい」 
空間デザインコース・助手 野村庸高

2015年9月末、今年度のグッドデザイン賞が発表されました。グッドデザイン賞とは1957年に通商産業省(現:経済産業省)によって創設され、現在は公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「総合的なデザインの推奨制度」です。つまりは「よいデザイン」の指標となっている賞です。今年度は900社余りが受賞し、受賞対象のカテゴリーは60近くに分けられています。1

その中で、私達は住宅・住空間カテゴリーで今年度のグッドデザイン賞を受賞しました。応募した作品はRC造の2階建て新築住宅「UTH –urban tree house-」です。

この住宅の特長はなんと言っても、大きな木を植えることから計画を始めた点です。「大きな木で遊ぶお孫さんを見たい。そんなことはできますか?」という建て主の思いを形にしたかったのです。部屋の中からは木を見上げたり、また、2階からはまるでツリーハウスの中にいるような、そんなイメージを膨らませて設計を続けました。

2設計を始めてから建物が建つまで3年10ヶ月が過ぎました。現在の日本の技術からしたら時間がかかりすぎだといわれるかもしれません。でも、もし自分の家を計画するときに、短時間で効率的に仕事が進むのも味気ない気がしませんか?建て主の持ち寄る多くの「?」を、一緒に解決するには時間が必要なケースもあります。「キッチンの扉は引き出し?開き戸?」とか「玄関ドアは外開き?内開き?」など、多くの「?」はデザインを纏め上げるヒントになるからです。

 
3身近なものや出来事に観察する視点を持っている方は、既にデザインの世界へ足を踏み入れているといえるのではないでしょうか。人間環境デザイン学科はそのような視点を持った学生が集まっており、学科自慢の工房から、毎日「良いデザイン」が生まれています。

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グッドデザイン賞受賞記念講演(朝霞キャンパス)の様子

Designletter11 2015年10月14日
大学祭で展示します!「子どもも大人も楽しめるインテリア玩具」
プロダクトデザインコース・准教授 池田千登勢

10月31日・11月1日は東洋大学朝霞キャンパスの「朝華祭」。人間環境デザイン学科実験工房には学生たちのデザインした建築、写真、プロダクト、アート、クラフトなどなど、色々な作品が並びます。池田ゼミでは、実験工房3階スタジオに4年ゼミ生16名が、「遊んで楽しい・飾って美しいインテリア玩具」を展示します。

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1(左):多重回転するおもちゃ(関あゆみ)  2(右):透明アクリルのボードゲーム(長坂美芳子)

1の多重回転するおもちゃは、重なり合うひとつひとつの輪がアンバランスな形状になっており、転がすとそれぞれの輪が不規則に回転します。素材は木でできており、触るとどこか懐かしい気持ちになり、いつまでも転がして遊びたくなるおもちゃです。

2の透明アクリルのボードゲームは、小さい頃、おじいさんが木の棒で孫のために手作りしてくれた単純なボードゲームを構成しなおし、美しいグラデーションに染めた透明のアクリルでデザインしました。窓辺に飾ると光をとても美しく反射します。

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3(左):磁石で鉄球をつなげたり落としたりして遊ぶ玩具  4(右):高さの違う駒を使うボードゲーム

3は上の4つの磁石に鉄球を吸い付けて葡萄の房のようにぶら下げ、その後、磁石をぱっと取り外すと一気に鉄球が下に落ち、受け皿に置いてある4種類の素材の板にぶつかって盛大にカラコロと音がして面白い玩具です。

4は高低差のある駒をボードに並べていき、揃うと中身の色のピースがもらえるというゲーム。木の輪の中にカラフルなフェルトのピースをはめ込んだり、取ったりするのも楽しめます。 

新しいおもちゃをデザインするのはとてもわくわくするプロセスです。「楽しさ」の根源を考え、遊ぶ人にどんな気持ちになってもらいたいのか、どこで盛り上がってほしいのか、そこからデザインしていきます。また、使う人が自由な遊び方を創造できる余地も考えます。 

展示会では全部で16種類のおもちゃが並びます。

ぜひ、朝華祭にお越しいただき、実際に手に取り、遊んでみて、感想をいただければ、とても嬉しく思います。 

人間環境デザイン学科実験工房 1階〜3階 作品展  10月31日・11月1日 10時〜17時

Designletter10 2015年9月24日
私たちの活動レポート 田中茉莉(福祉社会デザイン研究科人間環境デザイン専攻 修士2年)

私たち櫻井研究室のメンバーは建築デザインや都市計画を学んでおり、大学院生と学部生の垣根を越えて活発な活動を行っています。今回は普段の私たちの活動の様子をご紹介します。

<「Tokyo Designers Week」など外部イベントへの参加>

毎年秋に明治神宮外苑で開催される、デザイナー及びデザインを学ぶ学生による祭典「Tokyo Designers Week」に学生作品枠で出展しています。この企画では学科を構成する空間・生活環境・プロダクトの3コースの学生が有志で集まり、各コース教授陣の指導のもと、グループワークによる議論と模型によるスタディを繰り返しながら最終成果物として1/1 スケールの空間作品を制作していきます。こうした出展活動では、私たち櫻井研究室の大学院生が中心となって、学部学生達をリードし、普段の活動の中では制作する機会のない大きなスケールの作品の構造やディテールを考え、材料を発注し、モノができるまでの一連の流れを学びながら、学部1年生から修士2年生まで各学年が、意見交換をしながら交流を深めてゆきます。実際に制作した作品は、各大学の作品と共に展示され、学生のみならず、参加デザイナーや会場を訪れる一般の方々と作品を通したコミュニケーションをとることで、研究室や大学をアピールする場となっています。

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会場での展示・制作風景

<学内の「計画演習」におけるグループ制作>

大学院では、院生の計画・設計した提案を、地元である朝霞市の職員の方や地域の方にプレゼンテーションすることが出来る計画演習を行っています。今年度は大学院生が三チームに分かれグループワークによる制作を進めました。授業には有名な建築家の方を非常勤講師としてお招きし意見を頂いたり、最終的には学外での展示も行ったりと充実した体験となりました。外部への展示では学部生の演習作品も同時展示し、市民の方や外部の方と意見交換を行いました。院生の作品は三チームともに、多様で密度の高い提案になったのではないかと思います。

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展示会・発表講評会の様子、作品一例

<学外の設計競技への参加>

私たちは研究室活動の一環として、学外で主催されている設計競技に研究室として参加をしています。設計競技(コンペ)は、公共や民間の企業や団体等、事業主はさまざまですが、建築や景観、製品等、様々な分野のデザインに関する課題を提示されます。それに対して、個人または複数人のチームを組んでそれぞれ独自の提案をし、審査員によって提出作品から上位数点が選ばれるといったものです。私たちは建築や都市計画を主に学んでいるので、分野に合致したテーマのコンペに学部生・院生合同による研究室全体で参加しています。基本的に学校の課題は個人で取り組んでいるので、こうしたコンペに参加することで、学年の垣根を超えて様々な意見や考え方を交換できるので、新鮮であり、そして楽しくやりがいを感じています。仲間みんなで議論をすることで、自分では思いつかないようなおもしろい考えが聞けたり、時には話がまとまらず時間だけが過ぎてしまったり、そんないろいろなこと全てが自分のためになるので、とても有意義な活動になっています。

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コンペの提出作品例

<地域との連携を通して>

櫻井研究室では、2013年度より青森県鰺ケ沢町をフィールドとする域学連携事業を通して、様々な活動を行っています。初年度は、廃校となった小中学校の利活用提案、中心街区で空き家となった家屋を利用しての交流施設の提案、バス停待合所の提案などを行いました。2014年度は国指定史跡である中世城郭の復元検討模型の制作、同施設の案内看板のサインデザインを行いました。今年度は、駅前観光案内所のデザイン提案、江戸時代から続く伝統的な祭りである、白八幡宮大祭に関する歴史資料や山車を展示する施設の提案、初年度に引き続きバス停待合所の提案などを行います。こうした地域との連携がまちづくりの本質である、本当に必要とされるデザインとは何か、を考えるきっかけを与えてくれます。建築のみならず、都市、地域とより広い視野を持つことが、自らのデザインのバックグラウンドを広げてくれるのです。毎回行っているのが、学年にかかわらず参加者全員が自分の案をつくり、案を作った学生は現地に行ってプレゼンをし、町の方々から様々な意見をいただくことです。緊張感のある素晴らしい体験になっていると思います。

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鰺ヶ沢町での現地調査

上級生から様々なことを学び、そして自らプレゼンすることで様々な課題を突きつけられる、そんな学年とは関係のない緊張感こそは、私たちの活動の本質です。ぜひみなさんもこんな活動の一員になっていただければと思います。みなさんの参加をお待ちします。

Designletter09 2015年8月17日
発展途上国でのアクセシビリティ支援活動 生活環境デザインコース・教授 川内美彦

ひょんなことから途上国でのアクセシビリティ整備に協力するようになり、アジアを中心にいくつかの国に行っています。アクセシビリティとは耳慣れない言葉かもしれませんが、バリアフリーと同様な考え方だと思っていただければ結構です。

多くの途上国では、まず自分達のことが精いっぱいで、高齢の人や障害のある人のことは後回し、というのが一般的です。それにたいていは、こういったことは家族の中の問題であるという考え方で、日本の介護保険制度が考えているような、社会全体の問題だという認識とは異なります。しかしある程度経済状況が改善されると、アクセシビリティの改善も始まります。そのきっかけを作る、あるいは日本の経験や知識を伝えてお手伝いするというのが私(たち)の役目です。

私の活動はJICA(国際協力機構)を通じてのものがほとんどですが、建物を造るような支援ではなく、現地の人たちが自分で考え、自分で行動できるようにするための力づけ(エンパワメント)をめざしています。
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写真1はフィリピンの田舎の小さな町での活動です。
真ん中にいる車いすに座った女性はこれまでずっと家の中にいるしかなく、家族の足手まといだと自分自身でも考えていました。現地のJICA職員の粘り強い働きかけで活動に参加するようになり、わずか1~2年でリーダーシップを発揮するようになりました。この日はみんなの発案でトライシクル(フィリピンで 一般的なサイドカーのような形のタクシー)運転手に、車いす使用者も乗せてもらえるように説得に来ています。運転手ははじめ当惑気味でしたが、若い運転手が「やってみよう」と言い始め、やってみると案外簡単だとわかり、握手をしてこの日の活動を終えました。

写真2はアフリカのルワンダです。
02フリカはヨーロッパの国々による植民地統治の暗い歴史を持っていますが、ルワンダも例外ではなく、その影を引きずった形での民族対立から1994年に大虐殺が起こりました。約100日間のうちに、当時のルワンダの人口700万人余りの中、およそ80万人から100万人が、ルワンダ人同士の手によって殺害されたとみられています。当然、生き延びたけれども障害が残った方も多いわけで、この人たちの社会復帰が大きな課題となっています。私の役割は、国内各地の職業訓練センターのアクセシビリティを改善して、障害のある人も職業訓練が受けられる環境を作ることでした。最近では車いすを使う女性が教員として雇われたという例も出てきています。
途上国の人たちは日本に大きな信頼を寄せています。
それはたぶん、戦争をしない平和な国、戦後の荒廃から立ち上がった国、高度な技術を持ち高い品質の製品を生み出す国、というイメージがあるからだと思います。そして私の立場からはもう一つ。上記のような草の根レベルでの人を育てる形の支援も、国と国の関係をお互いの顔が見える関係に組み立て直すという意味で、評価されているのではないかと思われます。

途上国への政府間支援というと、道路を造る、橋を造るといった大規模なインフラ整備が注目されがちです。もちろんそれも重要ではありますが、人づくりも同じくらいに大切なものだと思います。 

Designletter08 2015年8月3日
「表現演習」授業をご紹介します。 学科長:奥村和正

春学期授業から3年生の「表現演習」の様子をご紹介します。この授業を担当する非常勤講師の大沼 敦先生は様々な製品のデザインを手がけられているプロダクトデザイナーです。(www.atsushionuma.com)

この授業では、アイデアスケッチを描く力を鍛えます。プロダクトデザイナーがアイデアスケッチを描くことは大袈裟な表現にはなりますが、依頼主(クライアント)にその製品の「未来像」を示す仕事です。決められた期限内に、できるだけ多くの、よく考えられた魅力的なアイデアを描き、「より具体的に」未来を示すことがプロフェッショナルには求められるのです。この授業では、毎週一人20枚スケッチを模写してくる宿題が出ます。3ヶ月間で一人約150枚です。毎週この授業前日は徹夜で、学生曰く「宿題のために命削りました!」とのこと。その甲斐あって素晴らしい勢いで上達しました。

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(左)大沼先生によるお手本スケッチ   (右)学生のコーヒーメーカースケッチ例 

模写で腕を上げたら、最後にコーヒーメーカーのデザインを課題とします。アイデア、断面図、構造図、使用シーンを1枚の中に盛り込むことがポイントです。一ヶ月間で一人約50枚。結果的に150枚の模写と合わせて一人で約200枚描き上げました。最後の授業では今まで描いた選りすぐりの30枚を貼り出します。50人で1500枚のスケッチが工房の壁に貼り出されました。先生方や他学年の学生も投票を行いました。

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写真は、最終日7月23日に投票結果を発表し、大沼先生が全体講評をされている様子です。皆よく頑張った、この経験は将来かならず役に立つという心強い励ましの言葉をいただきました。 

Designletter07 2015年7月13日
学科10周年記念シンポジウム(第4回)を開催しました。 助手:谷本裕香子

2015年7月4日に学科10周年記念シンポジウム(第4回)が開催されました。

今回は、「笑いとデザイン」と題して、一見デザインとは全く縁がないように思える「笑い」と、人間の名生活環境を取り巻く多様な「デザイン」の世界を本学の教員3名、ゲスト1で自由に語り合うシンポジウムとなりました。

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シンポジウムの様子                柳瀬幸多郎氏

ゲストスピーカーとしてお迎えした柳瀬幸多郎氏は多摩美術大学卒業後、(株)丹青社で24年間デザイナーとして勤務後、株式会社UDスペースを設立されました。近年はユニバーサルデザインを中心とした施設づくりに取り組まれています。

冒頭にご自身の自己紹介とともに東京ディズニーランドを担当されていたご経験から、笑いのデザインがいかに人を惹き付け、人を幸せにするか、体験談をもとに語ってくださいました。

本学の高橋儀平教授からは、笑いの定義や研究、解剖学、笑いのデザインの実例についてお話がありました。随所にユーモアが散りばめられた話に会場からは笑いが漏れていました。

本学の繁成剛教授からは、笑いのデザインと自然界・人間界との関わりについてお話があり、身の回りのものへの見方を変えることで、世界は笑いに満ちているのだ、ということを気づかされるような内容でした。

最後に、本学の学生・教員から募集した”面白い写真”を紹介し、参加者全員が自分の良いと思った上位3点に投票を行いました。本学の北真吾准教授と柳瀬幸多郎氏がコメントを加えながら、写真の笑いについて議論を深めることで、笑いのデザインとは何なのか、参加者全員が考える機会となりました。

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投票の様子

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面白い写真 第三位 板野周

院生室にいた時に、窓掃除と遭いました。
昔からある青いキーホルダーと清掃員の格好が一致しており、この時のためにあったのかなと思いました。

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面白い写真 第二位 村山明子

急カーブの危険の表記が日本語のヤバス(やばい) に読める。(トルコ)

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面白い写真 第一位 下園勇介

急がす看板。(アメリカ)
講評:本来、看板は一つで十分だが2枚並べることで人の注意を引くと同時に3m差(実際の看板の距離差も3mと思われる)を数字で示すことで企業の真面目さをユーモラスに暗示している。

Designletter06 2015年7月1日
プレゼミ生対象・金属加工演習 生活環境デザインコース・准教授 嶺 也守寛

人間環境デザイン学科では、演習や卒業制作において学生達の自由な発想を具現化できる様に実験工房が用意されています。工房には、木工室、塗装室、樹脂室、3Dプリンター・レーザー加工室、金工室があります。この中で私が主に機材の維持管理を行っている金工室について、今回のデザインレターのテーマとして挙げます。

現在、金工室内には、小型旋盤、半自動フライス盤、小型バンドソー、ボール盤、両頭グラインダー、溶接機、パイプベンダーなど、金属加工に必要な機材が整備されています。また今年度は、ムク材切断用バンドソー、中型コンプレッサー、汎用旋盤が新規で導入される予定です。

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私はこの学科に着任して3年目になりますが、着任以前の金工室は、機械加工の指導経験のある専任教員が不在でしたので機材を有効に利用している様には見えませんでした。そこでまず着手したのは、この金工室を学生の皆さんが使いやすい様に整備することでした。また、演習や卒業制作などの作品を制作する際の素材の選定には、金属もあることを知ってもらうため、人間環境デザイン基礎演習では、道具の使い方を指導し、金属材料の加工を課題として取り入れました。

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4年間の大学生活の中でのターニングポイントとしては、2年生の秋学期に行うコース配属があり、3年生の秋学期前に行うゼミ配属があります。特に3年生の秋学期は、4年生の卒業研究が本格的に始まる前の段階ということで「プレゼミ」と呼ばれ、正規の授業単位ではなく事前学習の様な感じで各ゼミ特色ある指導がなされます。

今年度は、嶺ゼミでは金属加工演習を行いました。対象としては嶺ゼミのプレゼミ3年生でしたが、他のゼミからの要望もあり公募で学生を募りました。金属加工演習の内容ですが、「工房の安全指導」、「精密測定」、「手仕上げ加工」、「ねじ切り加工」、「フライス盤加工」、「曲げ加工」、「TIG溶接」など7項目を行いました。

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金工室の機材の台数が、学科の1学年の定員である180名に対応した導入数ではないので、正規の授業内で取り込める内容ではなく、はやりプレゼミの時期である10数名に対応するのが適切であると考えます。ですので、所属するゼミの方向性や自らの卒業研究の課題にもよりますが、4年間の大学生活で金工室の機材を一度も触らずに卒業していく学生が多いのが現状です。

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以上の様に、学生に対し金属加工を指導しているのは、私が機械屋さんだからではなく、また学生に金属加工のプロになってもらいたいとも思ってはおりません。金属加工のプロになるならば、態々この学科に来なくても職業訓練施設行った方がずっと良いのです。私が学生に望むことは、ものづくりとは何かを知っているデザイナーになってもらいたいです。今後の展開としては、金工室の機材を更に充実する様に整備し、工業高校を重点的に訪問してこの学科の良さをアピールし、将来的には工業高校の生徒さんを対象としたデザインワークショップを開催したいと考えいます。是非、今後の人間環境デザイン学科の発展をご期待ください。

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Designletter05 2015年6月8日
学科10周年記念シンポジウム(第3回)を開催しました。 大学院修士2年:矢部弘海

012015年6月8日に学科10周年記念シンポジウム(第3回)が開催されました。

今回は「仕事の流儀」と題して、【私がとりくんだピカイチプロジェクト】【プロフェッションの役割とユーザーの役割】【これからの日本・世界にむけてのデザイン】【学生の君たちの将来に向けて】の4つのテーマに基づき進行され、一つのテーマごとに一人ずつのプレゼン後、トークセッションという流れで行われました。

02本学の奥村和正教授、水村容子教授、菅原麻衣子准教授の三名の教員に加え、ゲストスピーカーとして馬場未織さんをお迎えしてのシンポジウムでした。馬場さんは大学院卒業後設計事務所を経て建築ライターとして活躍されています。さらに、現在、平日でのお住まいは東京、週末は南房総の里山で暮らす二地域居住を実践されており、とてもエネルギッシュな上、お美しい方で驚きました(本学の女性陣も同様です)。昨年「週末は田舎暮らし-ゼロから始めた「二地域居住奮闘記」」を刊行されています。以上の4名により幅広く多様な議論がなされました。

各人がそれぞれ「プロ」として行ったプロジェクトを通して感じたものを基に議論が行われました。

03馬場さんのお話では「二地域居住」により複数の視点を持ち、立脚点を増やすことで、これまで常識と捉えていたものと新たに認識したものとの距離がわかり、世界が立体的に見えてくる。この事は、自分の現在の立ち位置や、デザインが人間にとってどのように必要なのかがわかってくる。さらに当事者意識を持つことにつながり、地域にとって何が必要かを捉えた仕事を、自らが考えて行うようになるというお話でした。

3人の教員からも、社会情勢や要素に対する「アンテナ」を磨いていくことが大切で、今必要だからするのではなく、いつか役に立つことを想定しつつ、様々なことにチャレンジすること、その行為が自分に合った仕事と出会えることにつながるとのお話がありました。

シンポジウムには多くの学生が参加し、特に就活生にとっては今後の生き方の勧めともいえるお話を熱心に聞き入っていました。

私個人としては、多角的な思考と信念を持ち続け、自分がいる立ち位置を俯瞰的に捉えながら今後の研究活動や就職活動に繋げていこうと思いました。

Designletter04 2015年6月1日
学科10周年記念シンポジウム(第2回)を開催しました。 助手:野村庸高

2015年5月23日に学科10周年記念シンポジウム(第2回)を開催しました。10年に一度だからこそ、普段はなかなか話せない“とっておきの話”を各教員が提供するこの企画。学内外から予想以上にたくさんの方々にお集まりいただきました。

今回のシンポジウムのテーマは「専門と日常 ‐専門家から見た非専門的な世界‐」です。3人の教員が、私たちが当然のことと思い込んでいる日常的な風景や事柄を、それぞれの視点から眺め、考え、お話しました。

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本学の仲綾子(専門分野:こども環境)は「建築写真には、何故、人が居ないのか ‐記録と表現の狭間に現れる建築家の世界観‐」というテーマでお話しました。写真の歴史や記録方法、表現を取り上げた後、人の居ない建築写真が建築関係者にしか見られることを想定していないのでは、という社会と切り離された可能性をお話しました。その一方で、こどもが空間の中で自由に振舞う写真は多数存在することから、子供の環境が建築と社会を結びつける切り口となるのでは、との可能性に触れました。

本学の高橋良至(専門分野:メカトロニクス)は「鉄道時刻表は、何故、読み物ではないのか ‐検索される情報と記録としての情報‐」というテーマでお話しました。時刻表がどのように考えられ、制作されるのかを、豊富な資料写真からお話しした後、戦前の時刻表の注意書きや乗車の心得を読み解きました。現在の私達からしたら考えられない、多くの面白い表現や内容が見てとれ、会場が笑いに包まれました。

本学の内田祥士(専門分野:建築設計)は「電柱・電線は、何故、埋めたくなるのか ‐信頼を保全性の側から支える電線の壮麗なる姿‐」というテーマでお話しました。電柱・電線に興味を持ったのは、通勤時に目に付いたから、という理由で、日常の風景の一端を専門家らしい探究心から掘り下げてお話しました。また、美とは異なるが価値のある環境を壮麗と捉え、電柱・電線の細部の納まり、その拡張性の高さから見る日本の状況への考えを述べました。

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シンポジウム終了後も、来場者が教員を囲み、質疑が続くなど、終始活発な議論がなされました。知的好奇心を刺激されるシンポジウムとなりました。

Designletter03 2015年5月21日
「卒業論文・卒業制作の紹介」 学科長 奥村 和正

今回は、この3月に卒業した6期生の卒業研究を紹介します。まずは、学外のウェルフェア デザイン コンテストでセンスウェア部門賞を受賞した江川侑里さんの卒業制作作品です。ウェルフェアデザインコンテストは介護・福祉器具の新たな発想のデザインを募集するコンテストです。江川さんの『どうぶつぱずる』は遊びを通して楽しみながら数や形の概念を学び、さらに弱視の視力トレーニングになることを目指しました。障がい児の観察や療法士へのインタビューをもとに考案された、わかりやすくシンプルで、子どもが自由に遊び方を考えることができるデザインが評価されました。
江川侑里 「どうぶつぱずる」視覚障害児のための知育玩具の制作
江川侑里 「どうぶつぱずる」視覚障害児のための知育玩具の制作

人間環境デザイン学科では卒業論文を選ぶ学生と卒業制作を選ぶ学生の比率は、ほぼ半々です。まず卒業論文から2本紹介します。

上條綾香さんは、お店のバリアフリー化の状況について論文をまとめました。身近なコンビニやファーストフード店、カフェなど合計300店舗を現地調査し、従業員102人にアンケートを取りました。高齢者や障害者が利用しやすくする「バリアフリー化」が十分に進んでいない原因を分析しています。お店の面積など条件によって整備にバラツキがあり、また従業員もバリアフリー対応の必要性を意識していることがわかり、やれることからやっていくべきだという建設的な提言をしています。

塩澤 涼さんは、車いす利用者用の多機能トイレは普及してきましたが、高齢者や子供連れも利用するため、利用が集中している状況に着目しました。塩澤さんの研究では、高速道路のサービスエリアと、ショッピングセンターで利用実態を調査し、さらに多機能トイレと少し広めの一般トイレの二者について、障害者にとってどうか、子供連れにとってどうか、設備を詳細に比較分析しました。結果、子供連れには少し広めのトイレのほうが便利であることがわかり、少し広めのトイレに気づいてもらう工夫として入口のサインの提案まで行いました。

卒業論文・卒業制作

(左)上條綾香「小規模フランチャイズチェーン店舗のバリアフリー化の現状と対応方策に関する研究」
(右)塩澤 涼「多機能トイレに集中する機能を分散する計画手法に関する研究

次に、卒業制作の作品も2点紹介しましょう。村田 徹さんは「食」をテーマにした建築作品を制作しました。オープンスペースが少ない銀座を想定し、食文化の交流をテーマにした建築を提案しています。建物の塊を和食の食器の配置を模して配置し、それらを洋食のコース料理のようにひとつながりの空間体験としてつなぐという独創的なアイデアでデザインされています。様々な方向に広がり人々を誘い込む活気あるパブリックスペースになっています。

関根貴大さんの卒業制作は、もう読まなくなったいらない本を誰かと交換するやり取りを実現する本棚です。リビングでの読書に寄り添えるコンパクトなデザインで、内蔵スキャナーで本のバーコードを読み取り、タッチ画面を操作して欲しい本を探したり発送手配したりできます。家具デザイン、インターフェースデザイン、サービスデザインを融合した人間環境デザイン学科らしい作品です。

卒業制作

(左)村田 徹「食と在る日常 銀座四丁目の新たなオープンスペース」
(右)関根貴大「BOOKsPOT 本を分かち合える本棚」

6月21日には今年度最初の“学び“LIVEを行います。ぜひ朝霞キャンパスにお越しいただき、授業を体験してみてください。

 Designletter02 2015年4月18日
「新入生歓迎イベント・学科10周年記念シンポジウム(第1回)を行いました」 
1年生担任:繁成 剛・仲 綾子/シンポジウム担当:川内美彦・池田千登勢・櫻井義夫

 2015年4月18日に新入生歓迎イベントを行いました。引き続き、学科10周年記念シンポジウム(第1回)を開催し、夕方からのパーティには新入生、在学生、卒業生、教員が多数参加して大いに盛り上がりました。その賑やかな様子をお伝えします。

●新入生歓迎イベント
歓迎イベント1 新入生が入学して数週間が過ぎました。大学での学びに期待しながらも、慣れない環境にやや緊張している様子が見られます。そこで、緊張をほぐしながら学びの導入となるワークショップを企画しました。
ワークショップはアイスブレイクとクイズの2部構成としました。アイスブレイクでは、Birthday circle(誕生日順に並んで円をつくる)、Make line(名前のあいうえお順、手のひらの温かい順、両腕を広げた長さの順などに並ぶ)を行い、自然に新入生同士が名乗り合ったり、握手したりできるようにしました。はじめのうちは堅い雰囲気だった新入生も次第に打ち解け、まさにアイス(氷)がブレイクしました(溶けました)。
歓迎イベント2 その後、スケールに関するクイズを行いました。人間環境デザイン学科の学びの拠点となる実験工房1Fホールの幅・奥行・高さを当てるというものです。身体を使って測ったり、単位となるものを見つけて何倍かと考えたり、各チームで工夫して予想しました。

 このように人間環境デザイン学科では、机上の勉強だけではなく、仲間と協力しながら身体を使って体験的にデザインを学ぶことができます。新入生たちの笑顔を見れば、彼らが確実に何かをつかんだことがわかります。来年もまた魅力的な新入生歓迎イベントを企画しています。ご期待ください。(仲綾子)

●学科10周年記念シンポジウム(第1回)
シンポジウム1 人間環境デザイン学科の歴史はまだ浅いとはいえ、2006年に第一期生を迎え入れて以来、朝霞キャンパスからたくさんの卒業生が巣立っていきました。4月18日の大同窓会は、卒業生の懐かしい顔と再開するだけでなく、大学を出てからの彼らの成長を感じ取ることのできる貴重な機会となりました。
15時からの開始だったのに、早い卒業生は12時ころにはすでにキャンパスに来ていました。新築されたばかりの体育館、移設されたテニスコートなど、ハードの面での変化と共に、今の学生がどのような勉強をしているのかにも興味があったようです。
シンポジウム2 会場の講314教室は、卒業生と在学生でほぼ満員の盛況。十数名の卒業生が、在学生にこの学科で学ぶべきこと、在学中にやるべきことのアドバイス、仕事の面白さなど、心のこもったメッセージを伝えてくれました。自分のスキルを身につけること、学外の活動に積極的に参加すること、打ち込めることに一生懸命になること。それらの多くは卒業生自身がやり遂げたことでもあり、一方でやり足らなかったと感じていることでもあったのでしょう。

一期生だってまだ二十代後半。集まって懐かしむには、早すぎる時期かもしれません。それでもこんなに多くの卒業生が集まってくれました。彼ら、彼女らの心の片隅に常にあり、何かあったら帰って来たくなる、人間環境デザイン学科はそんな生まれ故郷のような存在でありたいと願っています。(川内美彦)

在学生にメッセージを伝えてくれた卒業生の皆さん
卒業生

●歓迎パーティについて
新入生の歓迎パーティーは17時から実験工房で開催しました。13時からの歓迎イベント、15時から学科10周年記念イベントに参加した後、卒業生や在学生も加わり総勢200名以上が集い、実験工房の1階が立錐の余地がないほど盛況な会になりました。乾杯の音頭は工房長の内田祥士先生に取っていただき、盛大にパーティーが始まりました。ケータリングの業者に依頼して176名分たっぷりと用意したオードブルは1時間も経たないうちにきれいになくなり、ソフトドリンクも残り少なくなったので、18時を過ぎてから高橋儀平先生に一本締めで締めてお開きとしました。最初は何となくギクシャクしていた1年生も、歓迎イベントとこのパーティーで随分と打ち解けた印象です。その証拠にパーティーが終わった後も半数以上は帰らず、名残惜しそうにメールアドレスを交換したり、写真を撮ったり、賑やかに会話を楽しんでいました。(繁成 剛)

歓迎パーティー

Designletter01 2015年4月15日
「新学期がはじまりました」 学科長 奥村 和正

 新学期がはじまりました。写真は4月2日、新入生ガイダンスが行われている工房の窓からのキャンパスの風景です。満開の桜が新入生を迎えました。今年も、デザインレターでは、高校生の皆様や当学科に関心をお持ちの皆様に、最新の情報をお伝えしていきたいと思います。

工房窓からのキャンパス風景

[人間環境デザイン学科がめざすこと]

 人間環境デザイン学科は今年10年目を迎えます。当学科の目標は、誰もが平等な社会生活を営むことができる、快適で質の高い生活空間を創り出すこと。そして、「つくり手」と「つかい手」を繋げていくこと。これらを実現する知識や技術そして可能性を持った人材を育成することです。学科創設以来、この目標をめざして教員一丸となって、人間を中心に考え、総合的に学ぶための独自のカリキュラムを日々進化させてきました。この目標が社会で求められていることは、当学科の今年の就職率が94.5%に達していることや、卒業生達の社会での活躍に、はっきりと表れています。

[人間環境デザインならではの総合的な授業] 

 総合的に学ぶ、とはどういうことか、今年も始まった2年生の演習授業で紹介しましょう。この授業では建築設計、福祉住環境計画、プロダクトデザインなど出身の異なる教員9名が全員一緒にひとつの授業を進めます。演習課題では最初、敷地を指定し、そこに建てる若い家族のための住宅を設計します。学生に渡される課題シートには、仕事をしながら子育てに奮闘する主婦のあわただしい一日の様子がドキュメンタリーとして記述されています。それを読み取り、どんな家にすべきかを考える事から各自の作業はスタートします。さらに、今は一人暮らしをしているおばあちゃんが将来、この家に同居することになった時のことを考えて、最初から将来のエレベータの設置や、車椅子での生活なども考慮に入れたデザインを学んでいきます。次の段階では、各自のデザインした住宅にふさわしい照明器具を家族の生活を考えながらデザインします。このようにして、住む人を中心に考え、生活環境を総合的にデザインすることを学んでいきます。果たして学生たちが、この若い家族のこれからの人生のためにどんな家そして照明をデザインするか、楽しみです。

 次号以降、デザインレターでは、各教員が取り組んでいる「人間環境デザイン」を授業の様子や研究活動の紹介を通して皆様にお伝えしていきたいと思います。

授業の様子等

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