ごあいさつ

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エコ・フィロソフィの構築に向けて

TIEPhセンター長 山田利明

TIEPhセンター長 山田利明

 東洋大学エコ・フィロソフィ学際研究イニシアティブ(TIEPh)は、2007年に東京大学を中心とするサステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)の協力機関として発足した。IR3Sは、文部科学省の科学技術振興調整費によって運営され、新しい学的領域の構築に大きく貢献してきたが、本年3月をもって同調整費の交付が終了し、参画した大学や研究機関は、それぞれに従来の研究を促進・発展させて、サステイナビリティ学の確立を目指すことになった。これにより、TIEPhも学内研究機関として、新たな出発を図ることになったのである。
 この4年間のTIEPhの活動を省みたとき、本学にはなかった新たな哲学的展開を提示し得たことの意義は大きい。ことに第1ユニットの古典文献学をエコロジーに反映させ、それを実践的論理として再構築しようとする試み、第2ユニットの環境意識にもとづく行動理論の解明や、第3ユニットの環境哲学の具現化としての環境デザインのあり方の探求など、哲学研究の可能性を示したものといえる。
 実はTIEPhが掲げたエコ・フィロソフィの構築は、東洋思想にもとづく新しい価値観の創生にあった。近代西欧の価値観が、今日の環境状況を生み出したという認識のもとに、それに代わるべき価値観を、東洋の思想の中に求めようとしたのである。それは特に西欧にはない独自の自然観を探求して、自然との共生や自然との融合を現代の眼から考えようとすることであって、西欧の文明の否定でもなければ現代の攘夷論でもない。ただ価値観を転換しなければ、やがて取り返しのつかない事態に襲われる。もちろん人類は、現在の文明を捨てて300年前の生活に戻ることはできない。しかし例えばそう遠くない将来、石油は必ず枯渇する。そのとき人類は、石油文明にもとづく現在のシステムとは別のシステムへの移行を余儀なくされる。例えば食糧問題や民族問題についても、その解決を図るのであれば、いずれ地球規模のシステムを変えねばなるまい。徐々にであれ急劇にであれ、システムは代わる。そのシステムの基盤になるのが価値観であり哲学である。それをわれわれは、エコ・フィロソフィと名付けた。
 したがって、エコ・フィロソフィは、きわめて多面的でありまた多岐にわたる領域を持つ。人の生き方から社会規範、地域、民族、国家、地球など、人類のあらゆる生存基盤が含まれる。その意味では、従来の哲学という領域にはおさまらない総合学であると考えている。