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東洋大学「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ活動報告会

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日時

2010年3月1日15時~17時15分

場所

白山キャンパス6号館6306教室

東洋大学「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ活動報告会が、3月1日月曜日、白山キャンパス6号館6306階教室において開催されました。この企画は、4年間行われてきた「エコ・フィロソフィ」の研究活動を振り返り、これまでの総括ということで重要なイベントとなりました。司会は今井芳昭研究員が務め、 評価委員である、伊東俊太郎先生、柘植綾夫先生、北脇秀敏先生をお招きして、各ユニットの研究成果に対する講評をいただきました。 

竹村牧男研究員(TIEPh)

まず初めに、竹村研究員が開会のあいさつに立ち、活動報告会の主旨説明がありました。TIEPhの企画発足の経緯や、4年間にわたる活動とその研究成果、本年度で終了するTIEPhの今後について、この報告会で提示することが述べられました。 

  

山田利明研究員(TIEPh)

次に、TIEPhの概要と活動報告の詳細を、山田利明研究員が説明しました。内容は、TIEPhの研究組織とそのテーマ、4年間の活動内容と実績の報告となりました。
続いて各ユニットの活動報告が行われました。第1ユニットからは竹村研究員、第2ユニットからは大島尚研究員、第3ユニットからは稲垣諭研究員が、それぞれのユニットの研究成果とその展開状況を発表しました。

第1ユニット研究報告

竹村研究員は、第1ユニットの研究成果として、環境と人間の関係を共生学として以下のようにまとめ、報告しました。まず、一人の人間とは、身・心と環境の全体であって、自分の身・心とそれが置かれている環境のすべてなのであるといいます。 そして我々はここで、従来の自己観、人間観を根本的に考え直す必要があり、自己理解を、存在の事実に照らし合わせて、変革すべきであるという提言がなされました。何故なら、自・他の縁起的関係は、異時的・時間的にも存在していて、他者は、同時代の他者のみではなく、過去世代の他者を含み、未来世代の他者をも含むものだからです。 だから我々は、おのずからこの地球環境の未来に切実な関心を抱き、現今の汚染され破壊された環境をも修復・改善していかなければならない、ということになります。竹村研究員は、人間と自然、人間と人間の、同時的・異時的共生を、どこまでも追求していくところに、一つのエコ・フィロソフィを見ることができるであろうと述べて、 今後は、こうした自己と世界に関するパラダイムシフトの重要性を訴えつつ、その見方を社会科学と統合していくことが課題であるとして、発表を結びました。

第2ユニット研究報告

大島尚研究員(TIEPh)

続く第2ユニットの活動報告は、大島研究員が環境問題を社会的ジレンマ構造という、社会心理学における見地からアジアの諸地域における環境意識と用差をもとに考察した成果を発表しました。
環境問題においては、社会的トラップ、即ち、短期的には利益をもたらす行動が長期的には不利益になるような行動を、どのように解決するかということが問題になり、環境問題に関する知識や、環境問題に対する危機意識、環境配慮への行動意図等が必要と考えられ、そのような社会的・共同体意識の調査として、経済発展の著しいアジア諸国の人々の、環境問題に対する意識を調査しました。
調査地域は、日本、シンガポール、中国、ベトナムの四カ国であり、その調査から見えてくるのは、環境問題への意識は、便利な生活を犠牲にすべきかどうかの意識に関連しており、環境配慮の取り組みは、地域社会の中で実践することが効果的であるということです。そして更なる課題としては、調査対象地域の拡大、特に東洋的価値観と西洋的価値観の比較、環境配慮行動の規定因についての文化間比較、道徳心、正義感についての心理学的研究等が挙げられました。

第3ユニット研究報告

稲垣諭研究員(TIEPh)

最後に第3ユニットの稲垣研究員は、環境と人間性を豊かにするようなデザインの可能性を取り出す課題設定が求められると述べました。第3ユニットは、哲学的な環境デザインの可能性を考慮した、システムデザインを探求課題としており、一つは、環境関連領域における原理や規範を細分化し、個々の生命圏の連動原理を導出することにあり、もう一つは、人間行為の変容を誘導する環境デザインの可能性を探る試みを行うことで、現状の環境問題に対するオルタナティブな選択肢を提起することです。
異なるシステムが効果的に連動していく仕方は一義的に決まるような単純なものではないが、連動するシステムが相互に媒介変数を提供しあうことで、持続可能な機構が可能になります。例えば、二重安定性の機構がその可能性のひとつであるといいます。また、周囲の環境のデザインによって、人々が強制されることなく、各個人の能力を可能な限り発揮できる選択肢として設定することで、人間の可能性と創造性の拡張を目標とする試みがあります。その際、既存の環境関連課題を超えて、新たな学術領域との持続可能的な連携をも視野に入れる必要があり、それによって、持続可能な社会を形成することには同時に、その社会を生きる新たな人間性そのものの形成が不可避になることが様々な領域から示唆されます。その際の見通しとして、芸術や建築における試み、樹木、水、風を実践的なデザインを行う風水説を手がかりに明らかにする試みも行いました。以上のことは、新たな共生的関係の発見にも寄与すると予想されるであろうと、発表を結びました。


   

評価委員 柘植綾夫先生

各ユニットの活動報告の後、フロアからの質疑応答を行いました。フロアからも様々な意見が飛び出し、充実した内容となりました。その際に、山田研究員から、TIEPhの来年度からの活動の構想が述べられました。来年度からは、IR3Sを前身として新設される社団法人「サステイナビリティ・コンソーシアム」に参加する予定であり、ここに所属して活動を継続していく予定であることを説明しました。
そして最後に、TIEPhの評価委員の先生方から、それぞれ講評をいただきました。 

 柘植先生は、工学社・産業人としての立場からも、地球環境改善に技術だけでは足りないのだと感じていて、それについてTIEPhのような活動は重要であり、もっと主張していくべきであろうとおっしゃられました。共生学ということで、環境問題に対して新たな学問領域を切り開いたことは高く評価できるし、市民の中にも共生学の理解が広まりつつある中で、その機運に乗ってこのような活動、学問を広めていくべきであろうということでした。
課題としては、アウトリーチすること、つまり、他のディシプリン(学問・学科)への指示や提言を行うべきであるということでした。近年、文科省レベルで「知の統合」ということを目指しているが、出来た試しがないのだが、「エコ・フィロソフィ」が理学・工学に対してアウトリーチし、提言をしていくことで、それが達成されるのではないかとおっしゃられ、その提言としては、やはり社会・経済的価値創造にあり、このような学問がそれに関与すること、たとえば、企業に対して強制や倫理という視点がブランドイメージにプラスとなるようなことがあれば、促進されるのではないかと述べられました。

 

評価委員 北脇秀敏先生

北脇先生は、「エコ・フィロソフィ」のような学問が展開していくことに関して、「国際的」という観点が必要であると述べられました。まず、現状では、第1ユニットのような論文が英語になることが大事であり、東洋の共生という思想が西洋の克服という思想と戦って行くために、その点を考慮するべきであるとおっしゃられ、言語の壁、相手の土俵の上で戦うことで、今後のTIEPhの活動範囲が決まっていくのではないかと述べられました。
その際、社会心理学の手法は国際研究のツールになり得ると思われるし、経済と環境の提携として、環境デザインという視点とその実際に成功している事例を様々取り上げて、推し進めていくことは効果があるだろうとおっしゃっていただきました。 

伊東先生は、TIEPhの活動報告をお聞きになられて、4年間の成果がしっかり出ており、各ユニットの成果がしっかりとまとまっていて良かったとおっしゃっていただきました。
伊東先生は、北脇先生がおっしゃられたように、TIEPhの論文を英語にすべきであると述べられました。国際的展開は是非とも必要であり、言語の問題を考慮することと、向こうの土俵に乗りつつも単に同調するのではなく、こちらの独自性をしっかり打ちだしていくことによって、成功するだろうとおっしゃられました。その際重要なのは、「互性(相互、each other)」でもって互いの生きる道を展開・主張していける方法を考えるべきであり、それは哲学と社会心理学など他学問との関係もそうであり、両者をうまく連携することで、もっと提言することの可能性が出るのではないかと述べられました。
以上、評価委員の先生方の講評をいただいて、活動報告会は閉会となりました。TIEPhの世年間の活動を振り返り、総括した、非常に有意義な会となりました。

評価委員 伊東俊太郎先生