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ICAS/TIEPh共催国際セミナー 持続可能な発展と自然、人間―西洋と東洋の対話から新しいエコ・フィロソフィを求めて―

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主催

東洋大学「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ
Transdisciplinary Initiative for Eco-Philosophy  [TIEPh]
茨城大学地球変動適応科学研究機関
Institute for global Change Adaptation Science [ICAS]

後援

サステイナビリティ学連携研究機構
Integrated Research System for Sustainability Science [IR3S]

日時

平成21年10月10日(土曜) 午後1時~5時

場所

東洋大学 白山キャンパス スカイホール(白山校舎2号館16階)

基調講演

「サステイナビリティと環境倫理学」小坂国継(日本大学)

研究発表者

  • 稲垣諭(東洋大学)
  • 上柿崇英(茨城大学)
  • 竹村牧男(東洋大学)
  • Jeffrey Clark(茨城大学)
  • 中川光弘(茨城大学)
  • 岡野守也(サングラハ教育・心理研究所)

ICAS/TIEPh国際セミナー「持続可能な発展と自然、人間」が、10月10日土曜日、白山キャンパス2号館16階のスカイホールにおいて開催されました。この企画はICASとTIEPhの共催で行われてきたもので、今年で第4回目を迎えました。今年度でひとまず終了する「エコ・フィロソフィ」の研究活動を振り返り、これまでの総括ということで重要なイベントとなりました。

 竹村牧男研究員(TIEPh)

竹村牧男研究員(TIEPh)

まず初めに、竹村研究員が開会のあいさつに立ち、ICASとTIEPhによる共催企画発足の経緯や、4年間にわたる活動に関して、その研究成果もさることながら、共同研究を継続していくことの重要性をお話くださいました。

 日本大学教授 小坂国継先生

日本大学教授 小坂国継先生

次に、基調講演として、日本大学の小坂国継先生に、「サステイナビリティと環境倫理学」という題目で講話をしていただきました。その中で小坂先生は、環境問題を解決するための三つのアプローチ、「自然科学的アプローチ」、「社会科学的アプローチ」、「環境倫理学的アプローチ」についてお話くださいました。小坂先生は、これらのアプローチがそれぞれ単独にではなく、相互に密接して連携するとき、最も効果的な問題解決が期待できると解説され、持続可能な社会を目指すためには、自然・環境の破壊をもたらすような人間の価値観を改め、個人個人の意識に公平性や倫理観についての健全な自覚が不可欠であると最後を結びました。 続いて研究発表を行いました。ICASからは中川光弘先生、Jeffrey. Clark先生、そして上柿崇英先生、TIEPhからは竹村牧男研究員と稲垣諭研究員が、それぞれ環境倫理に関する学際的な研究とその展開状況、そして環境問題解決のための提言を発表なされました。 

稲垣諭研究員(TIEPh) 

稲垣諭研究員(TIEPh)

稲垣研究員は、西洋哲学の立場から、特に18世紀以降からのドイツ自然哲学に焦点を置かれ、ドイツにおける人間と自然との関わりについて論じられました。そこで先生は、自然を人間の認識能力の枠に嵌め込むような理解の仕方ではなく、ゲーテにおける自然の根源的な活動を直観するということが、自然との関わりを変化させると論じられました。そのことが私たちの自然に対するイメージの変化を促し、それを手がかりとして、人間性を豊かにするようなデザインの可能性を取り出す課題設定が求められると述べられました。 

上柿崇英先生 

上柿崇英先生

上柿先生は、現代環境思想の影響力の低下について問題提起をされました。現代環境思想の中核を担った環境倫理学は、いまや「環境プラグマティズム」と「草の根環境主義」に空中分解し、かつての批判力は完全に失われている、と述べられ、環境思想の本来の役割の重要性、つまり、環境危機をもたらした文化的様式と社会的様式の双方の本質を考察し、持続可能な社会を目指す際に、エコシステムと社会システムの関係性はいかなるもので、そこに生きる人間存在のあり方とはいかなるものなのか、といった全体主義的な未来のビジョンを論じていくことが重要であると述べられました。

 竹村牧男研究員

竹村牧男研究員

竹村研究員は、「環境倫理学」が扱う問題は、1.自然の生存権の問題:人間と自然の共生はどうあるべきか、2.世代間倫理の問題:現世代の人間と未来世代の人間はどのように共生できるか、3.地球全体主義:単なるアトミスティックな個人主義でやっていけるのかという3点にあると述べられました。環境問題ないしサステイナビリティの問題の所在は、1.自己と自然との共生と、および 2.自己と他者との共生とが、本来のあるべきあり方においてどのように実現できるのかということが要件であり、それについて空海の思想を参照し、1.自己と自然との共生に関しては、人間も環境も仏を体としているという思想から、人間と環境の共生を開くものとなるであろうこと、そして 2.自己と他者との共生に関しては、あらゆる他者をも自己とし、一切の他者と協働する自己として実現し、人間と人間の共生の世界が開けるのではと論じられました。

 Jeffrey. Clark先生

Jeffrey. Clark先生

クラーク先生は、全世界で環境危機が重大となる中、危機感がそれほど高まっていないのは、政府、 企業、科学、 社会など他人が何かをしてくれると期待する傾向が誰にもあるからだと指摘します。よって、我々と環境の関わりを作ろうとするとき、我々はこういった依存的な姿勢をやめて、政府、社会、経済機構に頼らない、人間同士の絆を作る、つまり、新しい意味の「共同体」を作ることが大切な時代だと述べられました。この共同体を形成する具体的な働きとして、アメリカでは「食べ物」を中心とした、農業教育などが行われていて、子供達が共に学校で農産物を作り、食事を作り、皿を洗うプログラムなどが、自然の因果関係の意識と民主主義の精神とを生徒の心に植え付けるのだと論じられました。このようにしてできる共同体は従来と比べて、自発性、平等性、集権排除の特徴が目立ち、種播きから皿洗いまで自然農業の全過程で感謝と喜びを感じることこそ新しい価値観を表現していると述べられました。 

中川光弘先生 

中川光弘先生

サステイナビリティ(持続可能性)という概念が、人類生存の継続性の視点から、文明の展開の一つの評価基軸として国際的に注目を集めるようになってきた背景には、人類生存基盤の脆弱化への危惧があり、持続不可能な方向に展開しているのではないかという危機感が共有されるようになってきたからであると述べられました。このような危機に対して先生は、このサステイナビリティの質的な内容を成立させる基礎条件として、生命の全一性、即ちホリスティックな世界観の問題を指摘し、ただ生存し続ければいいのではく、生命の躍動を実感できるような充実した生が求められているのであると述べられました。それに関して先生は、生命の全一性を回復するための新しい「いのち論」が模索され、展開されねばならないと論じられました。 

岡野守也先生 

岡野守也先生

岡野先生は、環境問題は、人類が直面しているグローバル=全地球的な問題の代表的なものの一つであり、問題がグローバルである以上、解決策もグローバルでなければならず、具体的にはエコロジカルに持続可能な全地球的な政治経済のシステムの構築が必須であろうと述べられました。そして先生は、そうした政治経済システムを構想しうる心のあり方とはどういうものかという問いを立て、思想家ケン・ウィルバーの4象限理論を参照しつつ、よりグローバルな理性(「ヴィジョンロジック=展望論理」)段階への集団的成長が必要でもあり可能でもあることを論じられました。 各先生の研究発表の後、小坂先生に本日の総括をいただき、現状の環境問題に対する取り組み方をお話しいただきました。その後、本日のセミナーを巡って、総合討論が行われました。この総合討論では、フロアからも様々な意見が飛び出し、総合討論は活況を呈しつつ幕を下ろしました。  

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