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公開講演会および公開シンポジウム報告

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公開シンポジウムの詳細

9月19日(水)、9月20日(木)
東洋大学白山キャンパス 井上円了ホール(5号館地下2階)
公開講演会『環境保護行動を促す説得的コミュニケーション
(Using persuasive communications to protect the environment)』

講師:ロバート・B・チャルディーニ
(Robert B. Cialdini,アリゾナ州立大学)

2007年9月19日、東洋大学井上円了ホールにて、日本心理学会とTIEPh共催で、公開講演会『環境保護行動を促す説得的コミュニケーション(Using persuasive communications to protect the environment)』が行われました。講師として、『影響力の武器』という著書でも高名なロバート・B・チャルディーニ先生(Robert B. Cialdini,アリゾナ州立大学)が招かれました。

公開講演会の様子

≪講演内容≫ 

先生が強調なさったのは、社会的規範(多くの人がやっていること、および、多くの人が是認していること)は、人間の行為を方向づけるうえで驚くべき力を持っているということでした。さらにまた先生は、次の二つの重要な決定において、人びとがこの力に注目することがいかに少ないかも同様に驚くべきことだと述べられました。第一は、観察者として自分自身の行為の原因を解釈するとき、第二は、コミュニケーションの送り手として他者の行為に影響を与えるときです。
 環境問題に関連して実施された研究で以下のことが明らかにされました。(1)エネルギー使用者は、社会的規範が自分自身のエネルギー使用に果たしている役割を過小評価してしるということ。(2)社会的規範に基づいた理由を含む説得的コミュニケーションは、これまで用いられてきたコミュニケーションよりも効果があるということ。(3)こうした社会的規範に基づくコミュニケーションは低コストであるにもかかわらず、あまり使われていないということ。
 これら一連の実証研究は、環境問題という「マクロ」な問題において、私たちの身近にいる他者の影響といった「ミクロ」な問題に注目する必要があることを示唆しています。また、先生が強調される「社会的規範の力」は、個々人が所属している文化と密接に関係しており、同一文化内で広く共有されるものの見方(価値観)を検討することの重要性を示しています。

公開シンポジウム「地球環境とアジアの価値観─われわれは未来世代を守れるのか─」

  • コーディネーター:田中 淳(東洋大学社会学部教授)
  • パネリスト:村田 佳壽子(環境ジャーナリスト)
  • 大島 尚(東洋大学社会学部教授)
  • 鄭 全全(浙江大学教授)
  • ビクトール・サベージ(国立シンガポール大学准教授)
  • 鄭 躍軍(総合地球環境学研究所准教授)

公開シンポジウムの様子

公開シンポジウムの様子

公開講演会のその翌日(20日)に、日本心理学会との共催でTIEPh公開シンポジウム『地球環境とアジアの価値観─われわれは未来世代を守れるのか─』が開催されました。

≪シンポジウム内容≫ 

地球温暖化に代表されるような「環境問題」は、人類が共通に取り組むべき課題として、様々な分野から解決への糸口が模索されています。たとえば、工学的なアプローチによる新技術の開発や、「排出権取引」といった経済政策などが実際に進められてきています。
 一方、現在の環境問題を引き起こしている主な原因が、人間の活動にあることは明らかであることから、心理学からの貢献も期待されています。しかし、従来の心理学研究の枠組みの中では、環境問題は扱いにくいテーマであることは否めません。一つには、心理学が扱ってきた「環境」は、社会的環境も含め主として個人を取り巻く環境が中心であり、「地球環境」とか「自然環境」といった大きなスケールで環境を捉える事が少なかったことが挙げられます。また、「持続可能な開発」という用語を世界に広めることになった「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」の報告では、「未来世代が自らのニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすこと」という考え方が提案され、環境問題が世代間の問題であることが示されていますが、心理学では「未来世代」といった長いスケールの時間はほとんど扱われることがありませんでした。
 このシンポジウムでは、現在の環境問題に対する心理学的なアプローチの一つとして、人々の「価値観」という視点からの可能性を検討しました。価値観研究では、多くの国際比較の調査データが蓄積されてきており、また、西洋的な価値観と東洋的な価値観の違いについてもさまざまな側面から論じられてきました。現在の環境問題は、西洋的な価値観にもとづく科学や経済が引き起こしたものだという主張がなされる場合もあります。一方、近年の環境問題についての議論は、経済的な発展を続けるアジアの国々をターゲットとして語られることが多くなっています。アジア諸国の持続的な発展のあり方が、当面の地球環境の行く末を左右するというのが一般的な認識になっています。そこで、まずはアジアの人々の価値観に焦点を当て、未来世代を守るための方策の可能性について議論をしました。

≪パネリスト発表概要≫

  • 村田佳壽子先生:環境問題を考える際の、人間を知ることの重要性、心理学的アプローチの必要性について、環境ジャーナリストの立場からお話をいただきました。
  • 大島尚先生:中国、シンガポール、日本で実施した価値観調査データをもとに、地域ごとの比較を行いながら、環境問題についての人々の価値観の現状を紹介していただきました。
  • 鄭全全先生:中国浙江省の実情を中心に、環境汚染や環境保護に対する中国の人々の意識について、社会心理学の立場から解説していただきました。
  • ビクトール・サベージ先生:シンガポールの人々の環境に対する意識や、東南アジアの人々の自然観などについて、地理学の立場から解説していただきました。
  • 鄭躍軍先生:アジアの人々の環境に対する価値観について、自身がこれまでに実施した多くの調査データをもとに、問題提起をしていただきました。