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第2ユニット調査報告「環境配慮行動の実行可能性認知」について

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第2ユニット調査報告結果

環境配慮行動の実行可能性認知について(調査報告)

 

価値観・行動ユニット研究支援者:大久保 暢俊

 

TIEPh第二ユニットでは、心理学を専門とする研究者が中心となり、調査や実験といった方法を用いて環境にかかわるテーマに取り組んでいます。今回報告するのは、その中のプロジェクトのひとつである、環境配慮行動の実行可能性認知の調査結果です。

これまで、環境に対する価値観の国際比較をはじめ、TIEPh第二ユニットでは精力的に実証研究が行われています(大島, 2007, 2008, 2009, 2012:エコ・フィロソフィ研究)。「実行可能性認知」プロジェクトでは、環境配慮行動を促進する「行動の実行しやすさ」の要因に着目しています。行動の実行しやすさ(実行可能性)の認知は、環境を大事にしたいと思う態度を、それと一貫する行動に結びつける重要な心理要因です。今回は、自己評価(自分がどれほど当該の行動を実行できると思うか)という他者を想定しない評価と、平均他者評価(平均的に人はどれほど実行できると思うか)、相対自己評価(平均的な人と比べて自分がどれほど実行できると思うか)という他者を想定した評価を同時に測定することで、実行可能性の認知に、私たちの「平均的な他者像(≒世間の感覚)」がどの程度の強さで影響しているのかを検討しました。

心理学的な調査は、なんらかの心理要因を含むモデルを想定します。そこで、この評価間の影響関係を検討するための心理メカニズムとして、私たちは「平均以上効果」という心理現象の認知メカニズムを適用しました。平均以上効果とは、自分は少なくとも平均よりも上であると考える心理傾向のことです。この現象の面白いところは、そのような個人が集まった社会(マクロ)レベルの状態を説明できることにあります。もし、私たちが平均以上効果のような心理を持っていなければ、個々人の評定値の平均は理論的な中央値に近くなるはずです(誤差を考慮したうえでも)。しかし、もし、多くの人が「自分は少なくとも平均よりは上(マシだ)」と考えており、そのような人が大多数を占めているのであれば、平均値は理論的な中央値よりも大きくなります。実行可能性の認知がこの心理的性質を備えているのであれば、環境に配慮した行動を行うとする際、ある種の心理的バイアス(歪み)がかかることになります。このバイアスは時に厄介な存在となることがあります。たとえば、このバイアスゆえに社会全体として「価値観は共有していても実行ができない」という状態になってしまうなどです。本調査は、このバイアスにかかわる一連の心理・行動プロセスを検証することで、バイアスの所在を正確に突き止めることを大きな目的としています。

調査は、東洋大学で開講されている「エコ・フィロソフィ入門」の受講生(2013年度)を対象に行いました。206名の学部生さんに、環境に配慮した10種類の行動について、どれほど実行できそうかを答えていただきました。10種類の行動は大きく2つに分類でき、ひとつは他者が行っているのをよく見かける環境配慮行動(たとえば「部屋から出るときはエアコンや暖房を消す」など)と、他者が行っているのを見かけない環境配慮行動(たとえば、「誰かがエコロジカルでない行動をしていたら指摘する」など)がありました(堀毛, 2012:エコ・フィロソフィ研究)。他者が行っているのを見かける行動は、多くの人がとっている行動であり、本来は自分だけでなく他者も「実行できる」と推測できる行動です。それに対して、他者が行っているのを見かけない行動は、実行それ自体が難しく、自分だけでなく他者も行うのが難しい行動です。もし、私たちが合理的であれば、どちらの行動であれ平均以上効果は確認されず、理論的な中央値と同じになるはずです。

データ分析の結果、他者が行っているのをよく見かけける環境配慮行動では、自分は平均よりもできると考えている人が多いということが明らかになりました。すなわち、平均以上効果が確認されました。さらに、その心理メカニズムとして、平均情報を無視して自己情報に注目する心理過程も明らかになりました。それに対して、他者が行っているのを見かけない環境配慮行動では、平均以上効果とは逆の平均以下効果(多くの人が自分を平均以下であると考える心理傾向)が確認されました。そして、この心理過程には、自分が実行する際の困難度の認知が大きくかかわっていることが明らかとなりました。

グラフ

今回は主要な結果を報告しましたが、より詳しい分析や追加の情報は随時TIEPhホームページ、および研究成果にて報告していきます。興味、ご関心のある方は是非ともご覧ください。