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東洋大学社会学部50周年 参考資料

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資料4-(1)

大学における技術教育  「産学協同」を中心として
草稿(手書き) 東洋大学長 大嶋 豊

私が日本の大学教育の一翼をになって,東洋大学長に就任して以来,日夜私の念頭を離れないのはわが国における科学技術教育の振興の問題である。世界各国は,特に戦後における冷戦も手伝って,いずれも科学技術教育者の振興に全力を傾倒しているのが実情である。こうした状勢に対処するために,アメリカ・ソ連をはじめ列国の大学にあっては,極力理工科系の学生数を増強し,その文科系学生数に対する比率は,いまやいずれも7対3以上になっているときいている。特に科学技術教育を重視しているソ連では,その比率が理工系9対文科系1であるばかりでなく,国民の全部が一定期間技術教育を受けるよう義務づけられている
ことを,最近の情報は伝えている。こうしてソ連が人工衛星打ち揚げ,宇宙開発に一歩を先んずるにいたったのもその背景に科学技術教育に対する政府の強力な指導があったからにほかならない。ひるがえって,わが日本の実状を見ると,大学における科学技術教育の現状はまことに寒心にたえないものがあり,学生数の比率は,むしろ文科系7以上理工系3以下となっている。かくて,一方において工学部卒業生の極度の不足を来たし,一流の生産工場が戦後産業復興の波に乗っていくら設備拡張をしようとしても,直接生産に従事する肝腎の技術者の獲得が思うようにならず,そのため,現在理工系大学に学ぶ学生なら,在学中から各方面の会社から目をつけられ,1人の新卒採用のため,40の大学を探しまわったというエピソードさえ出てくる。まして二流の会社が技術者を求めても到底大学卒業生は求められず,工業高校出身者さえも募集難に陥っているときいている。しかも,そうした技術者養成に当っている理工系大学の実状はどうか。莫大な設備資金と運営費を必要とする理工学部の設置は,主として国家予算でまかなわれる国立大学に集中し,自己採算を以て経営せねばならない私大においては少数の大学を除いて工学部を設けることはほとんど不可能と考えられていたのである。その国立大学においてさえ,国家予算の制約によって年々進歩する研究設備をたえず更新していくことは不可能で,そうした旧式設備で時代の要求する新しい技術の研究も教育も出来るはずはない。ここに一流生産会社は自己のすぐれた生産設備を利用して,技術者を自家養成し,それによって技術者の不足を補おうと,着想するにいたったことは当然であろう。
 一方において企業化した日本の私立大学は設備投資のすくない人文科系乃至社会科学系学部を濫立し,定員を無視してそれに数倍する学生を収容することによって授業料収入の増加をはかっているのである。かくて文科系大学卒業生はちまたにあふれ,その何割かは卒業の最初から失業の浮目を見るに至っている。
 現在の日本の大学教育におけるこの矛盾は,大学の3分の2をしめる私立大学の在り方を再検討し,私立大学における理工学部設置の具体的な方策を考慮することによって解決する必要がある。ここに浮びあがるのが,すでにアメリカなどで実施されている「産学協同」の考え方である。すなわち,産業界が私立大学の技術者養成に資金の上でも設備の上でも協力し,大学は産業界に技術者と研究の成果とを提供し,大学と産業界とが一体となって現代の技術革新に応じられるよう私立大学の工学部建設に邁進することである。
 私はこうした考えで,本学々長に就任以来,文科系学部だけで構成されていた東洋大学に工学部を設置することを宣言し,日夜の準備に努力を重ねてきたが,幸い昨年来大越教授をはじめわが国工学界の最高権威者多数の御賛同と御協力をえて,すぐれた教育陣をととのえることが出来た。更に今回株式会社日立製作所から多大の資金を御寄附頂き,「産学協同」の理念にもとづく,わが国私立大学における工学部設置のテストケースとして施設・設備もすでに用意していた川越校地が間もなく完成されるであろう。もちろん,第一次計画は機械工学,電気工学,応用化学の3学科であるがやがて産業界各方面の御協力を得て,その他の必要な諸学科を漸次増設してゆく考えである。
 わが日本人のすぐれた頭脳に対する投資の問題はすべてアメリカの産業界においても取りあげられているようである。最近外国会社が日本に工場をもつのはその低賃金労働の故ではなくて,むしろ日本人のすぐれた頭脳と技術に期待しているのである。あたかも,ソ連の産業がドイツ人のすぐれた頭脳の利用によって開発されたように,アメリカの産業開発も,むしろ日本人のすぐれた頭脳に頼ろうとしているのである。
 わが産業界もこうした傾向にさきがけて,大学を通しての日本人の頭脳開発に協力し,大学もまたこうした産業界の要望にこたえて理工科系の拡充に努力してこそ,頭脳の海外流出を防ぎ,わが国産業を発展せしめる唯一の道であると確信する。

資料4-(3)

昭和34年度東洋大学入試要項 序言

(初回社会学部学生募集)
東洋大学名誉総長 鮎川義介

ソ連・西独乙の繁栄は工業技術者を多量に養成した結果だった。
 私は現在中政連(日本中小企業政治連盟)の仕事に身命をかけているが,これはいうまでもなく日本の国を建てなおしてゆくことを考えているからである。
 このことに関し,次代をになう若人の教育は何よりも根本的だと思う。
 私が工科の出身だからいうのではないが,これからの日本は工業立国でなければならないことは明らかである。
 日本は工業技術の水準を高めるために工科の教育機関を文科に対して,7対3の割合に置き替えるのが急務である。文部当局もこの方針のもとに制度を改善しようと考えているようであるが,その主旨のもとに私は私のやり方によって工業技術者を養成することに寄与しようと考えている。
 東洋大学は文科系大学として歴史は古く,学祖井上円了博士の建学の精神による素直な学風は,大いに認められるべきものである。
 ここに於て当大学で新しい理工科の設置は自由の構想によって成長しうるものと信じている。
 私は独り東洋大学のためにでなく全私学のためになる事と思うて極めて多忙の身をも顧みず名誉総長の椅子についた次第である。