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東洋大学社会学部50周年 参考資料

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資料2-(1)

昭和34年,関西学院と神戸女学院の2大学を会場にして開かれた日本社会学会第32回の2日目,「社会学の応用」を課題としてシンポジウムが開かれた。米林富男も報告者の1人であった。「現代の人々は現代の課題解決の上で,いかに社会字に対して大きな期待を寄せているか,そしてまた現代の社会学者はこうした生活に密着した学問に,社会学を改造することに,いかに熱意をもっているか,が痛切に感じとられた。」と以下に述べられているが,この視点が社会学科と応用社会学科から成り立つ社会学部の教育理念の基盤をつくっている。社会学部増設認可申請書「目的及び使命」にみられる社会技師ソーシャル・エンジニアの養成を計らんとする思想は,応用的な実学指向の社会学観から生まれた。

「社会学の応用」
米林富男

雑誌「同行」昭和34年(1959)12月号,pp.45-47

先日関西学院と神戸女学院の2大学を会場にして開かれた日本社会学会第32回大会の2日目に「社会学の応用」を課題としてシンポジュウムが開かれた。筆者も報告者のひとりとして演壇に立ったが,聴衆からも活溌な質間がでて,戦後における社会生活の激変と,それにともなう生活の各方面にわたる矛盾軋轢がいかに社会学という新興科学に,人々をしてその解決のいと口を見出させようとしているか。いいかえれば,現代の人々は現代の課題解決の上で,いかに社会学に対する大きな期待をよせているか,そしてまた現代の社会学者はこうした生活に密着した学問に,社会学を改造することに,いかに熱意をもっているか,が痛切に感じとられた。
社会学の応用ということは,日本ばかりでなく世界的に問題になっているらしく,今年9月にイタリーで開かれた国際社会学会議の席上でも,この問題が共同討議の課題として取り上げられていたという。
戦後の日本の社会学は,ドイツ社会学の影響が強かったせいか,社会学を学問として可能なりや,否や,とかその研究対象は何か,その方法とは如何などと,およそ現実生活とはかけはなれた抽象論,観念論に陥っていたきらいがあり,昭和のはじめに大学で社会学の教育を受けた私の経験でも,当時,比較的現実生活に近接した研究を特色としていたアメリカ社会学の書物でも見ていると「君……,アメリカに学問があるかね」など,指導教官に叱られたことを覚えている。それがいかにアメリカに敗北したとはいえ,戦後の社会学は正にアメリカ一辺倒といってもいいほどの転向振りである。
日本の社会学を生活近接的なものに転換させる上において,この傾向は必ずしも排撃すべしとも思われないが,しかしこの学問が実生活の指導や調整に役立つようになればなるほど,この学問の適用される特定の社会の現実を無視するわけにはいかなくなるはずである。
したがって,社会的性格の全く異なるアメリカで発達したアメリカ社会学は,そのままでは必ずしも日本の社会的現実を説明したり改造したりするための指導理論とはなりえない。
そこで,社会学が現実生活に応用されるためには,まずもって社会学の基礎理論そのものが,特定社会の現実を材料として組み立てられねばならなくなる。いいかえるなら,日本社会に応用される社会学は,何にもまして日本社会学でなければならないのである。
われわれは右のような見解から,東洋大学の社会学部を設立するにあたって,現代日本の社会生活に役立つような,いわば社会技師を養成することを目標に,学科や講座の配置を考え,カリキュラムの編成を試みた。すなわち新設の応用社会学科では,およそ人間関係を直接,間接に取り扱うような職場,たとえば各種の教育事業をはじめ,身の上相談を取扱う社会福祉事業とかマス・メディアを通して直接多数の人間の意識に働きかける新聞,出版,放送等の各種のマスコミ産業とか,職場の人間関係を調整統御する労務管理とか,あるいは旅行者のサービスを目的とする観光産業とか,相手に購買意欲を起こさせる販売技術とか,さては相手に投票意欲を起こさせる選挙技術などに従事する人々の職場技術を日本社会に関する実証的な社会学理論にもとづいて,指導することのできる一種の技術学を教えることを目的としている。
 したがって取りあえず,その専攻課程として社会福祉学専攻,広報(マス・コミ)学専攻,図書館学専攻の3専攻を設けたが,いずれは矯正科専攻,観光学専攻,労務管理学専攻,販売学専攻などの諸課程あるいは諸学科が出来ていいのではないかと考えている。 新設の社会学部に包含された従来の社会学科も,右の応用社会学科における社会技術教育に役立つように、何にもましてその社会理論が日本社会,東洋社会の現実に根底をもつ必要がある。そこで,東洋大学の社会学科では,日本や東洋の家族・村落・都市・民族といった諸問題の実証的研究をすすめるために,理論社会学の講座とともに社会の実態調査を主とした社会誌学,民族社会学などの講座が設けられており,それぞれ最高の専門学者を教授に迎えることに成功したのである。
 そして社会調査自体もまた特殊な調査技術を必要とするのであり,こうした技術教育を一層完全なものにするために,機械計算士(プログラマー)の養成なども目下計画中である。
右のように,大学の社会学教育が社会技師の養成を目的とするなら自然科学部門における工学部や医学部と同様に,技術実習の場をもたなければならない。われわれはそれぞれの専門に応じて,こうした技術実習場を新設し,これを綜合的に運営するために,社会学部附属の社会学研究所を設置した。
 社会福祉学には各種の生活相談の実習の場として生活館を,広報学には,たとえば放送の実習の場として放送スタジオを,観光学にはホテル実習場を設けて,職場における実技修得の機会をつくるようにした。工学部の実習工場,医学部の附属病院に相当するものである。
 こうした実習場を基盤とし,学生の実習を兼ねて,あるいは,テレビスタジオで学内テレビ放送を実施したりホテル実習場を学生食堂に開放したり,ラジオで「東洋大学アワー」を毎週ニッポン放送から全国に流したり,テレビを利用して文京区内中学生の適性検査を行ったり,巣鴨のとげぬき地蔵尊内のとげぬき生活館に協力したり多面的な活動をはじめている。そしてその指導には,それぞれの職場における第一線の技能者にお願いしているので,在学中から責任者にコネのつく利点もあり現代の社会学の理論の技術修得にどのように結びつき,どのように役に立つかの実験を試みつつあるものとして,その成果に対しては各方面から多大の関心が寄せられている。
(東洋大学教授)

資料2-(2)

米林富男は「応用社会学の各分科組織に関する草案」という手書きの草稿を遺している。理論社会学を中軸とする社会学科に,先進の社会事業学科と文化学科の伝統をふまえて,あらゆる実践的学科課程の設立を意図している。

応用社会学の各分科組織に関する草案
米林富男

社会学の使命は,人間社会の構造を究明し,よき社会の成立に寄与せんとするいわゆる理論社会学の分野と,社会を構成する人間の関係を追求し、個人と社会との不調整を具体的調整に導かんとするための技術,いわゆる応用社会学の領域に分化して考えることができるであろう。
 本学において社会学科は理論社会学者を中軸とする社会学の領域はすでに以前からその講座が設立され,現に多数の学徒を有するのであるが,応用社会においては極めて部分的な講座があるに過ぎなかった。
 しかし本学はすでに30有余年の以前,他の大学にさきがけて,社会事業科ないし,文化学科が存在し,社会事業科においては近代的社会事業の理論と実際的運営とを教授し,文化学科においては広義の社会教育を意味する,新聞学,図書館学などをはじめ,今日いわゆるマスコミュニケーションに関する学間的研究を包含する学科が構成されていたのである。
 本学はこのような誇るべき伝統と社会的欲求に即応して,応用社会学の分野に属する社会福祉,更正保護,社会教育を目的とする図書館学,新聞学,出版,ラジオ,テレビなど凡そマスコミに関係するあらゆる実際的学科課程を設立せんとするものである。

資料2-(3)

教科書執筆のお願い状

昭和33年9月10日 田辺寿利先生 御机下

前略
 残暑の折,先生には,御清祥の御事と存じ上げます。
 さて,御承知のことと存じますが,かねてより計画中の本学通信学部が来年度より発足の予定となっており,社会学科関係も来年度社会学部昇格の問題と相俟って通信教育の重要な一環として加ることになって居ります。そこで本研究室としましては,通信教育のテキストを左記の要領で諸先生方に執筆いたしていただきたく,この度研究室会議で一応の案ができましたので,是非御執筆願いたく存じ上げます。何分計画自体が極めていそいでなされたため,十分に御理解いただけない点や,先生方夫々の御事情もありましょうが左記に従って御執筆いただけますよう,折返し何分の御返事がいただければ幸甚に存じます。
東洋大学社会学研究室

執筆要領
タテ書で1単位あたり400字詰150枚,従って年間4単位のテキストでは600枚,2単位では300枚となります。但しこの中,若干は本文でなく学習指導要綱となります。-600枚の場合はその8分の1の75枚分。
右のテキストのヒナ型(学習指導要綱つき)は,研究室助手室にございますから御参考下さい。-法政大・池島重信教授「社会学」及び平沢薫教授「教育社会学」
右に御使用ねがう原稿用紙は,教務課石川氏の手許にございますから御不明の点は直接御参照下さいませ。

原稿御提出期日
甚だ期日の余裕がなく誠に申訳けございませんがとりあえず1単位でも早急にお書き上げねがえれば幸に存じます-恐らく1単位ずつの分冊になるはずと存じます。

原稿料
1単位あたり4万円
但し実際の支払は,分割払いとなる予定だそうです。

原稿御提出締切-11月15日(厳守)
1単位分でもお書き上げ下さいましたならば9月でも10月でもよろしいですから御提出下さいませ。

社会学関係のテキスト及び執筆をおねがいする先生方の御氏名を特に付記してないものは、すべて4単位でございます。

社会学一般(教養):米林富男
社会学概論(専門):田辺寿利
社会学史 ( 〃 ):福鎌忠恕
社会誌学 ( 〃 ):鈴木栄太郎
社会調査 ( 〃 ):安田三郎
社会心理学( 〃 ):波多野完治
家族社会学( 〃 )
民族社会学( 〃 ):呉 主恵
都市と農村( 〃 ):磯村英一(各2単位)
犯罪と社会病理( 〃 ):(各2単位)
教育社会学( 〃 ):牧野 巽
文化人類学(教養):関 敬吾

資料2-(4)

社会学部創設を法人側から推進したのは,第22代学長大嶋豊である。

東洋大学学長に就任した大嶋豊
昭和33年(1958年)10月24日 毎日新聞 朝刊

「学問の自由とは,学生自治の名をかりてなにをやってもかまわないということではない。浅薄きわまる唯物史観を奉じて共産革命に走ることは認めない。わたしはそういう共産主義的な考えを絶対に排除することを堅く決意している」-去る22日,全学生を前にして行なった学長就任あいさつである。自ら「端的にいってわたしは国家主義を信条とするが,民主主義と矛盾するものではない」といいきる人である。 左前の経営も災いして昨年は,学内騒動が絶えなかった。ちょうど1年前,校友会から辞を低くして理事長に迎えられるや,たちまち教授,助教授30人,講師30人,事務員30人計90人を整理した。続いて大学自治会を全学連から脱退させるという大ナタを振った。 一高,東大法科を出て安田銀行に籍をおいたがまもなくやめ,昭和10年に蒙古進出の理想を実現させようと善隣協会を設立した。徳王を日本に結びつけた陰の人。かたわら善隣高商校長もかね蒙古留学生の教育にもあたってきた。戦後,追放されて土建,電気,自動車会社の顧問をつとめ,30年からは貿易商をしていた。この経歴が物語るように学者というよりは実業家,考え方も日経連的である。いま2,500万円かけて学内にテレビ局を設け12月から学内放送を始めるほか,明春からはラジオ,テレビを使っての通信教育や社会学部を設けてマス・コミの人材養成にも乗り出すという。さらに川越市に教養学部を建て,ここでは全寮制による道徳教育を徹底させるともいう。いま頭の中は「学生の思想善導」と「理工学部建設」で一ぱいだそうだ。経営者的な感覚だけで大学が運営できるかどうか首をひねる人も多い。鮎川義介翁を尊敬する。香川県出身,59歳。

資料2-(5)

「大学通信教育におけるテレビジョン放送の応用について」
米林富男 草稿 手書き(日付不詳)

1. わが国におけるテレビ教育の現状

「テレビを支配するものは,20世紀後半の文明を支配する」と言われております。
今やテレビの利用は,教育に,娯楽に,医学研究に,工業に,その多角性と効果を実証されつつあります。研究の進行につれて,その利用方法は,今後無限に拡大されるでありましょう。このような,現代における最も強力なマスメディアとしてのテレビは,教育的利用だけにかぎって考えてみても,教育の技術や方法の上に,革命的変化をもたらすものと思われます。
 すでに,アメリカにおいては,70以上の単科並びに総合大学がTV講座を行っており,ミシガン州立大学をはじめとする大学教育TV放送局では,極めて効果的に社会教育の実効をあげつつあります。
 これに対して我が国では,テレビの教育的利用と研究は,小・中学校の教育についてようやく発足しかけたばかりであり,社会教育的方面については皆無にひとしい現状であります。しかも一方では,テレビの娯楽的利用は,何人も予期しなかったような速度で進み,テレビはむしろ「1億総白痴化」をもたらすとの非難の言葉をあびているのであります。これは,我が国のテレビ局の大多数が,株式会社組織の営利企業体であり,できるだけ多数の聴視者をもつためには,自然多数の聴視者の低俗,感覚的な趣味に迎合せざるを得ないためであり,この傾向は,今後ますます増大していくものと考えられます。このような傾向に対して,積極的な教育的立場を貫くべきNHKの教育テレビは,茫濫する娯楽番組に圧倒されており,日本教育テレビも,所詮営利企業体である以上営利性を離れることは不可能で,ために,極めて教育性のうすい自称教育番組の放送に甘んじている現状であります。
 ここにおいて本学は,全く営利を離れた純粋な教育的見地よりテレビの教育的利用,必要性を痛感し,諸大学にさきがけて学内テレビ局を設置し,テレビ教育理論の研究と,その学校教育・社会教育両面への利用を,積極的に推進せんとする決意と構想をかためたのであります。

2. 本学TV教育の構想

(a) 大学教育におけるテレビの利用

本学におきましては,既に昨年度(昭和33年度)文部省より私大研究設備助成金の交付をうけ,本学構内に閉鎖回路テレビジョン(クローズド・サーキット・テレビジョン)を中心とする特殊視聴覚教育設備を設置し,学校集団における視聴覚的教育方法とその教育効果について,厳密・科学的な実験・調査をつづけております。
わが国の大学知育におけるテレビ利用の研究やデータは皆無であるにもかかわらず,今日の大学は,日に日に,効果的・能率的な教育方法を採用せざるを得ない窮地に追いこまれていると言えましょう。すなわち,今日の大学の1ヵ年における授業数は,いぜんとして講義1単位15時間,1講義1ヵ年4単位として60時間に制約されており,旧来のノートのみによる講義では,日増しに増大する教授内容を,この制約された時間の枠内には盛りこめなくなりつつあります。また,2ヵ年に短縮された専門教育の,最後の1ヵ年は就職準備のために費されること多く,ために大学卒業者の専門的知識水準の低下は,一つの社会間題となりつつあります。このような大学教育の現状に対し,テレビの導入は必ず,その活路をひらくものとなるでありましょう。
 したがって,本学の研究は,ただ本学のためのみならず,ひろく我が国大学教育の今後のあり方について,重要な理論的示唆を与えうるものとして,社会的・国家的使命を負うものと考えます。

(b) 通信教育におけるテレビの利用

 このような学内テレビによる教育効果を的確に把握することができれば,そのデータにもとづいて,学外テレビ放送による通信教育を行うことも可能となるでありましょう。それはまた,わが国教育の緊急の課題でもあります。
 なぜならば,現在の大学の通信教育にはいろいろと隘路があり,勤労青年たちにとって受講は極めて困難な間題になっているからであります。まずその隘路の最大のものは,1年間6週間の面接授業であります。勤労青年にとって,年間6週間の長期にわたって東京に滞在するということは,時間的にも費用の点でもほとんど不可能にちかいのであります。かりに通信教育にテレビを利用し,しかも聴視者が個人でなく集団であれば,スクーリングの目的は,ほとんど達成されるのではあるまいか。
 かくして,通信教育テレビが利用されますならば,やがては理工学系の通信教育も可能となるでありましょう。スクーリングは全廃されないまでも1/2,1/3に軽減されるでありましょうし,このことによって,ただに勤労青年のみならず,自衛隊員・警察官等の大学教育の機会は,大幅に拡大されるでありましょう。
 このことは,1つには,教育の機会の均等をうたう「教育基本法」の精神を実現するものであり,2つには,理工科系の教育を重視し,青年教育に力を入れんとする政府の文教方針を裏づけ,文字通り活を入れるものであると信じます。本学におけるテレビ局設置の目的は,ここにおいてはじめて,達成されるのであります。

3. その財政的裏づけと国家の援助について

このテレビによる通信教育に要する諸経費が莫大なものに達することは申すまでもありませんが,本学はこの経費の一切は通信教育受講生に負担させない方針であります。これらの設備や運営に必要な財的基礎を獲得する方法として次の様な案を用意しております。すなわち,現在計画中の「日本証券テレビ社」(仮称)との提携により,一部は文部省の私大研究設備助成補助金(昭和33年度より継続交付予定)により,その目的を達成することができると思います。
「日本証券テレビ社」は東京証券取引所会員たる各証券会社の共同出資により,取引所内の諸事情(主として上場株価の変動状況など)をUHFテレビにより,各証券会社店頭その他に同時的に伝達する目的のものでありますが,この所要時刻は最大限午前8時より午後5時まででありますので,このテレビ4線をそのまま午後5時半からはじまる本学の通信教育テレビに活用し,午後5時以後午後12時前後まで使用すれば本学の通信教育者の目的は達せられることになるわけであります。こうして日本証券テレビ放送設備ならびに運営の為の経常費をある程度まで負担するならば,本学通信教育にテレビを応用する上で要する財政的裏づけを確保することになります。なお本学通信教育テレビ設備の充実補助はよりすぐれた通信教育を実現するためには,ぜひとも必要で,文部省に対し,本年度もまたテレビ放送設置拡充の為に私大研究設備助成補助金を交付されるよう申請いたしました。

資料2-(6)

大学テレビ放送と証券テレビ放送の協同も構想された。

「大学テレビ放送と証券テレビ放送」
米林富男 草稿 手書き

 テレビジョン利用による通信教育を行うには,(1)大学が既設のテレビ放送局のスポンサーとなって,特定の放送時間にその放送局の電波を買い取り,講義内容を放送する方法が考えられる。しかし,現在民間のテレビ放送はすべて,営利企業体によって運営されているために,電波料はきわめて高価で,たとえば,教育放送を目的とする日本教育テレビでさえ,1回の放送15分間としてAクラスの時間なら50万円,Cクラスでも15万円が標準単価であり,したがって毎週1回1時間ずつ放送するとしても,1ヶ月に要する費用は,もしその製作費を加算すれば莫大な額に達するのであります。これでは毎日数時間の放送を必要とする大学通信教育のためのテレビ放送に民放を利用することは,私立大学の財政の上から絶対許されないのであります。
 第2の方法として考えられますのは,現に通信教育を実施している各大学が共同でテレビジョン放送局を設置し,各大学でその得意とする学科目を担当し,通信教育を実施する方法であるが,これはNHKの教育放送で卒業免許状が出せないのと同様,現在の大学通信教育制度のもとでは,受講学生に大学卒業の免許状を与えるには1大学のみの単位を揃える必要があり,多くの大学の単位を各別にとっても卒業出来ないのが現状であります。したがって,大学においてテレビ利用の通信教育を実施するには,第3の方法として是非ともその大学専用のテレビ局を持つ必要が生ずるのであります。しかるに,テレビ放送を大学自ら実施するには,電波の割当を受けねばならず,更に放送設備を整えるには莫大な資金を必要とするのであります。しかし,電波のチャンネル割当には制限があり,現在VHF帯における未割当としてのこっているのは,第12チャンネルだけであります。また設備資金の問題や受信器の問題も財力のとぼしい受講生に負担させることは不可能でありますので,われわれとしては,もし本大学に通信教育用のVHF帯が割当てられると仮定いたしますと,以上の隘路を次のような方法で打開したいと考えております。すなわち,大学が勤労青年相手に通信教育放送を実施するのは毎日主として午後5時以後となりますので,それ以前の時間を利用してテレビ放送を実施しようとする機関との提携であります。そのひとつの相手として考えられるのは兜町の証券取引所において行われる場立ちの状況をテレビ放送によって,各証券会社の本・支店や一般株主に放送しようとする(仮称)証券テレビ放送であります。しかも証券取引所の稼動時間は毎日午前8時間半から午後4時まででありますので,夜間勤労青年を相手とする大学通信教育放送と重複することはないのであります。したがって,ひとつのチャンネルを双方にて共用することができますので,もし大学側において電波の割当を受けることができますれば,この電波を昼間には証券テレビ放送に利用することにより,設備費ならびに運営費の一部は証券会社に負担せしめることは可能ではないかと思います。
 証券テレビ放送の効用は1,2にとどまりません。(1)まず現在の取引所における取引状況は電話によって各証券会社に通達され,その多少の時間と不正確さとをともなうので,この間隙を利用していわゆるノミ行為が行われ取引の公正を乱すことがすくなくない。テレビによればこうした取引所員の不正行為を防止することができましょう。(2)電話によるときは肝腎の場立ちの状況が正確には伝えられないが,テレビによるときは黒板にかわる売買値段の速報のほか,株式取引判断に必要な場立ちの人気の沸騰状況をもあわせて伝達することができる。(3)一般テレビ受像器で株式取引状況を聴視できれば,一般国民の証券取引に対する関心を深め,優良産業に対する投資を促進する結果,日本の経済的基盤を強化する上に貢献するでありましょう。
 大学におけるテレビ電波の利用は(1)学校教育の面におけるテレビ通信教育の実施と(2)大学拡張運動のひとつとしての社会教育への利用であります。
 現在わが国の通信教育は,大学の場合6大学が実施しておりますが,いずれも社会科学,人文科学の学科に限られ,しかも印刷物であるテキスト郵送を媒介として行われているにすぎず,したがって自然科学系(理工系)の学科に関する通信教育は不可能とされております。かゝる学習の不備を補うために,現在大学通信教育には1ヶ年実に6週間の長きにわたるスクーリング(本校に出向いて行われる面接授業)を必要とするのであります。勤労青年が1ヵ年6週間の休暇をとることはほとんど不可能であり,又その費用も莫大な額にのぼり,薄給の勤労青年にとってはその負担にたえられないのであります。通信学生が中途で大部分脱落する最大の理由はここにあります。しかるに,もし大学通信教育にテレビ放送を利用すれば,通信教育の学習効果は教室内における講義の学習効果と大差ないまでにたかめることは不可能ではありません。したがって,現在課せられている6週間のスクーリングの期間をあるいは2分の1に,あるいは3分の1に短縮出来るはずであり,その結果通信教育受講学生の層は大幅に拡大し,憲法に規定する教育の機会均等の精神にも副う所以であろうと信じます。更にテレビを利用すれば,自然科学系の諸学科中技術方面の通信教育も可能となり,特に職場における労務者・技術者の再教育はきわめて容易となるはずであります。昼間時証券テレビ放送の間隙を利用して,有力会社をスポンサーとしてわが国各産業界の実情を放送すれば,社会教育に貢献するところもすくなくないと思います。
 現在,テレビの弊害が強く叫ばれておりますが,NHKを除く民間放送がすべて営利目的の会社経営にゆだねられている結果であります。電波は元来教育者が利用すべきものと信じますので関東地方におけるテレビの最後のチャンネルは,是非とも大学通信教育のために割当てていただきたいと思います。その昼間遊休時をさきにのべた証券テレビ放送に利用すれば,1本のチャンネルを国家のためにきわめて有効に利用することができ,その財的基礎も確定されるわけであります。更に勤労青少年をして大学教育に対し希望をもたせるなら,青少年の不良化を防止する上にも偉大なる効果があると信じます。

資料2-(18)

高岩寺総合社会施設案
昭和34年(1959年)

1. 施設の名称

とげぬき生活館(仮称)

2. 設立の主体

高岩寺

3. 協力態勢

東洋大学教職員団
社会学部
法学部
経済学部

4. 設立の趣旨

宗教教義の実践面において近代科学の理論と技術を導入し,人類の福祉を増達せしめ地上に浄土の理想を実現する一物たらんとす

5. 事業の種類及び方法

1 総合相談事業(よろずこまりごとの相談)

A 人事相談 毎週水曜日午後1時~3時 (心のくるしみ,家族不和,もめごと,子供のしつけ,よい子供に育てる相談そのほか人事相談)

【担当】
東洋大学社会学部応用社会学科:米林富男先生
東洋大学社会学部応用社会学科:村田宏雄先生
東洋大学社会学部応用社会学科:モーゼス・バーグ先生
東洋大学社会学部応用社会学科:塚本 哲先生
そのほか教師・助手大勢

B 法律相談 毎週月曜日午後1時~5時 (商売上の債権債務,親子兄弟間の扶養や相続,子供の不良化処置などについての法律間題の相談)

【担当】
東洋大学法学部:三野昌二先生
東洋大学法学部:遠藤  先生
東洋大学法学部 社会学部応用社会学科 :内藤文質先生(弁護士)

C 経営相談 毎週金曜日午後1時~5時 (事業の経営,税金問題,会計経理,事業繁栄のかんどころなど商売や企業についての相談)

【担当】
東洋大学経済学部 :三宅 先生

D 相談料

 最初の相談料 金200円也
その後の処置については実費
通信費 実費
交通費 実費
テスト料 1回1種類につき金100円也
出張旅費 実費
日当 都内 500円・都外・三多摩 700円~1000円
相談料その他の負担能力がないと認められる場合は相談に応じ減額又は免除する

E ケースレコード

別紙様式により作成し,人事相談及び法律相談のインテークにおいては,予めこれを使用する  

F インテーク・カンファレンス,ゼネリック・カンファレンスなどにより相互事項相互の調整を図り効果を高める

2 地域内商店員その他事業所クラブ組織

毎週1回の割で,6時~10時の夜間で適当な時間に集合し,レクリエーションをかねた教養のための催する

  • A 組織クラブなどはメンバーの総意においてきめる
  • B できるだけ自主的なるものとする
  • C 行事は相談の上きまるが,楽しみと疲労の回復と教養をかねたものとする
  • D 指導は東洋大学教職員団にて行うこと

3 日曜学校・子供クラブの結成

よき子供の環境をつくり,遊びやグループ活動の中からさりげなくよき生活習慣をつけるようにする

  • A 総括的な指導は東洋大学教職員団があたる
  • B 直接子供の指導は東洋大学教育研究会などにあたらせる

4 とげぬき生活館婦人会を結成する

近代的教養を身につけ,明るい組織社会の建設に奉仕する目的を持つ

  • A 自主的な形とする
  • B 主として婦人のレクリエーションと教養を高めるために概ね次のようなプランをもつ講習講座地域改善,新生活運動,子供のしつけ,エチケット,科学知識,読書指導,綴方教室,家計,法律,初歩の経理,社会福祉などレクリエーション合唱,民謡教室,演劇映画観賞,社会見学など