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ドナルド・キーン名誉博士講演会「国際化時代における日本古典文学の可能性」を開催

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2012年5月26日(土)13時より、白山キャンパス井上円了ホールにて、本学創立125周年記念事業の一環として、「国際化時代における日本古典文学の可能性」を開催した。
本イベントは、国際化時代における古典文学の意義について、ドナルド・キーン本学名誉博士(学術顧問)をはじめ国際的に活躍する識者を招聘し、開催されたもの。約700名の来場者により会場は満席となった。

開会に先立ち、竹村牧男学長が挨拶を行った。
挨拶の中で竹村学長は「国際社会の中では他国の文化を学び理解することと並び、自国の文化や歴史を改めて見つめ直し理解するが極めて重要。そうすることで、他国の文化の特徴やそこにある背景をより深く理解することができます。いま一度、多くの人に日本の古典文学について考えて欲しいと思います」と、国際化が進む社会の中で自国の文化に目を向けることの重要性を語った。
さらに、2012年3月にドナルド・キーン博士が日本国籍を取得したことに関し「キーン博士の日本への深い愛情に多くの人が感動しました。私たちはこの愛情に真摯に応えていきたい」と、キーン博士の日本への深い想いと、日本の人々に与えた勇気と感動について感謝の意を表した。

第一部 特別講演

第一部の特別講演の最初は、ドナルド・キーン博士による「日本の古典文学の魅力」と題した基調講演が行われた。

東洋の文学に触れる機会の少なかった米国教育において、ある時、日本の源氏物語に触れ感銘を受け日本古典文学の虜になったというキーン博士。
「少年時代、私は日本についての知識を何一つ持っていませんでした。18歳の頃の古書店での源氏物語の英訳との出会いこそ、私の人生の大きな契機。当時の私は源氏物語の作品名も知りませんでしたが、挿絵を見てこれは日本の本だと理解しました。挿絵に描かれていた美しい宮中の様子は、当時の私にとって大きな衝撃でした」と、源氏物語との出会い、そして日本へ興味を持ったきっかけについて述べた。 

「源氏物語を執筆した紫式部の最大の成功は、読者が共感できる登場人物を作中にたくさん描いたことだと思います。人間だからこそ、欠点もあれば嫉妬心も持っている。そして、鮮やかに描かれる愛情、希望、信仰心は万国共通で時代さえも超えています。今日まで世界中の多くの人がこの物語を今日まで愛し続ける理由は、ここにあるのではないかと私は考えます」と、源氏物語が多くの人の心を引きつける理由を考察。
しばしば古典の中の古典と賞賛される源氏物語では、あらゆる場面において日本人の美意識の魅力を感じるという。例えば作中においてラブレターとして交わされる美しい短歌。それは直接的に愛を表現する西洋とは大きく異なる。短歌を綴る紙の色、墨の濃淡、字、紙の折り方、手紙に添える季節の花など細部に想いを込めて相手へ愛を伝える繊細さ。そこに日本独特の普遍的な美を感じるという。

また、日本古典文学の持つ魅力について「日本語の言葉の中にある“曖昧さ”の中にこそ、多くの人が魅せられる理由があるのではないかと思います。そして、日本人は古来より“クライマックスの魅力”を知っています。三日月よりも満月に、蕾よりも満開の桜に心打たれ、その感動を文字で表現してきました。四季の中に、日本の文化や文学を語る上で外すことのできない重要な鍵が隠れているはずです」と語った。

キーン博士によると、日本古典文学にはそれぞれの作品にそれぞれの魅力があり、その魅力は時代に左右されることのない普遍的なものばかりであるという。自然や愛情、友情、日々の生活やユーモアなど人々の心に響くものはいつの時代も共通だと結んだ。

次に、コロンビア大学教授のハルオ・シラネ氏より「世界へ開く和歌―言語・ジャンル・共同体―」と題し講演が行われた。日本古典文学がどのように国際化するのか、ということは世界中から大きな関心が寄せられている。古典に並び、村上春樹に代表される近代文学も含め、“日本の文学”が世界中から注目を集めているためだ。
「日本古典文学に興味を持つ人が世界中に存在する一方、その研究の専門性が極めて高い場合、海外で紹介される機会が少ないのも事実。世界から日本古典文学の興味を集め、さらなる発展を目指すことは日本文学の研究者の重要な役割です」と国際化時代における日本古典文学での研究者の使命について言及した。

特別講演の最後は、阪急文化財団逸翁美術館館長・大阪大学名誉教授の伊井春樹氏が登壇。「日本古典文学国際化への戦略」と題して、講演を行った。
井伊教授によれば、現在の日本では日本文学の活性化は個人の努力に依るところが大きく、機関という組織レベルへの研究支援の体制は決して充実しているとは言い難い。
しかし、『源氏物語』をはじめとする古典文学から村上春樹作品などの近代文学に至るまで、日本文学が世界文学となっていることは世界の文学事情に目を向けても明確。「国をあげての共同研究・共同開発を行う時代が来ます。国や大学の枠を超えた研究が行われる時代のために、研究者は純粋な研究はもちろんですが社会と研究との接点の持ち方を考えることが重要。そして後継者を支え育てることで、研究を後世へ伝える義務があります」と述べ、研究者の育成の重要性や現在の課題について言及した。

第二部 国際シンポジウム


第二部の国際シンポジウム -日本の古典をどう読むか-では、国文学研究資料館館長 今西祐一郎氏がコーディネーターを務め、国際的視点から見た日本の古典文学の特長や研究を取り巻く環境、今後の展望、課題について意見交換を行った。

 <パネラー>
檀国大学校日本研究所研究教授 キム・ジョンヒ氏
ブリティッシュ・コロンビア大学アジア学部助教授 クリスティーナ・ラフィン氏
ケンブリッジ大学アジア・中東研究学部研究員 レベッカ・クレメンツ氏
東洋大学文学部日本文学文化学科准教授 今井 上