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【学生研究紹介】 『振動測定に基づく歴史的建造物の構造性能評価』理工学研究科建築・都市デザイン専攻高岩裕也さん 

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学生研究紹介~私たちのプライド~

Pride 4.  『振動測定に基づく歴史的建造物の構造性能評価』
理工学研究科建築・都市デザイン専攻
松野研究室所属博士後期課程1年 高岩裕也さん

都内に現存する文化財建造物の耐震診断
都内に現存する文化財建造物の耐震診断

私が主として研究対象とするのは、築年数100年以上となる歴史的建築物であり、それらの構造性能に関する研究を行っています。この研究の特色は、実在する歴史的建築物の躯体調査、振動調査、劣化調査を実測により行い、耐震診断・耐震補強検討を実施する研究であり、それらは設計・実務領域にわたります。言わば、歴史的建築物のお医者さんのようなことをしています。昭和25年5月30日に、法律第214号「文化財保護法」、翌年の昭和26年12月1日には、法律第285号「博物館法」が策定され、我が国においても歴史的建造物の保存思想が萌芽しました。これらの法律は、西洋の思想をベースに構成された世界的保存概念であり、可逆性・作家性を重要視したものです。その文化の保存思想は、社会的背景の下、刻々と変化を経てきました。従来は、「静的保存」といって中に人を入れたりせずに凍結的に保存していましたが、保存の概念が活用しながら保存していく「動的保存」へ変わってきました。内部を公開、活用していくことは、人が内部に入るということになりますので、それに伴う安全性の担保、ある程度の耐震化が必要になってきます。その耐震化・補強の「程度」に問題があるのではないかと私は考えています。耐震化・補強の「程度」を決定する方法に耐震診断、耐震補強設計があります。しかしながら、過去に実験された試験体とは仕様が異なるため、評価できない要素が多く、不確定要素が多いことから安全率をかけて設計して、意匠とか歴史的な価値を損なう補強になってしまう可能性があります。
そこで、建築物が今もっている構造性能を適切に評価する必要があります。これらをテーマとして、まず学部の時には歴史的建築物を構成する要素に着目しました。現在、法的規制により歴史的木造建築物の基礎と柱は緊結することが義務付けられており、不動であります。昔は礎石の上に乗っているだけで、大きな地震が来ると建築物が動いたりしていました。その力学的メカニズムについて試験体を用いて実験や解析で解明していき、礎石の上を柱が滑って地震のエネルギーが基礎で吸収されることにより、上部の建築物はそれほど地震の時に変形しないのではないか、つまり、補強を減らすことに繋がるのではないか、という仮説を基に研究をし、学会発表もさせていただきました。
   

初めての学会発表
初めての学会発表01初めての学会発表02

しかし、試験体はあくまで自分たちが疑似的に作り出した自然であって、それが実際の建築物に本当に適用できるのか、いざ適応しようとした際に、やはり仕様は似ているけど少し違うから余裕をもって安全率をということになってしまう。同時に、実際の建築物の剛性や質量といったパラメータに、要素の性能は大きく依存することがわかってきて、頭を悩ませていました。そこで修士からは、実際の建築物から測定できるデータはないかと考え、実在する伝統建築物に対して加速度を計測して分析することで構造性能を評価する研究をしています。
常時微動といって、建築物は常に地盤の揺れや風などで揺れていて加速度運動をしています。建築物にセンサーを取り付けて加速度を計測し、その加速度をフーリエ変換等の数値解析を行い、どのような周期成分を有しているか分析します。そこには建築物の剛性や質量といったパラメータが含まれていますので、常時微動から建築物の構造性能を評価することができると考え、その方法を現在構築しているところです。それが出来ると、実際の建築物から得たデータで、その建築物の構造性能を評価することができます。即ちそれは建築物のその時に必要な補強程度を算出することに繋がり、過剰な補強をせずに済むようになると考えています。

   

川越地区の伝統建築における振動測定
川越地区の伝統建築における振動測定01川越地区の伝統建築における振動測定02

祖父の影響、高校の恩師との出会い、そして大学へ

僕の祖父は大工でした。祖父の建てた家は、大工ならではのこだわりを持って造られており、子どもながらに惚れ惚れしていました。祖父は若くして亡くなってしまっていて会ったことがないのですが、幼いころに祖母の家に行った時に、祖父が建てた家が祖母を守っている、建築というものはすばらしい、自分も大工になって母に家を建てたい、祖父と同じことをしたい、と思いました。
そして、高校から建築の勉強をして、高校を卒業したら大工になると決めていました。しかし、高校の恩師から歴史的建築物の耐震補強の問題や、将来的に木造建築の担い手が不足するといった話を聞き、そのような建築物を残していけるようなことができないかと考えるようになりました。そこで、進学して今以上に勉強する必要があると考えました。東洋大学の建築学科を選んだのも、木にフォーカスした建築の研究をしている数少ない大学の一つだったからです。1年生の時から授業で積極的に発言をしたり、試験でも回答用紙に問題の続きを展開して書いてみたりしました。そうこうしていると、松野先生に、「研究室ではもっとアカデミックなことをやっているよ」と研究室にお招き頂き、先生から難しそうな分厚い本を紹介して頂いたり、過去数年の論文を読んでまとめなさいと言って頂いたり。その頃から学部2年にも関わらず、先生のご厚意で研究室の調査にも同行させて頂いています。

大学に入って学んだ「哲学を持つ」ということ

学部2年生の時に、松野先生に、「建築を志すのであれば哲学を持て」と言われ、自分の研究はどういう位置づけで、それは自分の哲学に反してないかというのを考えるようになりました。
今の研究哲学は、「どれだけ空虚でいられるか」ということ。研究をしていくと器の中がいっぱいになってきます。器の中がいっぱいにならないようにするためには、器を大きくしなければいけないのですが、人間としての大きさの成長には限界があります。そのためには、何個も器を持っておくべきなのではないかと、考えています。経験を構築するために設計事務所に行って設計に携わり、研究室では研究をする。設計と研究。研究をやっているときには設計に対して空虚で、だんだん設計がやりたくなってきて、設計をやっているときには研究がやりたいと、常に空虚でいることでモチベーションを保っています。
もう一つの哲学は、現場主義。実物を見る、フィールドワークを大事にすることです。研究室での活動は、データ解析などがメインになりますが、現場での調査にも積極的に参加しています。建築物はひとつひとつ違い、全く同じように建てられている建築物は存在しません。ベースとなる構法に対して、その敷地形状や気候風土に合わせて建築物の形態は変わりますし、作り手である大工さんのその日の調子によってもできあがるものは変わります。そういうことを知らなければいけないと思うからです。研究室で対象としている建築物はもちろん、設計事務所で調査に行く時にも参加させて頂いたり、他のところでも調査があると聞けば手伝いに行ったり、なるべく実際の建築物に触れ合う機会を増やしています。そうやって調査を掘り下げていくと、いろいろな疑問が生まれ、それが仮説になって繋がっていきます。研究室にこもって研究していればそれなりに解析も進んでいくとは思いますが、実際の現象は研究室の外で起こっていることなので、それを把握しなければ研究はできない、というのが私の考えです。

いずれ現代の建築物も歴史的建築物になっていく

将来の夢は、文化財の補強をなるべく減らすために、自分が確立した評価方法が一般の設計者に浸透して、過度な補強が減っていくことです。そのための指針作りができたら、社会に還元できるのかなと思っています。夢を実現するために、設計事務所も継続して行って、実務と研究の距離を離さずに研究活動していきたいと考えています。
また、現代において新しく設計・耐震改修する建築物は、今は新しいものですが、10年後、20年後…100年後、その建築は過去のものとなります。つまりそれは、自分が携わる設計は全て、将来的に歴史的建築物になる可能性があるということです。その自覚を持ち、「平成時代の高岩という人はだめだな~」と未来の人々に歴史を振り返られないように(笑)、日々精進し、建築学を研鑽し続けていきたいです。

<研究概要>

「川越蔵造り建物」の経年変化に伴う構造性能の変動

本研究は、我が国の伝統木造建築物の一つである「蔵造り建物」を対象とし、経年変化に伴う構造性能の変化について数値的に把握した。常時微動測定を2度(2002年7月および2014年12月)実施して、「蔵造り建物」の振動特性値を把握した。12年の経年変化により、「蔵造り建物」のせん断剛性は70%に減少していることを確認した。そして、時刻歴応答解析を行い、東日本大震災における「蔵造り建物」の応答性状を把握した。最大で層間変形角1/600rad以内に留まる結果となったことから、地震被害に伴う耐力劣化により長周期化したのではなく、経年変化による長周期化の可能性が高いことを示した。

An Aging-Related Structural Performance Variation Of "Kawagoe Kura-Zukuri Building"

The subject of this study is to confirmed an aging-related structural performance variation of "Kawagoe kura-zukuri building" that consiste of a very heavy mud wall and Japanese traditional timber frame. By two times measuring the microtremors of them (First, July 2002, Second, December 2014), the vibration characteristics values of the "Kawagoe kurazukuri museum" were obtained. The aging of the 12 years, it showed the shear stiffness of "Kawagoe kurazukuri museum" diminished into 70 %. Then, in order to grasp the earthquake response of one, the authors carried out the dynamic analysis with the acceleration waves of the Great East Japan Earthquake (March, 2011). The maximum interlayer deformation angle was 1/600 rad.

※Yuya Takaiwa、Natsumi Takayanagi、Syumpei Tomidokoro、Koichi Matsuno:An Aging-Related Structural Performance Variation Of "Kawagoe Kura-Zukuri Building"、World Conference on Timber Engineering、August 22-25、2016、Vienna、Austria、2015.11(Accept)、2016.8(Presentation)

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