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【学生研究紹介】 『ラットにおける社会的敗北ストレス時の循環反応および脳内メカニズムに関する研究』 理工学研究科 堀内崇利さん

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学生研究紹介~私たちのプライド~

Pride 3.  『ラットにおける社会的敗北ストレス時の循環反応および脳内メカニズムに関する研究』
理工学研究科 生体医工学専攻 ニューロサイエンス研究室(堀内城司教授)
博士前期課程2年 堀内崇利さん

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研究室で注目しているストレスと高血圧の関係の中で、対人関係の悪化や問題によって引き起こされるような心理的なストレスに着目しています。そのストレスが動物に加わった時に我々人間を含めた動物の血圧などの循環系にどういった反応が出るのか、また脳のどこが、またこの反応に脳のどの部位が関与しているのかということを明らかにするという研究をしています。

両生類や哺乳類の動物では、環境の変化や天敵などに対して防衛反応という「生き残り」のための反応を示すことが知られています。これは、闘ったり、逃げたりする行動上の反応とともに血圧、心拍数が増加する反応です。ストレス時に見られるこのような反応はこの防衛反応が元になっていると考えられます。つまり、ストレスの反応というのは、動物が生き残るために身につけた反応なのですが、我々人間では、この防衛反応が時として高血圧や鬱病の引き金となり、我々の健康を脅かす存在となっています。
 
これまでの研究から、防衛反応には、中脳と視床下部という脳の部位が関与していることが分かっており、特に視床下部は、ストレスの反応の中枢の1つであることが最近の研究で分かってきました。しかし、中脳の役割はまだ分かっておらず、加えてストレスの反応の際の視床下部と中脳の関係も明らかになっていません。そこで私たちは、対人関係の悪化のような心理的ストレス時の循環反応に視床下部と中脳がどのように関与し、どのような相互作用があるのかを明らかにすることで、高血圧やうつ病の治療や改善に役立つのではないかと考えています。

具体的には、ラットの腹部に血圧、心拍数測定用の送信機を埋め込み、心理的ストレスとして“社会的敗北ストレス”をラットに加え、その変化をモニタリングします。社会的敗北ストレスとは、社会的な強者が社会的な弱者に与える敗北感、自分は勝てない、相手にはかなわないなどという敗北感、例えば会社でいうと成績の良い同期がいて、こいつにはかなわないという敗北感や上司から怒られた時の恐怖に近いようなストレスのことです。それをラットで再現します。再現の方法としては、からだが大きく攻撃性が高いといわれているラットとからだが小さく神経質といわれているラットの2種類を使います。2種類のラットを同じケージに入れるとからだの大きいほうが小さいラットに攻撃をします。小さいラットはかなわないと思って服従姿勢などをします。服従姿勢を確認後すぐに金網の仕切りで2匹を分けます。これにより身体的な接触は防がれますが、大きなラットのにおいや動きが分かるような状態になっています。この状態をストレス状態とします。その後、小さなラットの脳を取り出して40㎛の薄さで脳を薄切りにし、脳の切片を作成します。抗原抗体法を用いた染色法によって、その脳切片の興奮した神経細胞を染色します。そしてどこの脳領域の神経が興奮しているかとストレス時の血圧心拍数といった循環反応を関連付けて調べています。

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わからないことがわかる楽しさ。頑張っただけ成果が出るのが実験

誰もやったことがないことができるのがこの研究の楽しさです。わからなかったことがわかるようになることが面白いですね。血圧の上昇や心拍数の変化をリアルタイムで実験をしているので、ストレスをかけた時に血圧上昇したりなど実際に見られるところも面白さを感じます。

実験でデータが出ないときはそこからどうするかを考え、実験手技や方法を変えたりします。また、実験データの処理のために泊まりこみで行った時もありました。そのような時は大変ですが、そのデータを用いて学会発表ができれば、いろいろな方から質問やアドバイスを頂けます。頑張った分成果が出ると思っています。

意志を持って、主体的に考える。

高校生の時に、人の体が自分の意識によって動かせるのは脳から腕や足の筋肉に指令が届き、筋肉を収縮させたり伸展させたりするためだということを学び、自分の体がどういうメカニズムで動いているのかということに興味を持ちました。そのため研究室は脳神経科学を扱うニューロサイエンス研究室を選びました。

研究室での実験は、主体的に進め、わからないところがあればまず自分で調べます。結果に対して自分はこう思う、だからこのように変えていきたい、と教授に相談します。自分の研究である、という意志をもって実験しています。授業の実験ではわからないところはTaなどが教えてくれ受け身の部分が多いですが、研究室では主体的にやっていくところが大きな違いだと思います。

人に伝えること。プレゼンテーション力がついた大学院。

学部4年生の時にはカエルを用いた実験をしていました。両生類では視床下部が発達しておらず、中脳だけがストレス時の循環反応を引き起こしていることを明らかにしました。これに対して哺乳類では視床下部がよく発達しており、ストレス反応の中枢として働いています。両生類などがもつ古典的な脳領域である中脳と視床下部のつながりや機能はどうなっているのかと疑問に思い、哺乳類でも実験をしてみたい、もっと勉強してみたいと思い大学院に進学しました。

実験結果が形になってきたことはもちろんですが、大学院に入ってからは研究内容を説明しなければいけない場面が多く、プレゼンテーション力が身についたことも大学院に入って良かったと思うことのひとつです。

指導教員の堀内教授からは、相手に伝えること、プレゼンテーションの力が大事であるということを学びました。研究室でも1週間に1回、全員が実験や授業などで先週行ってきたこと来週行うことについて発表するという機会があります。相手にどうやったら理解してもらえるかを考えるためですが、このプレゼンテーションを継続的に主体的にやってきたことが、プレゼンテーションの向上につながったのだと思います。また、研究に関連した発表の際には、お互いに質問をすることができ、知識を向上させながら実験を進めていくことができています。

今年9月の国際学会では、口頭発表をさせていただきました。国際学会で英語での発表を初めて行うという経験をしました。とても大きなホールで今まで話したことがないくらいの大勢の人の前での発表は緊張しましたが、とても良い経験になったと思います。このことで、人の前で話すことにあまり緊張しなくなりました。また、研究室内の発表の際も「わかりやすい」と言われるようになりました。学会発表のために意識的に気をつけることで、だんだんと無意識に伝え方が身についたのかと思います。就職活動での面接でも話し方を褒めていただくこともありました。

今後は

視床下部と中脳の活動、血圧と心拍数といった循環反応についてのデータは揃ってきましたので、今度は視床下部と中脳の神経のつながりがどのようになっているのか、どのような相互作用がありそうかということを調べていき、論文にして投稿できたらと考えています。
卒業後は、理化学機器という研究に使う機器を作っている企業に就職します。社内に医療部門が新しくできたので、将来的には医療部門で自分の知識を生かしていきたいと思っています。

 
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<実験概要>


 Stress-induced cardiovascular response is based on a defensive autonomic response in animals. It is known that 2 defense areas, the hypothalamus and the midbrain, participate in the cardiovascular response in mammals, but roles of these 2 defense areas on the cardiovascular response to psychological stress, such as a social-defeat stress, are still not clear. In the present study, we investigated distributions of expression of c-Fos (a marker of neuronal activation) in the hypothalamus and the midbrain during the social-defeat stress in conscious Wistar rats, to reveal the roles of the defense areas on cardiovascular response evoked by the social defeat stress. The results suggested that the dorsomedial hypothalamic area (Dmh) as known one of the centers of the defense reaction plays a critical role on the cardiovascular response during the social defeat stress.


ストレス時に誘発される心血管反応は、動物の防衛反応に基づいている。哺乳類では、視床下部と中脳が、防衛反応の中枢(ディフェンスエリア)として関与していることが知られているが、社会的敗北ストレスのような心理的なストレス時の心血管反応に対するこれら2つのディフェンスエリアの役割は明らかになっていない。本研究において、我々は社会的敗北ストレスによって引き起こされる心血管反応に対するこれら二つのディフェンスエリアの役割を明らかにすることを目的として、意識下のWistarラットを用い社会的敗北ストレス時の視床下部と中脳の神経細胞に対するc-Fos(神経興奮マーカー)発現状況の検証を行った。結果から社会的敗北ストレス時の心血管反応には、防衛反応中枢の1つとして知られる視床下部背内側野(Dmh)が重要な役割を担っていることが示唆された。

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