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【学生研究紹介】『ナノ薬剤評価用マイクロ流体デバイスの開発』-理工学部応用化学科4年 小田中美希さん

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学生研究紹介~私たちのプライド~

Pride 7.『ナノ薬剤評価用マイクロ流体デバイスの開発』
理工学部 応用化学科 分析化学研究室(佐々木直樹准教授)
4年 小田中 美希さん

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(写真)佐々木直樹准教授(左)と小田中美希さん(右)

医薬品を開発する研究においては、動物実験を実施します。動物実験は実験動物を犠牲にするため、倫理的な問題が常にあります。実験動物ではなく培養細胞を用いる実験もありますが、培養皿は動物の体内と環境が大きく異なるので、評価系として適切なのだろうか、という疑問があります。そこで研究室では、微細加工技術で作製したマイクロ流体デバイスを用いて生体内の環境を模擬し、医薬品評価へ応用する研究を進めています。マイクロメートルスケールの流路に溶液を流すことで、血流に相当する溶液流れの中で実験ができます。また、実験に使う試料や試薬が少なくて済むため、費用を抑えることもできます。いま、世界中で盛んに研究が進められている分野です。

私たちの研究室では、薬物を積み込んだナノ粒子である「ナノ薬剤」に注目しています。がん細胞は、増殖に必要な栄養素や酸素を得るために、元々ある血管から新たに血管を伸ばそうとします。このような血管は正常な血管と異なり、血管の壁に穴が開いています。ナノ薬剤は正常な血管からは漏れ出ませんが、がんの周りの血管からは血管壁の穴を透過して漏れ出ます。このことを利用して、がん細胞にのみ薬を作用させることができます。このようなナノ薬剤の評価に適したデバイスを開発し、さらにこのデバイスを用いて、有効性の高いナノ薬剤の条件を実験的に明らかにしていくのが私たちの研究です。

 
図1

ナノ薬剤の粒径や、ナノ薬剤が透過する孔の径が、透過性に与える影響を評価するデバイスを開発しています。
従来のデバイス(左)では、流路が縦に重なっているため、顕微鏡で観察する際に、ナノ薬剤がどちらの流路に存在しているのかを区別しにくいという問題がありました。そこで私たちの研究室では、流路を横に並べた新たなデバイス(右)を開発しました。

この研究は、デバイスを安定して作製できることが絶対条件となります。実験に慣れるまで、多くの時間がかかりました。デバイスの安定した作製がようやく出来るようになったので、現在はナノ薬剤を模擬したナノ粒子を流路に流す実験に取り組んでいます。ナノ粒子の動きがわかれば、ナノ薬剤の動きが分かります。どのような粒径だとどこまで届くのか、移動距離や時間などを数値として求めることで、ナノ薬剤の設計にダイレクトに関わることが出来るので、とてもやりがいを感じています。

毎日をきちんと過ごすこと、自分で考えること。自律ができた研究室での1年。

研究室に入ってから、自分で考える力が身につきました。実験で予想外の結果が出た時には、目の前の結果を落ち着いて俯瞰してみます。考えて分からないときには何回か同じことを繰り返し行い、なぜそれが起きるのかを考えます。自分に出来ることを考えること。そしてそれでもわからない時に、周りの人の知恵を借りる、ということが出来るようになりました。ずいぶん自分で考えるようになったと思います。

また、研究室には、その週の進捗や次の週の計画を実験ノートに記すという決まりがあります。目標を決めて、それがどこまで進んだかを報告します。そうしていると実験結果を整理しやすく、実験の計画も立てやすくなります。計画どおりにやっていれば研究も進むので、発表の直前にばたばたすることもありません。一見大変そうに見えるのですが、日々をきちんと過ごすことは長い眼で見ると実は楽なことなのだと気づきました。このことが身についたことで、研究以外の他のことでも計画を立てやすくなりました。

研究室の様子
(写真)研究室の様子

自分が興味をもって見つけた研究が将来の進路に。

大学受験の時にはこれがやりたいというものがなかったので、いろいろなものに関わることが出来る応用化学科を選びました。ただずっと、何か人の役に立つ研究、社会に貢献できることがしたいと思っていました。そして、就職活動が近づき、自分は何をやりたいのかと改めて考えた時、薬・医療系が良いと思うようになりました。研究室選びの際には、化学の観点から薬の評価をするというのが面白いと思い、この研究室を選びました。応用化学科にはそういった側面もあるのか、という驚きと自分のやりたいことがあったという嬉しさがありました。

研究室での研究が、就職に結びつきました。就職先はコンタクトレンズの企業で、開発職で採用していただきました。DDS(ドラッグデリバリーシステム)をコンタクトレンズで行おうとしている企業です。がんをターゲットにしたDDSを目指す自分の研究とは多少異なりますが、必ず社会の役に立てると思っています。自分のやりたいことで企業にも利益が出て人が助かる、それが出来ることが楽しみで仕方ありません。

研究室旅行
(写真)研究室旅行の様子(金沢・兼六園/2016年11月)

<研究概要>

『ナノ薬剤評価用マイクロ流体デバイスの開発』
ナノサイズの粒子に薬物を封じ込めた「ナノ薬剤」を血管に投与すると、薬物を標的の腫瘍組織へ選択的に送達できる。このとき、ナノ薬剤は血管の壁やその周りの間質を透過して腫瘍組織へ到達する。生体内においては、血管壁の孔のサイズ・形状や間質の組成が不均一であるため、これらの物理的パラメータがナノ薬剤の透過に与える影響を正確に評価できない。そこで本研究では、ナノ薬剤の透過性を評価するためのマイクロ流体デバイスを開発している。均一な孔の開いた多孔膜をマイクロ流路に組み込んで血管壁に見立て、孔径がナノ粒子の透過に与える影響を検討している。本手法をナノ薬剤の初期評価法として利用することで、動物実験の低減やナノ薬剤開発の加速が期待できる。

Microfluidic devices for nanoDDS
Nanoparticle-based drug delivery system (nanoDDS) have been widely utilized to deliver anticancer drugs from blood vessels to target tissues. A crucial issue concerning nanoDDS is to estimate transport of nanoparticles to target tissues. Although nanoparticles can permeate vascular pores and interstitium surrounding the blood vessels, since the size and shape of the vascular pores and the composition of the interstitium are essentially non-uniform, conventional animal testing and recent cell-based microfluidic devices are unable to precisely evaluate the effects of physical parameters (e.g. pore size and nanoparticle size) on permeation. We are developing a cell-free microfluidic device to estimate permeation of nanoparticles through vascular walls. Porous membranes possessing uniform pores are integrated into a microfluidic device and utilized as artificial vascular walls. The effects of pore size on nanoparticle permeation can be examined. Our method can be utilized as an initial nanoparticle screening technique to minimize animal testing and accelerate the development of suitable nanoparticles.

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