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【学生研究紹介】『表面含浸材を用いたコンクリート構造物の長期耐久性及び施工性に関する検討』都市環境デザイン専攻 石川健児さん

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学生研究紹介~私たちのプライド~

Pride 6.『表面含浸材を用いたコンクリート構造物の長期耐久性及び施工性に関する検討』
理工学研究科 都市環境デザイン専攻 ストックマネジメント研究室(福手勤教授)
博士前期課程 2年 石川健児さん

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写真:石川健児さん

鉄筋コンクリート構造物の劣化を遅らせて寿命を延ばすため、コンクリート内部に外部からの水分の侵入を防止するコンクリート用表面含浸材の研究をしています。
鉄筋コンクリートの劣化の種類は、コンクリートそのものの劣化と中にある鉄筋の劣化(錆びる)があります。鉄筋の劣化の原因はいろいろありますが、代表的なものに塩害と中性化があります。港湾構造物のような海水が直接あたるようなところでは、塩分の影響で鉄筋を覆っている不導体被膜という酸化被膜が破れて腐食の第一原因ができ、そこから水や酸素と結びつくことで、腐食が進行していきます。これが塩害です。中性化はコンクリート中に二酸化炭素が侵入し、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムと反応することで、pHが12くらいあったものが中性に近づき不導体被膜破壊の原因となります。また、コンクリート自体の劣化ということでは、原因のひとつに凍害があります。水は氷ると体積が大きくなります。コンクリート中に雨などの水分が侵入し気温が氷点下に下がると、氷の膨張圧で脆くなり、何百回と繰り返されていくとボロボロに壊れてしまいます。
このようなコンクリート自体の劣化や内部の鉄筋の腐食を防止するには、コンクリート内に水を入れないようにすることが必要になります。私の研究は大きく分けて2つあり、ひとつは施工についての研究です。土木工事では、施工に時間がかかるのと人件費がかかります。それをなるべく安くするためにどうやって短く工程を収められるかということが重要な要素です。そのため、薬剤の塗る量、どうしたら早く塗り終わるか、ということを研究しています。もうひとつは、その薬剤を塗ったコンクリートが本当に塗ってから長くもつのかということを追跡、確認する実験です。塗ってから5年、6年、一番長くて8年経過したものについて、調査しています。

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写真:港湾技術研究所(横須賀)に置いてある試験体

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写真:含浸材を塗っている様子

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自分で動くことが出来るようになった大学院。

学部3年生冬の研究室配属の時、学部1年間だけの研究では物足りないのではないかと思い、大学院進学を決めました。進学して1年以上たった今、研究のことはもちろん、コンクリート全般、土木とはなんだろうということまで、いろいろなことが見えてきて進学して良かったと思い始めたところです。4年生の頃は、言われたことをやらなければならないと思いこみ、その枠から出ないようにやっていて、自分の研究室や実験棟で毎日過ごすという閉じた世界でした。大学院に入って、枠の中にとどまらなくてもいいのではないかと気づき、それからは、建築学科の実験棟を見学して話を聞いたり、薬を扱うので化学的なことを知らないといけないと思い、応用化学学科の先生に聞きにいったり、バイオ・ナノエレクトロニクス研究センターの電子顕微鏡をお借りして調べてみたりなど、いろいろと飛び出しています。自分で動くようになって、視野が広がり研究も深めることが出来ました。

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写真:TA活動(材料構造実験で、3年生に教えているところ)

毎年の学会発表がさらに研究を深めてくれる。

学部4年次に土木学会で発表しました。その時は、卒論と学会の締め切りが重なって大変でしたが、大学院に進学するならば一回は学会に出ておきなさい、というのが指導教授の教えでした。この学会で、他人に分かるように話すという力がついたと思います。質疑応答があるため、他人から見て分からないところはどこだろうということを考える習慣も身につきました。その後、年に1回は土木学会で発表していますが、毎年学会で発表するということは、節目にもなりますし、会場でたくさんの学びがあります。自分が発表すること以上に、他の方の研究を聞く事で、新しいヒントを得ることができ、研究に役立てることが出来ています。普段から他人の論文を読むようにしていますが、発表を聞く事でさらに理解が深まります。

進路を変えた笹子トンネル崩落事故。

この学科を選んだ理由はまちづくりや都市計画をやりたいという考えからでした。シャッター街といわれるような商店街をどうするか、行政の政策に関わるようなことについて勉強してみたいと思っていました。中学生の頃から、青春18きっぷなどを使って遠いところへ行くのが好きで、訪ねているうちに深刻な地方の過疎化を見聞きして、どうにかできないかと思っていたのです。しかし、2012年(大学2年生の時)の笹子トンネル崩落事故をきっかけに、コンクリートの研究をしたいと考えるようになりました。この事故は、不適切なメンテナンスや材料の劣化など、自分が専攻している土木工学が招いた出来事で、大変衝撃を受けました。このような事故を起こさないために自分の学びを生かせるのであればなんとかできないか、という責任感のようなものが芽生えました。コンクリートや様々な土木材料の耐久性、寿命を長持ちさせるにはどうしたらいいかと考え始めました。

ヒトが安心して暮らせるために。変わらない研究への想い。

ヒトの生活の周りにはコンクリートが溢れています。その耐久性を伸ばすことでヒトの暮らしの安定につながる思っています。コンクリートは時間の経過と共に劣化していきますが、そのことがいきなり大事故に繋がることを避けなければなりません。コンクリートに代わる新しい材質の研究もありますが、今あるものの寿命を少しずつ伸ばせればと思っています。コンクリートを守る、というこの研究は、ヒトの生活が良くなるのが一番の目的です。このことは、ヒトの生活のため、という学部2年生の時に感じた想いに繋がっています。

今は横須賀の研究所の海沿いに置いてあったコンクリートを研究室に持ち帰り、コンクリート中にどれだけ海水がどれだけ浸透したかを測定しています。10センチの試験体を2センチずつ切り分け、砕いて、0.15ミリのふるいに通して、その粉を硝酸水溶液に混ぜて沸騰させ測定機器にかけるということの繰り返しです。地道な作業の多い実験ですが、条件などを自分なりに考えて、結果が自分の思った通りにでた時にはうれしく、100年後の人たちの安全を守っていると考えるとやりがいを感じます。見ることはありませんが、自分が関わったコンクリートの寿命が延びて、実際に使われて、50年、100年と丈夫であってくれたらいいな、と思って実験しています。その反面、100年後、自分がいない世界にも現代のものが残るということは、100年後まで生きる人たちを現在の考えや価値観で束縛していることになると思い怖くなる時もあります。倫理観と責任感をきちんと持つ、ということを心に強く持って研究を続けています。

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写真(左から)
・分極抵抗試験(試験体にセンサーを当てて鉄筋の腐食速度を測定)
・鉄筋コンクリートの試験体から鉄筋を取り出す
・鉄筋を切断する
・モルタルを練る

<研究概要>

コンクリート用表面含浸材の施工性および耐久性向上に関する実験的検討
Experimental study on improving workability and durability of the sureface penetrants for concrete

表面含浸工法は鉄筋コンクリート構造物の耐久性を向上させる方法の一つであり,コンクリート表面に薬剤を塗布して表層部を改質させる方法である。この薬剤の成分は2種類あり、コンクリートの表層を緻密化させるケイ酸塩系と撥水性を持たせるシラン系含浸材がある。本研究ではこの2種類を併用する工法を研究した。本検討の目的は施工性能と耐久性能の把握である。
施工性として主に2つの実験を実施した。
(1)緻密なコンクリートに含浸材を塗った場合、薬剤がすべて浸透しないことがあった。薬剤が表面に残り、白く固まることがあった。含浸材の塗布量とコンクリートの品質を変化させ実験を行った。その結果、高品質なコンクリートではケイ酸塩系含浸材の塗布量を減量した場合でも、十分な防水性が発揮されることが分かった。
(2)港湾の干満帯では潮が低い間しか作業できない。また、塗布した後も薬剤の十分な乾燥が困難である。ヒーターを用いてすべての乾燥時間を短縮した場合でも、塩分浸透深さは無塗布の60%以下に抑えられることがわかった。
耐久性能の把握は防水性と防食性の経年変化を実験した。含浸材を塗布したモルタルを実験棟の屋上に、鉄筋コンクリートを神奈川県横須賀市の海側に数年暴露させている。毎年防水性および防食性について測定を行っている。防水性は8年たった今でも維持されていることが確認されている。防食性について、塗布して4年たった供試体は無塗布に比べて鉄筋の腐食速度が低く抑えられていることを確認している。

Sureface penetrant method which has the effect of modifying surface layer of concrete is one of the useful methods to improve the durability of reinforced concrete structures. Two kinds of ingredient are available on a commercial basis : one is sodium silicate type to densify the surface and the other is silane type which has the effect to give water-repellent. In this study, the method to use two material together was examined. The purpose of this study is to understanding the working performance and durability performance of the surface penetrants.
In terms of workability, two series of experiment ware carried out.
(1) When the penetrant material was applied on dense concrete, some portion of the material did not penetrate. Material left on the surface has hardened and whitend. Experiment was conducted by changing the both of amount of surface penetrant and quality of concrete. As a result, it is confirmed that the enough waterproof performance is obtained even when the amount of sodium silicate type surface penetrant is reduced for high quality concrete.
(2) In tidal zone, the work can be carried out only the duration of low tide. Also, after applying, it's difficult to dry the material sufficiently. The depth of chlorine penetration is lower than 60% of non-treated specimen, even when  total working time is decreased by using heater.
In terms of durability performance, aging effects of the waterproof and ant-corrosion performance ware examined. Mortar specimen coated with surface penetrant have been exposed for seven years on the roof of the laboratory building in Kawagoe, and the reinforced concrete specimens have been exposed for four years in splash zone in Yokosuka, Kanagawa Prefecture. Waterproof and ant-corrosion performance have been measured every year. The waterproof performance has been confirmed up to eight years after applying. Up to four years after applying ,it is confirmed that corrosion rate of steel in the applied specimens are lower than non-treated specimens.

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写真:実験の合間、仲良くなった大学猫(左:まさるくん、右:人に懐かない名もなき野良猫)
「野良猫とあちこちを自由気ままに歩き回り、人に構ってもらったりする自分の性格はとても良く似ています。」

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