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公民連携白書2014~2015

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最新刊表紙イメージ出版社のページ
http://book.jiji.com/books/publish/p/v/787


はじめに

  本書は、2006年度に、東洋大学にPPP(Public/Private Partnership)専門の社会人大学院公民連携専攻を開設して以来、全国の関係者に多くの事例や論考を提供することで、政府と市場のあり方の国民的議論の一助とすることを目的として毎年発行しており、今回が9回目の発行となる。

 毎年の刊行は事務局としては決して簡単なことではないが、9回目を迎えることができたのは、PPPの推進のためにご後援いただいている機関、ならびに、本書を楽しみにしてくださっているすべての読者、また、企画段階から尽力いただいている時事通信出版局の永田一周氏と植松美穂氏の支援のおかげであることは言うまでもない。この場を借りてあらためてお礼申し上げたい。

 今期は2013年9月~2014年8月を対象としている。

 前回の省インフラ特集で取り上げたとおり、本センターはインフラ老朽化問題に関して先駆的に問題提起と政策提言を行ってきた。今期は、国が政策を本格的に動かし始めた記念すべき1年となった。

 2013年11月29日、インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議で「インフラ長寿命化基本計画」が策定された。この計画は、「中長期的な維持管理・更新等に係るトータルコストの縮減や予算の平準化を図るため、・・・、国、地方公共団体、その他民間企業等が管理するあらゆるインフラを対象に策定された」総合的なものである。従来の新規投資中心主義から今あるものを大切にするという発想の転換を果たした点、国・地方・民間が保有するすべてのインフラをカバーした点は、まさに画期的と言えよう。

 さらに、同計画の行動計画として、2014年4月22日付総務大臣通知により、「公共施設等総合管理計画」の策定が求められることになった。この計画では、人口見通し、老朽化や利用状況などの公共施設等の状況、公共施設等の維持管理・更新等に係る中長期的な経費や充当可能な財源の見込みなどを客観的に把握・分析した上で、今後の公共施設等の管理に関する基本方針を記載すべきことが示されている。

 総合管理計画は、公共施設等を対象にしているように見えて、実は、自治体にとっての収入、費用のすべての要素を検討しなければ策定できない総合的な計画である。経営概念の薄かった今までの地方行財政運営を変革し、本格的なシティ・マネジメントの時代の到来を示すものと言っても過言ではない。とりあえず計画を作りさえすればよいということではなく、この機会に、実際に、シティ・マネジメントの観点で運営していかなければならない。

 そうした意味では、もう一つの大きなトピックがある。米国デトロイト市の財政破たんである。同市は、2013年7月、財政破綻を発表し、ミシガン州の連邦地方裁判所に連邦倒産法第9章適用を申請した。負債総額は180億ドルと言われ、米国の自治体財政破たんの中で最大の例となった。デトロイト市は、依存していた自動車産業の70年代以降の縮小に対して講じられた都市再生の手法が十分に効果を発揮せず、豊かな税収を前提にして作られた支出構造の硬直化が引き金となって破たんした。今期中も債権者からの訴訟などが続いており、順調に再生が進むかどうかは予断を許さない。この例は、法制度の違いはあるが、衰退していた石炭産業に依存しすぎた夕張市の財政破たんと基本的な構造を一にしている。シティ・マネジメントに失敗すると自治体といえども破たんするという当然のことが改めて明らかになったのである。

 さて、本書は例年通り3部構成となっている。

 第Ⅰ部は、「PPPの動き」である。まず、序章として、PPP研究センター長の根本祐二が「公共施設等総合管理計画とシティ・マネジメント」を執筆した。第1章以降は、公共サービス型、公共資産活用型、規制・誘導型のPPPの3分類に沿って整理した後、PPPを取り巻く環境とPPPの各分野での動きを整理している。紹介している事例は、例年通り、時事通信社iJAMPからの情報を元に取り上げた。事例数は710に上り類書の中では圧倒的に多数の事例を紹介している。

 第Ⅱ部は、「財政健全化とPPP」をテーマにとりあげた。まず、米国在住で地方行財政の専門家である犬丸淳氏に「デトロイト市の破産申請と財政再建の行方」をご寄稿いただいた。次いで、「国、地方の財政健全化の可能性」により川崎一泰東洋大学教授が財政を巡るマクロ的な事情を俯瞰した後、「わが国における自治体破たん法制の動き」を根本祐二、北海道夕張市の再生の歩みと公共サービスの現状をPPP研究センターシニアスタッフの難波悠が執筆した。また、財政健全化の具体的な手法として導入された大阪市のBID及び同手法の活用も期待されている大阪市梅田北ヤード地区2期開発について、大阪市担当者より寄稿をいただいた。最後に、途上国でもPPPが財政負担の少ない経済開発を促している事例を、本センターのリサーチパートナーである加藤聡が執筆した。

 第Ⅲ部はキーワード解説である。インフラ長寿命化基本計画、公共施設等総合管理計画等の新語も掲載している。

 私たちの先輩は、戦後復興期から高度成長期、バブル期に至るまで継続的に公共事業を実施したが、それは人口と税収の増加という成長する身の丈に合った投資だった。その証拠に、1990年代のはじめバブル経済が破たんした後でも、日本の負債依存度は先進国平均とほぼ同じ水準だった。しかし、その後、税収が低迷する中で国債増発による景気対策が何度も実施され、負債依存度は急激に悪化した。私たちは、先輩から、豊かなインフラと健全な財政を受け継ぎながら、子どもたちには、老朽化したインフラと破たん寸前の財政を残そうとしているのである。PPPはこの矛盾を解決するための有用な手法である。是非多くの方々に本書をご一読いただき、参考としていただければ幸いである。

 2014年10月

「公民連携白書」執筆者の代表として
根本祐二(東洋大学)