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東北復興支援学術コンペ優秀校が来日しました

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English webpage - Tohoku Recovery-Academic competition

東洋大学が昨秋実施した「Tohoku Recovery International Academic Competition」の優秀校に選ばれた3大学が2月9~15日に来日し、被災地視察や自治体・政府関係者との意見交換、さらに提案の発表会を実施しました。

数十年ぶりと言われる大雪の中の来日となり、視察スケジュールの遅れが懸念されましたが、10日には現地自治体の方々のご協力により、岩手県遠野市、釜石市、陸前高田市でお話しを伺うことができました。陸前高田市の久保田副市長らと意見交換

遠野市では、発災直後からの沿岸被災自治体への後方支援活動の概要を本田敏秋市長、小向浩人沿岸被災地後方支援室長、防災危機管理課長から説明を受けました。参加者からは、市民が被災地支援活動に果たす役割や、発災時の時間帯や状況に応じた対応のあり方などについて質問が出されました。釜石市では、復興推進本部事務局の佐々木勝次長と防災危機管理課猪又博史防災係長からの説明に基づき、復興計画の具体的内容について意見交換しました。特に、復興土地区画整理事業や高台移転の考え方、進め方について集中的に質疑応答が行われました。陸前高田市では、壊滅的な被害に遭い、ほぼ更地となってしまった市街地を視察した後、久保田崇副市長と大和田正防災対策室長から被災前の市街地の様子と復興計画の進捗具合、復興にあたっての留意点などについて話を伺いました。

11日には、宮城県沿岸部を南下し、地形による被害状況の違いや、津波の防災、避難計画の考え方、復興のあり方などについて参加者同士で意見交換を行いました。

12日には、東北再生委員会の事務局を務めた河北新報社のほか、国土交通省東北地方整備局を訪問し、武藤徹企画課課長補佐から発災直後の道路啓開の様子や復興道路等のインフラの整備状況、復興まちづくりへの政府の支援、震災対応から得られた教訓などについて説明を受けました。参加者からは、復興庁と東北地整の役割分担や協力体制、今後のハード・ソフト面での防災対策や避難計画のあり方、発災時の情報提供の手段等について質問が出されました。

13日には、小泉進次郞復興大臣政務官を訪問。約40分にわたり、長期的な東北地方の経済活性化の重要性、東京オリンピックをはじめとした他の建設・開発需要と復興事業のバランスの取り方、他国の災害復興の経験や教訓を活かした復興の進め方などについて話し合いました。小泉政務官は「数年後、日本に戻ってきて復興の進捗や東北の人々の幸福な生活の様子を実感してほしい。頂いた提案を少しでも実行に移せるようにしたい」と各大学の参加者に語りかけました。


東洋大学は14日、白山キャンパス125記念ホールにて、「世界の専門家から見た東北復興支援学術コンペティション発表会」を開催しました。

冒頭、主催者を代表して福川伸次東洋大学理事長より「復興は日本人の自分たちの問題ですが、日本に住んでいると逆に気づかないこと、気づいていても形にできないこともある。世界の若者の斬新な発想に期待した」とコンペの趣旨を説明した上で「今回の成果はそのまま国連を通じて世界に発信される。3つの大学はもとより、日本の震災復興に関心を持ち検討を頂いた全ての大学関係者に心からお礼を申し上げる」とあいさつしました。

根本祐二教授 提案のポイントと日本への示唆
あえて国外の大学に、視察をしていない状態での提案により斬新なアイデアに期待した。
日本への示唆としては3点ある。一つはリスクベースで考えること。ハーバード大学の提案では、リスクがあまり高くないエリアは住宅開発を許容する。クイーンズランド州立大学の提案では、視認性の高い避難灯台を作るというアイデア。二つ目はモビリティ。復興させるインフラは移動可能なものでもいいとして、固定費を変動費に変えるという考え方。ハーバード大学の移動式診療所の提案や、クイーンズランド州立大学の浮動式漁業プラットフォームの提案がこれにあたる。三つ目は多様性への配慮。今回の視察では多様性を感じたという話があった。まさにそれを形にした提案が建築・土木・測地学大学の「お好み日本」の提案は、東北地方の各県の違いに注目して復興や産業振興の役割分担を提案してくれた。東洋大学は、これらの提案の実現に向けて活動していきたい。

第3位 クイーンズランド州立大学 大学院(オーストラリア)
発表会の様子全体的に建築デザインを重視した提案とした。提案は4つの主要プロジェクトで構成されている。まずは、震災以前から停滞・縮小傾向が強かった東北の経済を活性化するためのインキュベーション施設の設置。現状の復興計画は長期的な戦略がないまま、震災以前の産業や街並みを復旧させようとしているように見える。東京一極集中の大企業型の産業ではなく、地域の特性を活かした産業育成を促す仕組みとしてこの施設を提案した。二つ目の提案は避難灯台の整備。ランドマーク性がある施設とすることで、津波被害で被災前の街並みを失ってしまった地域の記憶を留め、コミュニティ施設としても利用できる。新設、既存建物の改修によって整備を進める。三つ目の提案は沿岸地域の再緑化の推進。沿岸被災自治体では、浸水被害の大きい地域を公園化する一方で、住宅地の再生に山を削って高台移転やかさ上げが進められようとしている。私たちの提案では、より自然との共生、生物多様性を重視した緑地の配置を進め、観光や産業の資源とすることとしている。四つ目の提案は、津波の被害を受けにくい沖合に漁業施設を整備する沖合漁業プラットフォーム。施設をモジュール化することで安価に整備することができ、また複数の漁協等で経営体を作ることで、漁師の経済的自立促進や漁場保全に繋がる。各自治体の復興計画を見る中で、漁業経営のあり方を長期的な視野から見直す必要性を強く感じた。これらの提案の一部は理想論に聞こえるかも知れないが、東北の持続可能な経済・社会の復興に繋がると考える。被災前の東北の状況を再考し、単純な復旧、復興ではなく、経済の活性化に繋がるプロジェクトを進めるべきだと考える。

第2位 建築・土木・測地学大学 大学院(ブルガリア)
東北地方の経済、豊かな文化を研究した上で、日本が世界を席巻したメタボリズム建築のアイデアを元に提案を組み立てた。基本コンセプトは、日本のお好み焼きのように特性や好みに応じてカスタマイズできる「お好み日本」という考え方だ。東北6県はそれぞれに特性が違うので、各県の特性に合わせた役割分担をするお好みキャンパスを各県に設置する。その上で、海洋ゾーン、短期で回収できる投資を促す沿岸ゾーン、津波による浸水の危険のないため長期的で高付加価値、高額の投資を呼び込む内陸ゾーン、さらにイノベーションや産業の拠点となる「お好みキャンパス」を県中心部に設置してクラスターを形成する。盛り土・かさ上げや防潮林の整備によって津波被害を軽減する。お好みキャンパスには、成功事例などをあつめたプロジェクトバンク、様々な主体を結ぶビジネス仲介、市民のアイデアと専門家とを結ぶアイデアセンター、PPPの情報やプロジェクトへの資金を提供する投資センターの4つの機能を備える。
メタボリストのアイデアをヒントに、海に浮かぶ構造物や移動可能なカプセル型シェルターを構築したり、人工の堤防を映画館や養殖、水耕栽培施設に利用したりすることも考えられる。これらのプロジェクトは、お好みキャンパスの設置を目指す2020年までと、防災性の高い産業立地(内陸移転)や経済活動を強靱にしていく2050年までの二つのタイムフレームの中で進める。また、安全、健康、雇用、農業などの複数のプロジェクトにPPPの枠組みを使うことができる。

第1位 ハーバード大学デザイン大学院(アメリカ)
この数日、東北地方を視察してさまざまな規模のさまざまなセクターが関与する復興の重要性を感じた。被災地のよりよい復興のためにも、産業や観光支援、マーケティング、教育に加えて自律的な基金や投資の仕組みを持つ「東北開発庁」の設立が必要だ。開発庁は、当初は復興庁などの予算からプロジェクトの為の資金を得るものの、各種プロジェクトが進むにつれて独立採算の資金運用ができるようになるものとする。
主要なプロジェクトとして、過疎地での医師不足を解消するためのコミュニティライフサポートセンターと移動式診療所の設置がある。医療専門職の人材を提供する病院とコミュニケーションや診療報酬のシステムを提供する会社のコンソーシアムに対して20年のコンセッション権を与える。また、東北地方での活動義務を負う医学生向けの奨学金を提供することで人材の確保を図る。また、東北開発庁とその基金を利用して、農業や漁業への民間企業の参入促進、電池産業の研究開発拠点の設置、被災者の住宅再建支援(二重ローンの解消)等を行う。住宅再建にあたっては、福島県内の避難指示区域の住民向けには、郡山など同県内の電池産業拠点周辺での住宅整備、北上川沿岸部では、田畑の再生と新たな観光産業に近接した中層住宅、仙台や沿岸部では津波のリスクが低~中とされる地区に防災設備や避難路を併設した住宅を整備することを提案する。
これらの提案はどれか一つで東北の復興ができるものでも無く、時間も必要であるが、様々な対策を組み合わせる事で、地元産業を中心とした復興を成し遂げることができると思う。

審査講評 フランク・シュニッドマン審査委員長

日本では、官僚が行動を起こすのに消極的だと感じる場面がよくある。それに対しては、「外圧」が有効だ。オーストラリア、ブルガリア、アメリカの大学院から頭脳、人材を連れてきた。大学院生達は、40年後の長期的な課題を解決することを提案した。その一方で、現地では、まさに目の前にある日々の生活をどうするかを考えている官僚、自治体の職員、ビジネスマンがいる。これらの現地で行われている活動によって、財政の悪化など将来の問題を起こすと判断してしまうのは時期尚早だ。確かに震災以前から東北の経済が課題に直面していたのは事実だが、長期的な復興と短期的な日常生活の復旧をどのようにマッチングさせるかを考える必要がある。
大胆な都市施設の配置変更を提案するものもあれば、東北地方で重要な政治課題でもある医療・福祉の充実に資する提案もあった。コンペティションに参加した学生達の人生にこのコンペティションと東北訪問が大きな意味を持ち、今後も研究を続け、日本の復興の為にPPPを推進していってほしいと思う。

パネルディスカッションの様子続くパネルディスカッションでは「東北地方を訪れてみて、復興がスピーディーに進んでいると感じた一方で、長期的なビジョンが不足しているとも感じた」「地方自治体は、資源が少ない中で復興のために多大な努力をしている様子が見て取れた」といった意見が各参加校から出された。それに対して根本教授から「復興交付金は元々あったものを取り戻すためのものであって、長期的な課題を解決するためのものでは無いというのが非常に大きな問題であるのは、今日の参加者の皆さんも感じている。それを日本人同士では言いにくい雰囲気もあるので、それを優秀校の皆さんから言ってもらったこともありがたい」「これらのプロジェクトを実施したい自治体があれば、積極的に手を挙げてもらえる仕組みを考えたいと思う」と述べた。
シュニッドマン審査委員長は「大学院からの提案を実行に移すためには、完了、自治体、市民に対する教育、意識改革が必要だと感じた」とした上で「学生達には、東北に住む(残り時間が学生よりも短い)高齢の人達の考えにも心を寄せてさらにアイデアを含めてほしい」と話した。


報告書

第1位 ハーバード大学 デザイン大学院(アメリカ)

第2位 建築・土木・測地学大学 大学院(ブルガリア)
"OKONOMI NIHON - Make your Japan" [PDFファイル/1.3MB]

第3位 クイーンズランド州立大学 大学院(オーストラリア)
"ARCHITECTURE OF RECOVERY" -A framwork for an altternative future- [PDFファイル/1.17MB]

オブザーバー参加 東洋大学 大学院(日本)
"Lessons Learned and Go Forward" [PDFファイル/1.05MB]

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