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第5回 国際PPPフォーラム講演者インタビュー

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去る2010年11月30日、経団連会館にて第5回国際PPPフォーラムを開催いたしました。今回は、東洋大学創立125周年記念事業を兼ね、最近話題の”アジアのインフラ整備とPPP”をテーマに、海外から4人のゲストを招聘して実施しました。おかげさまで、当日来場者は600名を超える盛況となりました。この場を借りて心よりお礼申し上げます。

フォーラムの模様は東洋大学ウェブサイトでも紹介しています。

また、フォーラムの席でご紹介しましたとおり、現在、東洋大学ではアジアの新興国政府に有用なPPPガイドラインの製作やPPPの研修を行うアジアPPPインスティチュート(APPPI)の設立準備に着手しています。進展あり次第、この動きもお知らせします。(今後のフォーラムやインスティチュートの予定はメールマガジンにより随時お知らせしています。)     

PPP研究センター長・公民連携専攻主任 根本祐二

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<リサーチパートナー・広報チームによる海外招聘三氏へのインタビュー>

2010年11月30日、学校法人東洋大学の主催(共催:日本経済新聞社)の第5回国際PPPフォーラムが千代田区大手町の経団連会館にて開催されました。

当日は、約600名もの人が聴講に訪れ、事前に当フォーラム用に収録されたマハティール元首相のインタビュー映像や、海外からのPPPの専門家の言葉に熱心に耳を傾けていました。

フォーラム終了後は、参加者とのレセプションが開催され、講演者やパネリストと意見交換する姿があちこちで見受けられました。

PPP研究センター(広報チーム)では、レセプションの間に、講演者であったアート・スミス氏(NCPPP前会長)、トニー・スミス氏(国連ヨーロッパ委員会タスクフォース代表)、ゲイリー・ミラー氏(国際PPPコンサルタント)にインタビューを行い、今後日本が海外とりわけ東南アジアのPPP市場に進出するにあたって留意する点など様々な経験に基づいたアドバイスをいただきました。

インタビューのやりとりは以下のとおりです。

(フォーラム資料:アート・スミス氏 [PDFファイル/585KB]トニー・スミス氏 [PDFファイル/587KB]ゲリー・ミラー氏 [PDFファイル/1.51MB]

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ゲイリー・ミラー氏(以下「GM」)

Q アジアに日本企業が進出する場合には、「ジャパンパッケージ」で行くべきでしょうか、それとも海外の企業と組んでいくべきでしょうか。

GM それはケースバイケースでどちらもありうるでしょう。ただし、もし「日本チーム」として競争に参加するのだとしたら、まずは自分たちの優位性がどこにあるのかを明確にしなくてはいけません。事前に十分な調査をして、勝てる状況であるかどうかを見極める必要があります。技術や競争力が十分に他国の企業等と比べて優位で、勝てそうだと思うのであれば、日本企業のみのチームで海外展開するのもいいでしょうが、多くの場合は、海外企業と組むことで勝てるチャンスを上げることができます。

Q もし、海外の企業と組んで長期間の運営管理(O&M)などをやる場合に、問題はないのでしょうか。

GM 案件ごとに協力体制を作るだけであれば、他国の企業と組んでも大きな問題はないと考えています。特定の案件に対してのみの関係であれば、誰とでも組むことは可能です。ただ、長期のO&M契約等においては、連携する企業同士は競合関係にないことが望ましいです。長期の提携関係は非常に難しく、多くの場合失敗しかねません。というのも、いずれかの企業の関心や事業の方向性が変化したり、それぞれの企業が得る利益に差があるなどの理由で不公平感が生まれたり、経営層の陣容が大きく変化したりすることが課題となり、持続的な関係を築くのは難しいです。そのため、仮に長期間の事業を実施するのならば、それぞれの企業は業務ごとに明確に分かれている方が望ましいというのが個人的な意見です。

Q 異国の企業同士の協力というのは多いのでしょうか。

GM 国際的な大型案件では、異国間の協力体制というのは非常に多く見られます。例えば、アメリカの企業がシンガポールの案件に参画しようとする場合、シンガポールの政府にしてみたら、シンガポール企業が入っている方が好ましく見えるでしょう。同様に、日本の企業がアラブ首長国連邦(UAE)に進出するのなら、地元企業と協力体制を築くのが有効だと考えます。多くの場合、地元企業は人的なつながりやその国の市場、文化・慣習への理解があるだけではなく、外国の国に比べてサービスや労働力を安く提供できるというメリットを持っています。地元企業に欠けているのは、(提案競争などに)勝つ経験等です。つまり、入札書をまとめたり、発注者の与信をしたりといったことをきちんとやれるだけの経験がないことが課題です。そこで、地元企業の持っていないそういった入札に勝つためのノウハウや世界的な企業ブランドを我々が持ち込み、地元企業が調達する比較的廉価な労働力などと合わせることで提案競争に勝つことができるのです。同時に、他の企業とチームを作るときには、どうすれば自分たちにとって有利なトラックレコードを残し、経験を積むことができるかを考えるべきでしょう。

Q 地元企業と組まずに、例えば、日本の企業とオーストラリアの企業が組んでマレーシアのPPP市場に参加するというようなケースもありえますか。

GM そういったケースも当然あるでしょう。そういう場合では、常に互いの優位性が何かを強く意識すべきです。たとえば、マレーシアの人は親日家が多いと言います。今回のフォーラムに対してマハティール前首相がメッセージを寄せたり、国のトップからの支援も期待できるかもしれません。そういった国民感情や人と人とのつながりなどを大事にすれば、複数の海外企業が組んでまるで違う国に行くという可能性はあります。

Q 「スピード感」が重要だという話がフォーラムで出ていました。企業経営の意思決定のスピード感というのはイメージしやすいのですが、プロジェクトに参画する際の意思決定のスピード感というのは具体的にどのくらいの期間なのですか。

GM プロジェクトデベロップメントには、プロジェクトの評価から提案の準備、提案に至るまでいくつかのステップがあり、それに応じたタイムフレームがあります。プロジェクトに参加する際に最も重要なのは、発注者がそのプロジェクトを完成させるだけの資金力や政治力、権限等を持っているかといったことを評価し、提案に参加するかしないかを決める段階です。現実には、多くの発注者は具体的で現実的な計画を持っておらず、プロジェクトを完成させられる力がありません。つまり、本当にその発注者とプロジェクトが現実的かを評価しなければ、提案、契約や交渉、工事などで多くのお金と時間を無駄にすることになります。こういった発注者の評価は、通常は数週間で完了します。我々は、プロジェクトや発注者をスクリーニングするためのコンピューターソフトを構築しており、そのソフトによって、発注者やプロジェクトを評価し、ランク付けをしています。こういう際には統計は非常に役立ちます。

トニー・スミス(以下「TS」)、アート・スミス(以下「AS」)

Q 日本のゼネコンが過去に東南アジアのPPPプロジェクト(BOT事業)で持ち株を売却して撤退した事例(1980年代後半~90年代)があります。事業自体は黒字ではあったのですが、公社とSPCのとの事業契約上は有利であったのにものが裁判で押し切られて運営から撤退したもので、この原因は、発注者だった道路公社が、そのプロジェクトを行う権限を持っていると主張していたにも関わらず、その権限の一部が認められていなかったことでした。政府が直轄でやっている場合ではなく、公社が発注者となっている場合などに、どこまでその公社が権限を持っているかを見極めるにはどうしたらいいのでしょうか。

TS 同様の問題は、途上国において非常に多く起こっています。権限の所在が不明確で、さらに簡単に法律や制度が変えられてしまうといったこともよくおこります。そのため、提案に参加した企業や、実際に入札・提案競争で選定された事業者は、長期間にわたって労力や時間、費用を無駄にさせられてしまうことがあります。そういう時には、その国の政府の関与が必要になります。対応策の一つとしては、政府からなんらかの保証を得ておくことが考えられます。

AS 必ずしも政府からだけではなく、世界的な機関や多国籍の開発銀行などからの協力を仰ぎ、保証を得ておくことも考えられます。この保証には、仮に政府や公的機関が制度や法律の不備によってプロジェクトを遂行できなくなった場合に、なんらかのペナルティーを与えることができるような契約としておくのがいいでしょう。実は、多くの国は(法制度面などで)PPPをやりたくてもそれだけの枠組みをもっていないことが多いのです。こういった制度面などで支援を行うことができる機関が必要です。

TS 企業が海外に進出する際には、法律や制度のフレームワークを明確かつ正しく理解しておくことが必要です。ただ、政府機関というのはどこの国でも縦割りで互いのコミュニケーションが欠如しているため、権限や役割分担は不明瞭になりがちです。多くの国では、PPPの担当機関というのも非常に不明瞭です。また、担当機関がコロコロ変わったりすることも多く起こります。

Q どうやってそれをチェックするのでしょうか。

TS 法律のデューデリジェンスが必要です。しかし、法律というものは必ずしも明確ではないということもあり、これも非常に難しいです。

AS PPPに関しては、例えば国有資産に関する法律とPPPに関する法律の間に齟齬があるなどの問題も考えられ、その点については慎重にならなくてはなりません。

TS 4、5年前にコソボ共和国で仕事をしたことがあります。当時、コソボの法制度は非常に貧弱で、PPPのプロジェクトを実施するためには法律に手を加える必要がありました。国連などの関与により、その法律や政府機関の権限が不明瞭であるということを指摘し、必要な新法制定や法改正を行いました。PPP関連の特別法をつくり、他の法律よりも優先させる枠組みを作るのは一つの有効な考え方です。

Q法律のデューデリジェンスというのは、一つの民間企業が行うのには荷が重いような気がします。

TS その通りです。だからこそ、途上国の政府・公的機関は、法制度を民間企業が参画しやすいように整理する必要があるのです。そうでなければ、投資はより法制度が明確に整理されている他国に逃げるということを認識すべきです。

AS グローバルな経済の中では、投資家は多くの投資オプションを持っています。投資家は、プロジェクトの実現可能性やリターンの大きさを重視しているように思われがちですが、彼らがもっとも危惧しているのは(制度の)不明瞭性です。ある投資家は「リスクには投資できるが、不明瞭さや曖昧さに対しては投資ができない」と話していました。

Q UNECEはこういった問題に対し、具体的に何か行っていますか。

TS 我々の役割は、法律や制度をチェックし、必要な改善を求めていくことです。そして、投資家を集めてパイロットプロジェクトを実施することです。そうすることにより、制度の齟齬や不明瞭さを取り除いていくといったことをやっています。これらのパイロットプロジェクトは、民間企業にとって魅力的になるよう計画される必要があります。

AS そういったプロジェクトを行う場合には、もし発注者が契約を遂行できなくても民間企業が損失を被らないように国際的な開発銀行などから保証を受けておく方法も考える必要があります。 AS UNECEのつい最近の活動事例としては、キルギスタン政府が制定したPPP法への関わりがあります。しかし、この法律はたった数ページの非常に簡単なもので、PPPが何かということすら定義されていませんでした。キルギスタン政府は、課題があることを理解しており、UNECEに法律のチェックを要請してきました。これを受けてUNECEはPPPの専門家を派遣してアドバイスを行いました。キルギスタン政府は、おそらく来年には新しいPPP法を作ることができるでしょう。

Q 日本のPPPに関連した法律では、特別法のPFI法と公物管理などに関連する一般法とでは、一般法のほうが優先されてしまっているのが現実です。かたや、韓国では特別法であるPPI法はその他の法律よりも優先されるということが明確になっています。日本の法律的な課題に対する有効なアプローチはありますか。

AS アメリカでは、連邦法は非常に漠然としていて、かならずしもこまごまとしたことまでカバーしているわけではありません。そのため、各州が自由にPPPに関する法律を制定しても、連邦法を侵害する危険はあまりありません。おそらく、そこが日本の法律システムとアメリカの制度との大きな差だと思います。アメリカで取られている一つのアプローチとして、非常に狭い範囲の特例法を作り、そこで成功事例を作って、徐々に適用範囲を広げていくという方法があります。最初に汎用性の高い法律を作ろうとすると、多くの法律との間で問題が発生したりするため、法律を通すことが難しくなりますが、特定のプロジェクトのための特例法であれば、通すのはそれほど難しくありません。また、その取り組みの結果を反映した修正も加えることができます。たとえば、ワシントンDCのユニオンステーション駅の再整備は、ユニオンステーション再開発法という特例法を作って実施しました。その後、その成功事例をもとに、適用範囲を全米の全ての鉄道駅に広げました。しかし、この法律は鉄道駅に限ったもので、その他の交通機関や道路などは対象にしていないといった形です。

TS 法律に関する一つの大きな課題は、PPPの定義、範囲は何かということを明確化することです。多くの国にとっては、それが課題となっています。特に、財政的な課題を抱えている国では、民営化や国有資産の売却や特定のインフラの整備など非常に狭いPPPの手法のみを法律で規定しており、それ以外に対応できなくなってしまっています。イギリスはもっとも進んだPPP実施国だと思いますが、実はPPPに関する法律というのは持っていません。唯一のPPP関連の法律は、「Local Government Contract Act(地方政府の契約に関する法律)」です。この法は、PPPを実施しようとする州政府や機関がプロジェクト実施や契約のための権限を持っていない場合に、その州政府が権限をもっているとみなすことができるようにしているものです。契約の段階になって地方政府に権限がないということになってしまうと、入札に参加した企業や金融機関は大きな損害を受けます。これを防ぐため、仮にその地方政府機関が権限をもっていなくても権限があるものとみなし、契約を行うことができるとしています。同時に、入札の参加者、融資者に対してはその機関が権限を持つとみなされており事業契約、直接契約が有効であることを保証する認定証を発行することができるようにしています。

Q モンゴルでの取り組みについて説明してもらうことができますか。

TS モンゴルでは、まず昨年、PPP実施のためのアクションプランを作成しました。その後、今年1月にコンセッション法をつくり、今夏にはPPPユニットを設置しました。現在までに、政府の各省庁がPPPで実施されることを望む123件のプロジェクトウィッシュリストを作り、それを18件まで絞り込んでいます。来年には、これをさらに2、3件に絞り込んで実施することを目指しています。ところが、モンゴル政府やPPPユニットがPPPを理解していないことが現在の大きな課題です。政府やPPPユニットは、現時点ではプロジェクトを実施するために必要な、標準化された実現可能性調査やVFM(バリュー・フォー・マネー)の算定、B/C(費用便益)分析や意見聴取のためのプロセスなどを行えません。PSC(パブリック・セクター・コンペレーター、従来方式で事業を実施した場合の事業期間を通じた公的負担見込み額)の算定に必要なデータも持っていません。そのため、これから7カ月程度をかけて、いくつかのプロジェクトについての実現可能性調査やPPP実施のためのプロセスの整理を行います。さらに、要求水準の設定やPSCの設定をして、内閣から許可をとって予算措置をし、事業者の公募などを行わないといけません。

(以上)

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