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第7回 国際PPPフォーラム講演者インタビュー

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東洋大学PPP研究センターでは、8月1日に開催した第7回国際PPPフォーラムに併せて、海外からお招きした講師お二人にインタビューを実施しました。アメリカの自治体で実施されているシティ・マネジメントやバランス・バジェット、公共施設マネジメントについてなどを伺いました。

□日     時  2012年8月1日(水)18時00分~19時00分

□場     所  東洋大学大手町サテライトキャンパス

□インタビュアー  東洋大PPP研究センター広報チーム(清水、奥田、尊田(原))

□通訳・サポート  東洋大PPP研究センター 田渕教授、根本教授、藤木、難波

□参  加  者  東洋大PPP研究センターリサーチパートナー(阿部)

□回  答  者  ロン・カーリー 国際シティ/カウンティ・マネジメント協会専務理事(RC)

            グレン・ロバートソン元全米バジェットオフィサー協会会長(GR)

■□■シティーマネージャー制度について

RC―――日本でシティーマネージャー制度を浸透させるために最も重要なことは何か。

RC:日本にとって大事なことは「本気でやりたい」と思えるかどうかということ。また、組織内、あるいはコミュニティー内の支持も必要である。

日本でも自治体経営は変革できる。東洋大学には、その最初の事例を作っていく役割が求められる。今日のフォーラムの観客の数名でもいいから、自治体の人が本当に我々のメッセージを理解して、取り組み始めてほしい。最初の変化は、非常に小さなところから始まっていくものである。

―――日本でシティーマネージャー制度を試験的に実施するとしたら、その自治体が兼ね備えるべき要件は何か。大都市なのか、小規模でも可能か。

RC:本当に必要な条件は一つしかない。それは、先ほども述べたが「本当に変えたい」と思う強い意志だ。100万人都市でもいいし、フォルスチャーチのような1万6,000人の町でもできる。

GR:シティーマネージャー制度が包含する考え方を発信し、教育し、理解者を増やすことも重要である。シティーマネージャー制度の適否に自治体の規模はあまり関係ないと思うが、どのような規模であっても組織の中のリーダーシップが大事だ。そして、リーダーシップを発揮するためには、ロン氏が指摘しているように、市長でも副市長でもいいから「本当にやろう」という強い意志が必要である。それがあるのなら、成功の可能性はある。

―――どの程度の規模の自治体がシティーマネージメントやバランスバジェットの効果が最大となるのか。参考となる米国の都市を教えてほしい。

RC:アメリカを例にすると、人口10万~30万人規模の自治体がシティーマネージメントに適したサイズである。規模的にも十分に大きく、技術や能力のある専門的な人材も十分におり、それでいて組織内で互いを知り合っている。それらの点で、ちょうどいい規模だ。

参考例としては、テキサス州エルパソ市の事例がある。以前はストロングメーヤー制であったが、当時の市長が本気で変革していきたいという強い思いがあり、同市初のシティーマネージャーが誕生した。7年間をかけて戦略的に取り組みを続けており、今では非常に成功している。当時の市長はビジョンを持っていたが、それを実行する技術はなかった。そのため、ビジョンを実現してくれるプロを雇い、自分自身は議長へ転身した。

――バランスバジェットが効率的に機能するために適した自治体サイズというのはあるのか。

GR:バランスバジェットの成否は、自治体の規模とは関係しない。しかし、どの規模の自治体も同じようなサービスを持っており、必然的に小規模な自治体は本当に必要なサービスでさえ提供していく財政的な余裕がなく、バジェットオフィサーを雇う余裕もない。そのため、財政面での基礎的サービスを担う会計士を雇っている。

人口2万人規模の自治体では小さい(RC補足:2万5,000人)。10万人規模であれば2人くらいバジェットオフィサーを置けるのではないか。

RC:人口20万人程度のアーリントンには、6、7人のバジェットオフィサーがいた。

GR:バジェットオフィサーがいるかどうかは本質的な問題ではない。バランスバジェットには決まった手法、言い換えると必ず問われるべき質問というものがある。これを私は六つのステップとして提唱しており、それに沿って検討し、決断をしていくことが重要である。そうすれば良いバジェットは達成できる。

―――人口規模による格差は生じないのか。生じるとするなら、その格差を解消する方策は。

RC:日本と同じように、アメリカにおいても非常に小規模な自治体ではスケールメリットが働かず、財政基盤が弱い。そうした問題への対応策として、例えばジャクソンビルやナッシュビルなどは、一部エリアでカウンティ(郡)と市を統合している(カウンティ直轄のエリアを統合した)。また、フォルスチャーチは人口が1万6,000人と小規模すぎて消防機能を持てなかったため、アーリントン郡と契約して消防機能を提供してもらい、一方で保健と福祉についてはフェアファックス郡と契約して提供してもらっていた。

GR:小規模自治体は、サービスの種類(量)だけではなく、質の維持においても問題を抱えている。自活するには税収は十分ではなく、サービスの質の面で他の自治体と大きな格差が生じることがある。そのためフロリダ州は、小中学校のサービス格差を是正するための交付金を交付している。

■□■公共施設・インフラマネジメントについて

―――日本が直面するインフラや公共施設の老朽化問題について、「荒廃するアメリカ」の経験を踏まえた日本への提案と、この問題の解決におけるシティーマネージャーの役割を伺いたい。

RC:シティーマネージャーがまずやるべきことは、予算部門の人を探すことだ。

GR:アメリカではすべての市が老朽化問題に直面している。1970~80年代と比較的遅い時期に発展したフロリダではインフラも比較的新しいが、北東部NYやMA、PAは日本と同じように更新や改修の課題に直面している。

更新に必要な費用は、まずシティーマネージャーが算定し、市長が市債の発行可能額の上限を見極めながら政治的に判断される。市債発行額の上限は、例えばフロリダ州では一般的な行政運営費の7%まで。それを超えると格付けが非常に悪くなる。

一方、更新計画については、優先順位を付ける。安全性が第一というのが一般的だ。そういった優先順位に基づいて、改修や改築のための予算付けをしていく。

―――公共施設やインフラの管理の「質」を評価する仕組みや指標はあるか。

RC:更新だけではなく、建物や下水道やごみ処理の業者を選択する際にも、要求される特質や要素は詳細に規定されている。この部分でばらつきがあるとサービスの質もばらつき、公平な選択を行うことができない。しかし同時に、選択する際にはある程度のフレキシビリティーも必要である。

GR:政府は、公募の際に要求するサービスの質を明確に規定しなければならない。車に例えるなら、ベンツが必要なのか、カムリでいいのかを規定するということ。道路においても要求される質は多様なため、入札参加者がきちんとそれを理解できるようにすべきである。ただし、今の自治体では財政が厳しいのでカムリを選択する場合がほとんどだが・・・(苦笑)。

 逆に伺いたいことがある。アメリカの自治体の公債費は10%程度だが、日本の自治体は30%であり、非常に大きい。この理由は何なのか。公共インフラの量が多いのか、それとも質が良すぎるのか。

根本:両方だと思う。ただし、質が良いというより、価格が高いと言った方が正確だろう。

田渕:日本では、国から地方へ配分した予算による公共事業が地方の産業政策となっていた歴史があり、必ずしも必要性に基づいて公共インフラが整備されたものばかりとは言えない。

■□■バランスバジェット、予算、会計について

―――米国では、以前から国・地方政府のバランスシートを作成していたのか。バランスシート作成が遅れている日本での取り組みを促進するために何が必要か。

GR:(日本の自治体にバランスシートがないということに対して驚きと笑い)。日本では、自治体経営において、基本的な会計すらされていない。アメリカではバラGRンスシートを持つことは当たり前なので、日本がどうするべきかという質問に対して答えることは難しい。日本でも法律ができたようなので、今後は会計の基本に沿った形で進んでいくのではないか。アメリカでも法律があるから進んできた。

阿部:きちんとしたバランスシートを作成している自治体は、全体の10%以下、150団体程度であろう。そのほかの多くの自治体は、予算の歳入と歳出だけを見て「バランス」を見ている。

RC:自治体の会計制度は非常に複雑な問題を抱えている。なぜなら、自治体のバランスシートは民間とは必ずしも同じではないからだ。民間と比較して、必ずしも完全なものを持っていたわけではない。破たん法制も民間とは違う。

アメリカでは、施設の現在価値や、それが資産台帳に載っているかについて、あまり関心を持っていない。キーとなるインフラを見極め、それを安全かつ機能的に維持する費用を見極め、いかに資金調達していくかが焦点である。

GR:公共施設の現況などの評価をする専門家がいる。職員が行っている自治体もあるし、外注している自治体もある。自治体のトップは毎年、公共施設に関する(専門家が作成した)報告書を受け取り、それに基づいて、どの施設から更新すべきかといった優先順位を付ける。資産台帳に記された資産の現在価値を見ながら更新していくのではなく、専門家が作成した優先順位通りに更新していくことが重要であり、そのための予算確保が求められる。

―――更新費用の財源はいかに確保しているのか。

GR:アメリカには、老朽化に対する基金はない。

RC:Rainy days fund(非常時用基金)はあるが、老朽化対策には使われない。

更新には大きく分けて二つの財源がある。一つはいわゆる歳入(キャッシュ)であり、もう一つは市債の発行(ボンド)である。財政的に健全な自治体は債券を発行するだろう。ここで重要なことは、債券の償還期間よりも施設の寿命が短くなるような起債はしないことである。

GR:Dedicated Revenues(特定の用途に充当される歳入)も重要な財源である。例えばユーティリティー税(電気、電話、携帯などの接続税)は特別基金にまわされ、それを財源として前述した優先順位に沿って学校施設の更新や改修が行われる。

しかし、特定財源にも問題がある。ユーティリティー税については、経済環境の悪化に伴って収入が減少しており、学校の更新や改修に遅れが出ている。また、道路特定財源には揮発油税が充てられているが、燃費が良い車が普及して、揮発油税が十分に集まらない状態になっている。

―――バランスバジェットの手法である①歳出のカット②歳入の増加③基金の取り崩しについて、その手法を決定する過程で、予算が削減される行政部門や、行政サービスが縮小される住民に対してどのような方法で説得し、合意されているのか、具体的事例で伺いたい。

GR:多くの方法があるが、いずれにおいてもサービスを大きくカットする場合は事前に市民の反応を聞く機会を持つ必要がある。

市民は、すべてのサービスをこれまでと同じように享受し続けられないことを理解し始めている。市民が最も必要なものに優先順位を付け、それを基に政治的判断を下す必要がある。例えばフロリダの市民は安全つまり警察機能を重視しており、公園やコミュニティー維持に関する予算の優先順位は低くなっている。

そうして決定された優先順位を基に予算付けが行われる。仮に公園やレクリエーションの優先順位が低ければ、それを担当する部局の予算が削減される。予算ヒアリング(バジェットオフィサーと組織部局による担当部局のヒアリング)でそうしたことを説明すれば、担当部局も理解する。バジェットオフィサーや市長、シティーマネージャー、議員たちは、担当部局とよく話し合って解決策を見つける必要がある。

もう一つの課題は組合である。自治体の財政状況に関わらず、組合員に対しては契約で定められている福利厚生を提供しなければならない。しかし、オークランドでは組合との契約を見直さなければ市が破たんし、破たんを避けようとすれば契約を見直さざるを得ないという事態に陥った。

―――住民との合意形成を得るために、具体的にどのような取り組みがなされているのか。

GR:よくやられているのはタウンホールミーティングで、新聞広告を使って参加者を募集することが多い。タウンホールミーティングでは、参加者に対していくつかの選択肢を提示する。

市民は経済環境が悪いことは理解しているが、サービスレベルを維持するための増税には大きな反論がある。そのため、別の選択肢として、サービスの削減もやむを得ないとの理解が広まってきている。

RC:住民との合意を形成するには、重要なことが二つある。一つは、職員が市民のところに出かけていくことである。自分は役所にいて、市民のみなさん来てください、というやり方はもうはやらない。もう一つは、ウェブやインターネット、フェイスブックなどを活用することで、すでに非常に興味深い取り組みが始まっている。

田渕:アメリカの市民は、日本の市民よりもわずかに市民参加への意識が高い。自分も自治に参加している、そのために税金を払っているという意識が強い。

根本:昔の日本はそうではなかった。日本の自治体や住民も昔は自立していたが、戦後復興で全国公平、平等に復興という流れの中で中央依存が強まった。ちなみにこのシステムはマッカーサーが作ったのだが・・・(笑)

―――BIS規制(国際業務を行う銀行の自己資本比率に関する国際統一基準)では、政府機関に対するリスクウェイトはゼロになっているが、実際にはゼロではないのではないか。

GR:アメリカの自治体は市債の格付けに非常に敏感である。なぜなら市場による規律があるからである。格付け会社も格下げには慎重で、簡単に格下げは行わない。しかし、自治体が破たんしてしまえば、健全財政の状態に戻るまでに非常に長い時間を要する。長期的に財政的な安定性を元に戻すには10~12年はかかる。したがって、破たんする前に自治体と十分議論をして、格下げをすることで起債を削減させ、歳出も削減させて長期的に財政的な安定性を確保させる。

―――日本では予算をつけたらその執行を重視し、決算の成果を評価しない傾向がある。米国ではどうか。

RC:年度の途中に評価はしているが、普通は増加方向の予算補正は認めない。

GR:増加方向の予算補正は、例えば1年間で5回も台風に襲われるといった緊急的な状況にならない限りは行わない。行う場合には議会を通す必要がある。ただし、下方の補正はする。年度途中で当初予定したほど歳入がない場合は、バランスバジェットを達成するために対応する歳出予算を削減することがある。

田渕:フロリダはGPA法によって、パフォーマンスが求められる。予算を使ったか使わなかったかではなく、使って何をして、どのような効果が上がったかが重要である。

(以上)