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2017年度 第8回未来を拓くトップセミナー「発酵食品と人類の叡智」を開催しました(板倉キャンパス)

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2017(平成29)年11月21日(火)、2017年度の第8回目となる「未来を拓くトップセミナー」を板倉キャンパスにて開催しました。本セミナーは、各界において指導的立場で活躍している方々を講師としてお招きし、将来への指針となるご講演をいただくことで、学生のキャリア形成の一助とするために開催しています。

今回は講師に東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏をお招きし、「発酵食品と人類の叡智」というテーマでご講演をいただき、約430名の本学学生、教職員が聴講しました。この日の司会進行は食環境科学部の林清学部長が務め、講演に先立って、福川伸次理事長より趣旨の説明を行った後、林学部長から講師の小泉氏の紹介がありました。

小泉氏小泉氏は講演冒頭、人間が住むこの世界には数多くの菌(微生物)が存在し、人の体にも約4兆個の微生物がいることをお話しされました。菌にはいわゆる悪玉菌と善玉菌があり、悪玉菌は腐敗を進める菌や病原菌、善玉菌には納豆菌や乳酸菌などがあります。善玉菌は人間にとって良い働きをするものであり、薬の抗生物質(ペニシリン)もその菌の一つで、アオカビから生み出されていることをご説明されました。

善玉菌によって生み出された発酵食品には醤油・味噌・みりんなどがあります。酒もその一つで、日本では縄文時代から果実の発酵による酒造りが行われていました。また、奈良時代に入ると、麹菌による酒造りが始まったと伝えられています。これは、蒸したお米を神仏にお供える際に生えたカビが麹となったことに由来し、麹を使った酒以外に味噌や醤油も作られるようになったといいます。

現在、日本では桜が「国花」とされているように、麹菌が「国菌」となっています。国菌である麹菌には黄麹菌と黒麹菌があり、黄麹菌からは日本酒・味噌・しょうゆ・みりんが、黒麹菌からは焼酎が作られています。「黒麹菌は沖縄にしか存在しないこと、また、中国や韓国、東南アジアでは麦から麹を作ることから、日本には独自の発酵文化がある。そして国菌を指定しているのは世界でも日本のみである」と小泉氏はその重要性を説かれました。

講演会の聴衆日本だけでなく、世界にはさまざまな発酵食品があり、小泉氏が過去に訪れた世界の国々の発酵食品についてスライドを用いて説明すると、学生たちはより一層熱心に、聞き入っている様子でした。小泉氏が講演にて触れられた主な発酵食品を以下にご紹介いたします。

・漬物もやし(カンボジア):発酵を進めることで、シナシナになりやすいもやしをシャキシャキしたままにすることが可能

・食べる茶葉(ミャンマー):発酵した茶葉で肉を炒めることで、料理が油っぽくならない利点がある

・ツバメのしっぽ(北極):アザラシの裂いたお腹の中に、ウミツバメを300羽ほど埋め込み、土中で発酵させると、アザラシのハラワタの中の腸内細菌によって、ビタミンが生み出される。食材が豊富でない北極圏において、イヌイットの人たちはそれを食べて、ビタミン補給をしていた

・発酵チョウザメ(ジョージア):お腹の中からキャビアを取ったあとのチョウザメは水っぽくておいしくないが、ヨーグルトに漬け込むことにより、乳酸菌が作用。たんぱく質が分解され、アミノ酸が生まれることでおいしくなり、高級品として売られる

世界中で多くの発酵食品を見てこられた小泉氏が、その中でも「一番珍しい」とお話しされたのが、ふぐの卵巣ぬか漬け(日本)です。ふぐの卵巣には猛毒の「テトロドトキシン」が含まれていますが、塩漬けにすることで卵巣膜から乳酸菌が入り込み、水分とともに毒が抜けていきます。江戸時代には佐渡島や能登半島で作られていましたが、現在は石川県白山市に5件の業者が残るだけだといいます。独特のノウハウにより、約3年をかけて発酵することで、解毒されていくそうです。

日本はぬか漬け(漬物)大国であり、それは日本人の『もったいない精神』からきているといいます。発酵食品の特徴は腐らないことで、小泉氏は「保存もできるし、健康にもよく、おいしい。まさに日本の民族の知恵が結集されたものである」とご説明されました。続けて、「発酵食品で免役体(抗体)を作る研究が行われるなど、発酵食品はこれからますます注目される分野。発酵は面白い世界がまだまだ続きます。発酵の動向を探っていくと、面白い方向に進んでいくと思います」と、講演を締めくくられました。

<今回のセミナーに参加した学生の声>

・解毒発酵について初めて知り、驚きました。

・講演を聞き、学んでいる学科の勉強について、がんばろうと思いました。

・ふぐの卵巣ぬか漬けを紹介していただけて地元の活性になりました。(石川県・金沢出身者)

・発酵方法、効果について、さらに詳しく聞きたくなり、自分でも調べたくなりました。

・授業では聞けない話が聞けてよかったです。

・ヒトの生命において発酵食品はとても重要なものだと学びました。

・日本国内だけにいると視野が狭くなってしまうと感じました。

・何事も挑戦・経験が大切だと思いました。

 

小泉氏<講師プロフィール>

東京農業大学名誉教授

小泉 武夫氏

1943年福島県の酒造家に生まれる。東京農業大学名誉教授。農学博士。専門は食文化論、発酵学、醸造学。現在、鹿児島大学、琉球大学、広島大学大学院医学研究科、福島大学などの客員教授を務める。日本経済新聞にコラム「食あれば楽あり」を24年間にわたり連載中。食・食文化に関する多くの書籍を執筆し、単著は143冊を超える(2017年8月現在)。食に関わる様々な活動を展開し、和食の魅力を広く伝えている。