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2017年度 第7回未来を拓くトップセミナー「理化学研究所の役割と活動」を実施しました(川越キャンパス)

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トップセミナー2017年11月13日(月)、2017年度の第7回目となる「未来を拓くトップセミナー」を川越キャンパスにて開催しました。本セミナーは、各界において指導的立場で活躍している方々を講師としてお招きし、将来への指針となる講演をいただくことで、学生のキャリア形成の一助とするために開催しています。
今回は、講師に本学工学部卒業生であり、国立研究開発法人理化学研究所 理事長室長/元理事の古屋 輝夫氏をお招きし、「理化学研究所の役割と活動」というテーマでご講演をいただきました。会場となった川越キャンパスの421番教室には、114名の本学学生と教職員が集まりました。

本学川越キャンパスで大学4年間を過ごし、卒業後は理化学研究所に入所された古屋氏。
日本トップの研究所といわれる理化学研究所での38年間を振り返り、古屋氏がこれまで積まれてきた多くの経験についてお話いただきました。

日本のイノベーションを強力に牽引する使命

トップセミナー2017年に創立百周年を迎えた理化学研究所は、1917年に財団法人理化学研究所として設立され、さまざまな歴史を刻みながら、2016年に特定国立研究開発法人となりました。「国立研究開発法人は各省庁に跨って国内に27法人あり、そのうちの3つのみ特定国立研究開発法人に指定されています。理化学研究所はそのうちの1つです」講演冒頭、古屋氏は理化学研究所の歴史について紹介し、またその使命について次のように語りました。「理化学研究所の使命は、理化学研究所法の第三条にその目的が定められています。2016年10月に特定国立研究開発法人理化学研究所となってからは、世界最高水準の研究成果の創出が求められています。理化学研究所の強みや特徴を活かし、特定国立研究開発法人として、我が国のイノベーションシステムを強力に牽引していくことがその使命となっています」

この使命を果たすため、理化学研究所はその本部(和光市)を中心に、日本各地、海外にわたり研究拠点を持っています。理化学研究所は、社会の必要に応じた集中的・戦略的研究を行う「戦略センター」、最先端研究基盤施設の整備・開発・共用を行う「基盤センター」、また、基礎研究を長期に育む主任研究員研究室があります。戦略センターや基盤センター等分野を横断して、産業界との連携や理化学研究所の成果を社会に還元する「産業連携本部」、大学研究機関・病院・企業等と共同で研究開発等に取り組む拠点整備を行う「科学技術ハブ推進本部」を設置し、先端研究と同時に、大型の基盤研究、イノベーションに結び付ける研究を推進する総合的な研究体制をとっています。それは、世界的に見ても珍しいことだと古屋氏は強調しました。

理化学研究所の研究職は約3000名、事務職は約500名。今は、定年制に加え、任期制の採用が増えているといいます。また、独立行政法人の予算は減少傾向である実態についても語りました。

次に古屋氏は、理化学研究所の特徴として、以下の4つを紹介しました。

  1.  大学にはない、大型施設の開発と運用・共用
  2.  一研究室の規模が大きく、長期・大型プロジェクトを計画・実行できる
  3.  研究支援(技術者等)、研究推進(事務)が充実
  4.  新領域、学際領域の開拓の容易性/研究室間の垣根が低い、日常的な研究議論

「理化学研究所は、分野が限定されていない研究所ですから、新しい領域開拓にも取り組んでいく責務があります。つまり、特定の領域にとどまっていてはいけないのです」――。上記4つの特徴を有する理化学研究所には、新しい学問を作り出せる環境が整っているといえます。

産学官連携を進めてさらなるイノベーションの創出へ

2015年5月22日には、世界最高水準の成果を生み出すための経営方針「理研 科学力展開プラン」を公表しました。「理研 科学力展開プラン」では、有効な研究運営システムの開拓・モデル化をしていくことのほか、大学や企業と連携してイノベーションを生み出すために、理化学研究所がそのハブの役割を担っていくことの重要性などにも触れられています。
理化学研究所では、年間2500本ほどの論文を発表しており、うち約5.6%が、世界のトップにある高品質論文に評価されているといいます。実際、民間企業等が特許を出す際に引用した学術論文に関する統計調査によると、他の教育機関等に比べ、理化学研究所の発表した論文を引用されている割合が高く、「これは、理化学研究所の基礎研究の成果が、産業界の役に立っていることを意味しています」と古屋氏は語りました。
また、研究成果の社会還元制度を設けて、企業と理化学研究所の基礎研究とを繋ぐバトンゾーンの研究の推進、産業界と連携し研究を進めるための理化学研究所内ラボの設置といった、さらなるイノベーションを生み出していく仕組みについても触れました。
そして、今後の展望として、新しい法人「イノベーション事業法人」の設立に向けた法律改正などの準備を進めていることも明らかにしました。

未来を予想しイノベーションをデザインする

続いて、古屋氏は、学生に向けて3つの問題提起をしました。

(1)エネルギー資源と鉱物資源の枯渇
エネルギー資源と鉱物資源の残余年数調査によると、今から30年~100年後のあいだで、主なエネルギー資源・産業に必要な良導体(金・銀・銅)は枯渇する見込みである。

(2)人口爆発
日本では少子化が叫ばれているが、世界人口で見ると2011年70億人が2048年には90億人となる見込みである。

(3)人工知能
2045年には、人工知能が人類を越え、人工知能に人間が使われる時代が訪れるといわれている。

トップセミナー古屋氏は、(1)(2)(3)がいずれも、今から30年ほどで人類が直面する問題であること、皆が真剣に考えていく必要があることだと、学生に対して強く訴えかけました。
「今から100年後を予想すると、さまざまな問題が考えられます。でも、私は、『皆さんの知恵』と『科学・工学』を使っていけば、どんな問題も解決していけるだろうと思っています。これから期待しています」――。
理化学研究所では、そのような未来を予想して、さまざまな人と協力しイノベーションをデザインできる人、夢を語りビジョンを達成できる人を求めているといいます。
また、世界最高の研究所を目指すにあたり、「一流の研究者と独創的な研究テーマ」「豊富な研究費」「十分な研究スペースや設備などの物理的研究環境」のほか、特に「研究にマッチした研究体制・研究運営形態」が大事であると古屋氏は続けました。研究の牽引役・後押し役であり、社会との架け橋となれる存在、そして経営を支える政策の提言をも担う“事務”こそが大切で、研究者に寄り添い一緒に研究を推進していく“事務”が優秀であれば、世界最高の研究所も構築していくことができるとその重要性を訴えました。そして、人間関係構築のうえですべてに当てはまる「感謝されること」「尊敬されること」「信頼されること」を“事務”には目指してほしいと、古屋氏はこれまでの経験を踏まえ、学生に熱く語りました。

楽な仕事はないが、少しでも「楽に」「楽しく」

トップセミナー「仕事」とは、役割を適切にこなすこと。そのためには、判断する者の立場になって考えてみること、また、判断する者に速やかに情報を提供し、何が不十分か指摘してもらいながら考えることが大切であると古屋氏はいいます。
「仕事を“楽に”するにはどうすれば良いでしょうか。“楽に”とは『忙しくない』『簡単』という意味ではありません。仕事を“楽に”するには、自分の能力をいかんなく発揮して処理できることが一番大切です。つまり、自分がどのように処理できるか見通しを容易につけられること、また、どんなに時間がかかることでも、自分が何をやるべきかがわかり、かつ十分能力の範囲内で処理ができるということです。わからないことがあれば、わかる人を見つけてどんどん聞きましょう。抱え込んでしまうと、問題が起こることもあります。また、仕事を“楽しくする”ためには、自分の行う行為が何のためなのかを掴んでいることが重要です。これは誰も教えてくれません。自分自身で考えることが大事です」――。

さらに古屋氏は、仕事をうまく進めるために、以下の3つのポイントを提言しています。

  • 仕事(指示)を受ける際に、よく聞いておくこと。しつこくても良い。
  • 考え込みすぎるな、わからなければ誰かに相談しよう。聞くことは怖くない。
  • 100点の答を出そうとするな。時間をかけることのほうがマイナス。

これら古屋氏の語る「仕事」の極意に、学生たちは興味深く耳を傾けていました。

古屋氏は最後に、「大学生のうちに色々なことをやっておきましょう。たくさん勉強をしましょう。授業を受けるだけでなく、社会勉強も大事です。旅行やアルバイトなどをしながら、視野を広げてください。どんどん挑戦しましょう」と、これから社会へとはばたく学生たちに向けてアドバイスを送り、今回の講演を締めくくりました。
 

<今回のセミナーに参加した学生の声>

  • 理化学研究所に対して、最先端の研究をしているという漠然的な印象を持っていましたが、研究者を支える事務の重要性など別の視点からの理解も得られて面白かったです。
  • 一見地味な立場のように見える事務だが、研究者を支えるだけではなく牽引する対等な立場であることに驚きました。
  • 感謝される人間、尊敬される人間、信頼される人間。事務という枠組みではなく自分がどんな人間になれるか、将来のために努力したいと思いました。
  • 今回の講義を受けて、仕事についての考え方が変わりました。楽に、楽しくするのお話を聞いたとき、すごく納得しました。自分の能力を全て発揮できるような仕事につけるように、今しっかり学べることを学んで、自分に身につけられるものを身に付けたいと思いました。
  • 仮に今自分が社会に出たとして、足りないことが多すぎると思ったので、それを学生生活の中で一つでも多く経験しておこうと思いました。
  • とても興味深いお話を聞き将来について考えさせられました。技術職につこうと考えておりましたが、事務職の重要性を聞き、もう一度自身の就職について思案したいです。
  • 理化学研究所という枠組みに限った話ではなく、これから社会に出る上でのヒントを得る事が出来たと感じています。自分は研究者という道には進まない可能性の方が高く、現在学んでいる事とのギャップを感じていました。しかし今回の話を聞いて、今学んでいる事と、自分が将来進む道には必ず何かしらの影響があることを確信しました。
  • 今回の講演を聞き、陰で支える人の大切さ、有り難さを実感しました。なんとなく勝手に裏方が格好悪いような、そんなイメージを抱いてしまっていた私でしたが、今回の講演で支えてくれる人への感謝を大切にしたいと思いました。
  • これからの社会は私たちが新しい技術を生み出して行かなくてはならないとわかりました。
  • 自分が現在考えていることにとらわれず、学生のうちに様々な経験を積みたいと感じました。そのためにも様々な場所に行き、様々な人と関わり新しいことに挑戦していきたいです。
     

<講師プロフィール>

国立研究開発法人 理化学研究所
理事長室長/元理事 古屋 輝夫 氏

昭和54年3月東洋大学工学部機械工学科卒業、同年4月理化学研究所入所、昭和61年4月科学技術庁出向、昭和63年4月大型放射光施設準備室、平成3年7月海洋科学技術センター出向、平成4年7月フロンティア研究推進部、平成10年7月総務部人事課長、平成15年10月経営企画部企画課長、平成18年2月横浜研究所研究推進部長、平成20年7月総務部長、平成21年4月理事、平成27年4月理事長室長、現在に至る。