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2017年度 第1回 未来を拓くトップセミナー「私の半生 ―岐路と選択―」を開催しました(板倉キャンパス)

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第1回 未来を拓くトップセミナー「私の半生 -岐路と選択-」

2017(平成29)年6月14日(水)、2017年度の第1回目となる「未来を拓くトップセミナー」を板倉キャンパスにて開催しました。本セミナーは、各界において指導的立場で活躍している方々を講師としてお招きし、将来への指針となるご講演をいただくことで、学生のキャリア形成の一助とするために開催しています。

今回は講師に2015年に文化勲章およびノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学特別栄誉教授の大村智氏をお招きし、「私の半生 -岐路と選択-」と題したご講演をいただきました。セミナーは講演会場の1102教室だけでなく中継会場の1101教室も満席となり、合計で約800名の学生が参加しました。

この日の司会進行は生命科学部の金子律子学部長が務め、講演に先立って竹村牧男学長より趣旨の説明を行った後、生命科学部の伊藤政博教授から講師の大村氏の紹介がありました。

私の半生 -岐路と選択-

講演の前半では、山梨県の農家に生まれた大村氏の生い立ちから、中学の恩師、高校・大学のスキー部での活動で得た研究にも通ずる気付きや友情など、氏の現在に至るまでの岐路となったエピソードをお話しいただきました。

その中で、大村氏は大学卒業後、都立工業高校の教諭となったが、母親の日記帳に書かれていた「教師の資格は自分自身が進歩していることだ」という言葉に感化され、東京教育大学(現・筑波大学)理学部の聴講生となったというエピソードでは、大村氏の話を聴く学生一人ひとりが自身のキャリア形成と重ね合わせ、大きく頷く一幕がありました。

その後、東京理科大学の大学院修士課程へ進学し、高校教諭として働きながら研究者としてのキャリアをスタートさせました。大学院修了後は山梨大学の工学部発酵生産学科の助手として着任し、微生物の研究と出会うことになります。その2年後、1965年に北里研究所に着任するまでを当時の貴重な写真を交えてお話しいただきました。

講演の様子


講演の後半は、大村氏の研究内容についてご説明をいただきました。

大村氏は、これまで各地の土壌を採取して微生物を分離、培養し、微生物の生産する有用な天然有機化合物の探索研究を行ってきました。
最新の研究成果として、東京の明治神宮外苑で採取したカビから採取されたピリピロペンという化合物が動脈硬化を引き起こすコレステロールの変質を防ぐ薬として、また、アブラムシを防ぐ農薬として実用化を進められていることを化合物の構造式も用いながらご説明いただきました。

このような大村氏の研究成果として、1965年から2016年までに、1科、14目、69種の微生物を発見し、そこから493もの新しい化合物を発見。そのうち26が実用化され社会で役立っているとご説明をいただきました。

続いて、ノーベル生理学・医学賞を受賞に至った、微生物の生産する天然有機化合物「アベルメクチン」の発見と、それを基に開発された「イベルメクチン」についてお話をいただきました。
大村氏は客員研究教授として派遣されたアメリカのウェズリアン大学での経験から、帰国後にメルク・アンド・カンパニーとの共同研究を開始しました。この共同研究は後に「大村方式」とも呼ばれ、企業から資金を得て研究を行い、その成果を企業が商品化し、その利益でまた研究資金を得るというものです。大村氏は人間用の薬を開発する大企業との差別化を図るため、動物薬の開発を目指しました。その中で発見されたのが放線菌が生成するアベルメクチンでした。そして、このアベルメクチンの安全性を高め活性化させた化合物が抗寄生虫薬として利用されるイベルメクチンです。年に1度の投与で劇的な効果を持つ画期的なこの抗寄生虫薬は世界中で牛や羊などの家畜、犬・猫といったペットに使用されています。

講演の様子そして、イベルメクチンを人間用に応用した治療薬「メクチザン」が開発されました。この治療薬はブユによって媒介される線虫により失明を引き起こす「オンコセルカ症」の撲滅のため、1987年から世界銀行の支援によって無償供与が行われました。さらに、蚊によって媒介される線虫が引き起こすリンパ系フィリラリア症にも2000年から無償供与が適用されています。体格に応じた分量を年に1回飲むだけで効果が得られる治療薬の供与により、2億2700万人が疾患から守られています。WHO(世界保健機関)の報告によると、こうした無償供与の活動により、リンパ系フィリラリア症は2020年に、オンコセルカ症は2025年に撲滅される見込みということです。


講演の終盤では、リーダーとして、経営者としての取り組みをご紹介いただきました。

研究室で注力されている人材育成では、世界中の有識者を招いたセミナーの開催や若手研究者の海外派遣などの取り組みをされており、さらに、埼玉県に建設された北里研究所メディカルセンター病院で収集した絵画を飾るヒーリングアートの先駆けとなった取り組みや、故郷の山梨県韮崎市に温泉や韮崎大村美術館を建設するなど経営者としての地域貢献についてもご紹介いただきました。

講演の最後に、リーダーの条件として「実践躬行」と「至誠惻怛」の2つの言葉をご紹介いただき、学生達へ『失敗を恐れないことです。成功した人は誰よりも多くの失敗をした人です。』とメッセージをいただきました。

講演後の学生からの質問にも「研究とは失敗するもの。繰り返し失敗している中からたまたま成果が生まれるのだと思います。」と笑顔で受け答えをしていただきました。

講師略歴

講師写真

北里大学 特別栄誉教授
大村 智氏

1935年山梨県韮崎市生まれ。北里大学特別栄誉教授、日本学士院会員、米国ウエスレーヤン大学マックス・ティシュラー名誉教授、(学)女子美術大学名誉理事長。微生物の生産する有用な新規天然有機化合物の発見を目指して独創的な研究を推進し、約500種類の化合物を発見。それらのうち、26種が医薬、動物薬、生化学研究用試薬、農業用薬剤として広く使われ、感染症の治療・撲滅、生命現象の解明などに貢献している。特に抗寄生虫薬イベルメクチンは熱帯病のオンコセルカ症およびリンパ系フィラリア症、糞線虫症、疥癬の予防・治療薬などとして年間約3億人に使われており、2015年に文化勲章およびノーベル生理学・医学賞を受賞した。

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