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教員が語る大学院の魅力(ビジネス・会計ファイナンス専攻 杉山晶子教授)

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 会計学に求められている社会的役割を考える

杉山

Q.教員としてご自身の専門分野を踏まえ、「研究者として研究」することの意味とは?

会計学に求められている社会的役割を考える

会計学を研究対象とする者にとって「研究者として研究」することの意味は、おそらく一つには会計学はいかなる理由から学問たり得るのかという問に対する納得のいく答えを探求するためと考えられます。このことは、恩師の一人である鈴木義夫先生(明治大学名誉教授)が日頃からおっしゃっていることであり、幸いなことに、先生には今なお研究会を通してご指導賜っております。

同先生は、上述の問に対する答えとしてご著書の中で次のように述べています。すなわち、会計は用語と数値(金額)から成り、この記号を社会的・制度的な関係の中に位置づけ、その機能を注視し、地道に思考を巡らすならば、会計研究はその社会科学たる地位を確固たるものとし、世界経済に関係した現代会計の役割を分析するための新たな視点、すなわち記号機能論の分析視角を生み出す可能性を大いに高めることになるというのです。(注)私は、残念ながら未だ記号機能論を自分自身の研究手段として十分に活用できるまでに至っておりませんが、ライフワークとして挑戦する所存です。

(注)鈴木義夫・千葉修身(2013)『会計研究入門“会計はお化けだ”』森山書店.(480)

Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。

子ども時代の疑問と恩師たちとの出会い

日本経済の高度成長期に子ども時代を過ごしたので、世の中の急速に変化を何となく肌で感じていたのを覚えています。当時は、社会における経済現象と家計における消費生活がうまく結びつきませんでした。たとえば、需要曲線と供給曲線が交わったところでモノの価格が決まると教科書に書いてあるものの、スーパーマーケットや商店街にお使いに行っても、その実感がわきません。人間の営みの一つである経済活動は、一体どのような仕組みになっているのだろうかという、漠然とした疑問をもちました。思えば、これが社会科学に関心を寄せる端緒であったのかもしれません。

時が経ち、大学は商学部に入学し会計学を学びました。一定期間の企業の膨大な量の経済活動は、会計というフィルターを通して用語と数値に変換されて財務諸表という一組の会計文書に集約され、それが会計監査を経て金融・資本市場の信頼性を支えていることを知りました。社会人になるためにはまだまだ学んでおくべきことがあるのではないかと思い、大学院に進学することを決め準備を始めました。ゼミの指導教員である鈴木義夫先生の勧めもあり、経営学研究科で財務会計論の教鞭を取られていた故嶌村剛雄教授に師事することとなりました。これが、研究生活の扉を開けた瞬間だったのだと思います。

Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。

会計上の資産とは何かをテーマとして、繰延資産、繰延税金資産を研究する

大学院の博士前期課程では、会計上の資産とは何かというテーマに取り組むための一つの事例として、繰延資産の資産性を研究テーマとしました。企業は、調達した資金を資産という形で運用し、利益を追求しています。財産価値がなく個別譲渡性もない多額の支出の結果である繰延資産が、なぜ会計上資産として扱われているのかを明らかにしたいと考えたからです。繰延資産が会計上資産として扱われている論拠に加えて、会計の処理および手続きは、商法(現会社法)、証券取引法(現金融商品取引法)、法人税法を主とする会計制度の中で機能しているということを改めて認識いたしました。

大学教員となってからは、予測と見積りに依存して金額が決定され、一定の条件のもとで会計上資産として扱われる繰延税金資産および当該資産の計上を定める税効果会計基準に関する研究に取り組みました。このような不確実性の高い資産に配当制限がないことにも、疑問をもちました。日本企業に税効果会計基準が適用された時期からしばらくの間は、企業に対するアンケート調査やヒアリング調査を実施して、会計理論と会計実務の両側面から繰延税金資産の実態に迫ろうと試みました。とりわけ、2000年代以降は急速に会計基準の国際的コンバージェンス(収斂)が進展したため、このような状況を巡る国内外の動向からも目が離せなくなりました。

あらゆる学問は過去の研究の蓄積をベースとして新しい知見が加えられていくものであり、したがってその時々における時代の水準があると思います。とりわけ1990年代以降は、金融工学やIT(情報技術)の発達により複雑で多様な金融商品が生み出され、それに伴い企業のファイナンス活動も複雑化し実態がみえにくくなっていきます。これらの取引は会計のフィルターを通してはじめて、財務諸表という会計文書上に表現されることになります。経済活動は時代とともに変化していきますが、虚心坦懐に研究対象に取組み、当該対象の分析を通して会計が社会的・制度的に果たす役割を解明したいと思っています。

Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったこと?

仕事を続けられていることへの感謝

多くの社会人がそうであるように、とりわけ時間をマネジメントすることが難しいと感じる時期を幾度か経験しています。子育てや家族の介護やそれに付随する一連の対応には、相当な時間を要します。もう少し工夫できなかったものかと残念に思いますが、その時々は無我夢中でした。もし、教員・研究者・母親・妻・娘・大学業務における役職など、それぞれの役割に対するその時々の成績表が示されるとしたら、その結果は惨憺たるものであろうと想像できます。

しかし、これらの経験は必ずしもマイナス面ばかりではなく、時を経てたとえば教育にとってプラスとなるといった側面もあると思います。そして、何よりも仕事を継続することができたということに衷心より感謝しています。研究に関する限り、試行錯誤をしつつ取り組みを続けるというのが私にとって目標にたどり着く唯一の答えのように思います。

Q.大学院で学ぶことの魅力とは?

多角的視点から課題を発見し解決する方法を考案すること

大学院では、ごく少人数の講義や演習が中心ですので、自ずと学部とは比較にならないほどの主体性と勉強量が求められることとなります。取り組む対象となる学問領域も、専門分野を中心とする領域に集約されてきます。

興味関心の高い分野の研究を深めることで、学部時代とは異なる次元から当該分野で起こっている事象を観察したり捉えたりすることができるようになります。それはまた、新たな疑問を抱えることになりますが、それが研究課題へとつながっていきます。先人の研究の蓄積から学んだり院生仲間や教員と議論したりすることで、様々な角度から課題を考察し試行錯誤を繰り返しながら解決の糸口を探していくこととなります。

このような経験は、大学院修了後のキャリア形成において皆さんを大いにバックアップしてくれるものです。研究に専心し没頭する、何ものにも代え難い時間を手にすること、そしてそれに基づく成果を実感すること、それが大学院で学ぶことの最大の魅力ではないでしょうか。

Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。

進取的な視点から、新たなステージの目標を設定する

ビジネス・会計ファイナンス専攻の博士前期課程では、会計分野に焦点を当てるなら、組織の経理部門や財務部門で活躍するビジネスパーソン、公認会計士・税理士といった会計プロフェッションがイメージできることでしょう。たとえば、ビジネス・会計ファイナンス専攻で研究しながら、公認会計士や税理士を目指すというのも、目標達成のための有益な選択肢のひとつです。さらに、博士後期課程までを視野に入れるのであれば、企業、研究所、大学においてビジネス・会計ファイナンス領域の新しい課題に対応できるビジネスリーダーや、教育・研究者として活躍することが、課程修了後の進路となります。

 皆さんは、大学院進学とともに新たなステージでの目標の達成に一歩近づくこととなります。是非、大学院入試説明会に参加され、そこで疑問点や不安を解決し、本学大学院の扉を開けてくださることを期待しております。


プロフィール

氏名: 杉山 晶子(すぎやま あきこ)

経歴: 現在、東洋大学大学院経営学研究科ビジネス・会計ファイナンス専攻 教授

    明治大学商学部卒業、同大学院経営学研究科博士後期課程単位取得満期退学。

    秋草学園短期大学を経て、2007年より東洋大学経営学部准教授。2010年より同教授。

専門: 財務会計、税務会計、国際会計

著書: 『財務会計の現状と展望』(共著)白桃書房(2014年)、

    『IFRSにおける資産会計の総合的検討』(共著)税務経理協会(2014年)など。


(掲載されている内容は2016年5月現在のものです)