東洋大学が、現在の「総合大学」としてその地位を確立するまでには、いくつもの苦難があった。戦後、財政難が深刻だった時代に、本学法学部の開設に尽力した主要人物のひとりが水島廣雄氏である。
1956(昭和31)年、水島氏は法学部開設と同時に専任教授となり、永きにわたり同学部で教鞭をとり、法学教育に情熱を注いだ。水島氏は日本で最も若く法学博士の学位を取得したことでも知られる。教員として学生指導に携わる傍ら、日本興行銀行(現・みずほ銀行)勤務を経て、百貨店・そごうの社長、会長を務めた。学者・教育者である一方、「デパート王」として財界を代表する企業経営者でもあった。
本書では、水島氏の生涯を綴っている。
2014(平成26)年に102歳でこの世を去るまでの足跡をたどり、水島氏とゆかりのある数十名の方々が追想文を寄せている。その中には、本学の総長であった故塩川正十郎氏や常務理事であった故田淵順一氏、現在、副学長・法学部教授である小林秀年氏(水島氏に師事)なども、水島氏との当時の思い出や感謝の言葉を述べている。
水島廣雄追想録出版委員会『評伝 水島廣雄 あとから来る旅人のために』諏訪書房,2016