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第3ユニット 第4回研究会報告

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「辺境のツーリズム ブータンの近代化と牧畜民ブロクパのアイデンティティの行方」

第3ユニット第4回研究会報告

2012年2月20日(月)、東洋大学白山キャンパスにて、「辺境のツーリズム ブータンの近代化と牧畜民ブロクパのアイデンティティの行方」と題する発表が、脇田道子氏(慶應義塾大学)により行われた。

ブータン東部のインドとの山岳国境地帯にある二つの谷、サクテンとメラには、ブロクパ(Brokpa)とよばれる牧畜民の少数民族が住んでいる。長い間、外国人の訪問が制限されていたが、2010年9月にツーリズムが解禁された。脇田氏は、急速に進行するこの地域のツーリズム開発に焦点を当て、ブータンの近代化とブロクパの人びとのアイデンティティの行方について考察された。

ブータンのツーリズムの特徴は、外貨獲得と雇用対策への大きな期待から国家全体の開発計画の中に位置づけられていることにあるという。特に最近ではGNH(The Gross National Happiness:国民総幸福度)などでも注目を浴びている。日本では、ブータンは幸福の国というイメージが強いが、GNHはあくまでも「開発の理念」であって、ブータンの人が皆、幸福だという意味ではない。

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ブータン観光の文脈の中では、伝統は、大きな「売り」になっている。ブータンへのツーリストの数は年々増加しているが、地域に偏りがあるため、開発の遅れた東ブータンにおける新しい観光ルートの開拓が急務となり、サクテンとメラに白羽の矢が立ったという。牧畜民である彼らの文化は一般のブータン人にも珍しく、「民族観光」(エスニック・ツーリズム)の対象となっている。

今年中に予定されている東ブータンへの国内航空路の新設やインフラ改善などによるツーリストの増加も期待されているが、「伝統とモダニティ間の緊張」はこの地域においても例外なく強まっている。今後、ブロクパが自文化見直しの方向へ動くのか、あるいは一般のブータンの人びとへの同化に向かうのか、ブロクパ出身の教育を受けた「民族エリート」が新たな道を開くのか、彼らの今後は注目に値すると氏は締めくくられた。