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第1ユニット 第5回研究会報告

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「井上円了における伝統仏教:教学体系と仏教・哲学一致論」

2012年11月28日、東洋大学白山キャンパス6号館第3会議室において客員研究員の佐藤厚氏による研究発表が行なわれた。題目は、「井上円了における伝統仏教:教学体系と仏教・哲学一致論」。発表者による要旨は次のとおり。

第1ユニット第5回研究会報告

井上円了は明治20年(1887)に『仏教活論序論』を著わし、廃仏毀釈により沈滞していた仏教界に活力を与えた。本書の中心の一つは、仏教が西洋哲学や科学と一致することを説いたことであった。この中、円了における仏教と哲学との一致(仏教・哲学一致論)とはどのようなものであっただろうか。普通に考えると、仏教と西洋哲学とをそれぞれ研究し、それらの一致する点を見出して両者を結合するという形が考えられるであろう。

しかし私は、円了の基本的な考え方は、日本の江戸時代に存在し、宗派を超えて仏教の一般認識となっていた仏教体系、すなわち(1)倶舎宗、(2)法相宗、(3)天台宗・華厳宗という枠組みであると考える。本発表では、それを「伝統仏教体系」と呼ぶ。円了は、この伝統仏教体系の三種類の仏教教理を、天台宗の三諦の論理(仮、空、中道)によって関連付けるほか、人間の思想発達の規則に該当させるなど、新たな概念を付与した。そして、これに西洋哲学を当てはめるのである。

第1ユニット第5回研究会報告

円了は、(1)倶舎宗、(2)法相宗、(3)華厳宗・天台宗に該当する西洋哲学を、(1)唯物論、(2)唯心論、(3)唯理論の三論とした。私は、これら西洋哲学の三つの論は、西洋哲学にそうした考え方があったというよりは、伝統仏教体系の教理に適合する考えを西洋哲学から探し出し、仏教体系に当てはめたものと考える。ゆえに思想史的に齟齬が生じている部分もある。

このように円了の仏教・哲学一致論は、仏教と西洋哲学の双方を均等に見て、その対応を構想したのではなく、江戸時代の仏教学に軸足を置き、それに新たな意味を付与しながら、明治になって紹介された西洋哲学を当てはめていったものである。ここから思想史的に江戸時代と明治時代の狭間にいた円了像を見ることができるのである。

なお、発表の模様はこちらから見ることができる。