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第1ユニット 第2回研究会報告(2012年)

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哲学導入期の「実在」問題

7月27日(金)、2012年度第1ユニット第2回研究会が白山キャンパス5号館特別会議室において開催された。発表者は相楽勉研究員、発表題目は「哲学導入期の「実在」問題」である。

本発表では、西周以来に日本に導入された「哲学」がその当初いかなる知的探究として理解されていたかということを探る第一歩として、「実在」概念にかんする井上哲次郎の思考を辿った。「実在」は西洋哲学の根本問題であり、それがいかに把握されたかという点に「日本哲学」の出発点が示されていると考えられるためである。本発表では、彼が教鞭をとった東京大学文学部哲学科に学んだ最初期の哲学徒である井上円了、三宅雄二郎、清沢満之、さらには西田幾多郎にまで影響を与えた井上の「現象即実在論」の方法的核心を取り出すことが試みられた。

第1ユニット第2回研究会報告

哲次郎は論文『現象即実在論の要領』(1897)において、古来哲学界に存する実在論(Realismus)と唯心論(Idealismus)との対立の根本に「実在(reality)」とは何であり、それをいかに究明すべきかかという問題があると言う。彼自身は”reality”を、「現象ノ裏面」(『倫理新説』1883)にあって直接認識できないが「吾人の脳中に存するもの」と言い、その探究に関しては「現象に就きて徹底せる考察をなし、其還没する處より一転して到達するを得べきなり」(要領381)と言っている。同論文では、我々が経験する感情や思考などの主観的現象の分析を通じて、それらの根底に人格や精神などの「心的実在」を直観していく過程、心的現象を脳の作用とする科学的研究のうちで、個々の現象を包含する自然一般の客観的実在が見出されてくる過程、特殊現象の解釈がそもそも普遍的理法を論理的に要求することを見出す過程を分析している。さらに後年の論文『認識と実在の関係』(1901)では、主観的分析と客観的分析を超え「客観主観を融合貫徹せる一如的実在」の論証を試みている。

第1ユニット第2回研究会報告

哲次郎の思考に顕著なのは、「実在」の直接知を認めず、あくまで現象経験の分析を通じて論証するという批判的尺度を保持しつづけることである。ただこのように「実在」の常住不変性や超越性を強調しすぎると「現象の裏面」という関係性が理解しにくくなる。「世界の実在を活動として写象する〔表象する〕」という哲次郎自身にも残された課題にいかに答えるのか。それが以後の「哲学」に、そして今日の我々にも課せられた課題であると思われた。