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連続研究会「明治期における人間観と世界観」第9回

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第1ユニット連続研究会「明治期における人間観と世界観」
第9回研究会報告(小坂国継)

 2015年2月25日、東洋大学白山キャンパス6号館第3会議室にて、小坂国継客員研究員の発表による、「大西祝と『良心起原論』」と題された研究会が開催された。この研究会は、「明治期における人間観と世界観」をテーマとした連続研究会の一つとして開催されたものである。

  小坂氏はまず、大西祝の生涯について簡単に紹介し、次いで「良心起原論」の内容を概観した。そして、「良心起原論」以降の論考にも目配せしながら、その意義と限界点について指摘した。
 大西は「良心」を最も広い意味で捉え、「義務の意識」だけでなく、善悪に対する区別や感覚を含む道徳意識一般が良心であると考えた。そのため、良心の起原の解明こそが倫理学の根本問題とされるのである。さらに、理想とのギャップにおいて良心が働いていることから、理想の根拠を明らかにすることが、良心の起原を明らかにすることとされる。
 以上の点について大西は、自己本来の目的を達成しようとする衝動から説明する。このような衝動をもつために、「しなければならない」という義務の意識も生じるのである。この「目的」は、すべてのものが各々固有の目的を有し、その達成へと向かっているのだという目的論的進化を仮定することによって説明されるのである。
 後の大西の論文では、自己本来の目的を達成しようとする衝動を、宇宙全体の根本作用と一致するという形で基礎付けた。こうした宇宙全体の発展という考えは、井上哲次郎や西田幾多郎の哲学と共通するものである。しかし、同時に彼らとの差異もある。機械的進化を考えていた井上に対して、大西は目的論的進化を考えていた。また、西田は進化論を採用しなかった。
  以上のような大西の良心論に対して、小坂氏は「理想」の内容の不明瞭さや、「理想の進化」の信憑性ついて、若干の疑問を提出した。しかしそれは原理的な破綻ではなく、大西が早世しなければ修正されたであろう不徹底さに過ぎない。大西祝は多くの研究者にとって忘れられた存在であるが、その透徹した哲学的論理や批評的精神によって、日本最初の哲学者と呼ぶにふさわしい存在であった。この点を明らかにできたことが、この研究会の大きな成果であった。