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第1ユニット研究会

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第1ユニット海外研究者招待講演 善の曖昧さ―「精神の戦争」におけるドイツ人の教授達―

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 9月10日、東洋大学白山キャンパス6号館第3会議室にて、ウルリッヒ・ジーク氏(マールブルク大学)を迎え、「善の曖昧さ―「精神の戦争」におけるドイツ人の教授達―」と題された第1ユニットの研究会が開催された。

 ジーク氏は、第1次世界大戦期のドイツにおけるプロパガンダの三つの類型を示し、その思想史的課題を明らかにした。第一の類型は、エルンスト・リサウアーである。彼が書いたイギリスへの憎悪を煽る愛国詩は、大衆の広範な支持を獲得した。しかし、英国を中傷するよりも、ドイツの「善」を主張するほうが良いという風潮が広まったため、リサウアーは「騎士道的なドイツ文化」を否定するものとみなされるようになった。

 第二の類型が、「93人の宣言」である。多くのノーベル賞受賞者を含む学者たちが署名したこの宣言は、ドイツの行動を正当化し、ドイツに向けられた非難を否定するものであった。しかし連合国側の対独プロパガンダが成功を収めたのとは対照的に、この宣言は国際社会には受け入れられなかった。

 第三の類型は、ヴェルナー・ゾンバルトとルドルフ・オイケンのである。ゾンバルトは、イギリスを商人とみなし、ドイツを英雄とみなした。ルドルフ・オイケンも、イギリスの近代主義に対して、ルター、カント、フィヒテのドイツ哲学における人間主義を対置させた。そして、近代主義よりも優れた人間主義が、戦争の勝利を導くと主張したのである。

 最後に、ジーク氏は思想的課題を指摘した。自国の善や自らの善意志を過信したドイツの思想家たちによって、「善」の曖昧さ、善意志だけでは普遍的な倫理となり得ないことが明らかにされたのである。また、国家主義的な偏見への向き合い方も、課題として突きつけられているのである。以上のようなドイツのプロパガンダを通して、第1ユニットの課題である近代日本哲学の問題点も照射されたと言えよう。近代日本の思想家たちのもつ国家主義的な傾向をいかに考えるべきかについて、大きな示唆を得られたことが、この研究会の成果である。2