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連続研究会「明治期における人間観と世界観」第6回

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第1ユニット連続研究会「明治期における人間観と世界観」
第6回研究会報告(相楽勉・岩井昌悟)

 

 12月10日、東洋大学白山キャンパス5号館5303教室にて、相楽勉研究員と岩井昌悟研究員の発表による研究会が開催された。この研究会は、「明治期における人間観と世界観」をテーマとした連続研究会の一つとして開催されたものである。

  相楽研究員は「「美学」受容に見る明治期日本の人間観・世界観」という題目の発表を行った。相楽氏はまず、「美学aesthetics」という学問領域がいかなるものであるのかについて、バウムガルテンとカントを手掛かりにして概観した。バウムガルテンは、美学を感性の学にして美的なものについての学と考えたが、カントは感性論の側面を深めて、自然と道徳を媒介する感情の探究へと問いを深め、このことが以後の美学の議論の試金石となった。発表の後半では、西周が美学をいかに受容し解釈したかについて論じられた。西周は美的感情を、道徳的感情と区別した。道徳的感情は人との関係の中で生じる感情であるが、美的感情は利害とは関わらない感情なのである。ただし、美的感情の涵養を通じて文化を高める作用があり、政治にとっても重要な要素でもある。最後に相楽研究員は、今後の研究の見通しについて語り、発表を終えた。

  岩井研究員の発表は、「日本近世の仏伝に見る日本人の人間観――『釈迦如来誕生会』と『釈迦御一代記図会』――」というタイトルの発表であった。日本における釈迦の伝記の変容を通じて、日本人の人間観を明らかにするものであった。とりわけ近松門左衛門の『釈迦如来誕生会』と山田意齊作・葛飾北斎画『釈迦御一代記図会』を問題にし、インドの仏伝との差異を明らかにすることによって、インドとは異なる近世日本の規範意識を浮き彫りにしようとした。日本で変更が加えられたのは、父母の恩に報いることを重視する姿勢、家族を捨てるような出家は罪悪であるという点である。また、勧善懲悪の要素が強調されるとともに、最終的には悪人も救われるという筋立てになっている。このような日本的な変容を通じて、日本人の人間観を伺うことができるであろう。

 両研究員の発表は共通して、日本の外からやってきた思想を、日本人がどう受け止め、どう変容していったのかを明らかにしようとするものであった。「日本」という視点に囚われているだけでは見えなかったものを明らかにしたという点で、大きな成果のあった研究会であった。