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海外研究「オーストリアにおける多文化共生研究集会・国際学会参加」

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海外研究「オーストリアにおける多文化共生研究集会・国際学会参加」

 第3ユニットでは、8月17日から25日にかけて、海外研究「オーストリアにおける多文化共生研究集会・国際学会参加」を行うため、オーストリアに出張した。日本からの参加者は、宮本久義研究員(東洋大学文学部)、渡辺章悟研究員(東洋大学文学部)、堀内俊郎研究助手の3名であった。

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 8月18日、19日、インスブルック大学セミナー室にて「多文化共生社会に向けて-宗教・思想に何ができるか?」研究集会を開催した。開催趣旨は、多文化共生社会の思想基盤研究という第3ユニットの研究テーマについて、ジャイナ教、ヒンドゥー教、仏教の観点からみてどのようなアプローチが可能であるかを討議するということである。

 まず、Luitgard Soni博士が、「間文化的な文脈における物語の重要性」という発表を行った。仏教に由来する菩薩の物語が、多くの変遷を伴いながらキリスト教の聖者として受容され、カトリック教会の儀礼の中にも取り入れられ、祭日にもなるほど重視されて礼拝されていった事例を提示し、物語が宗教・文化の垣根を越えることを示した興味深い発表であった。Jayandra Soni博士(インスブルック大学講師)が、「非暴力と、間文化的対話におけるその役割」という発表を行った。古典インドの聖典『チャラカサンヒター』では討論において従うべき決まりを設けており、また、ジャイナ教では思想における暴力も避けるべきとされていることを指摘し、ジャイナ教では討論における行いの決まりが、生活における行いの決まりにまで引き上げられていることを指摘する内容であった。日本側からは、渡辺研究員が「大乗経典における慈悲と憐愍」と題する発表を行った。初期仏教から大乗仏教に至るまで共通に見られる「慈悲や憐み」(karuṇā, anukampā)には、他者と苦を共にするという「共感と共苦の思想」が基盤にあり、それが共生思想に連なることを指摘し、初期仏教から大乗経典に到るまでの重要な用例の提示を行った。さらに、その原語としてのサンスクリットの語源の分析と、英訳compassion, sympathy にも共通の意義が備わっていることをラテン語やギリシャ語の語源などから指摘し、思想的な普遍性があることを提示した。宮本研究員は、「ヒンドゥー教における個人と社会」と題する発表を行い、古典インドの聖典シュルティやスムリティでは個人の救済が主な関心事であるものの、現代インドのベンガル・ルネサンス運動では、社会における相互扶助という観点もクローズアップされていることを指摘した。インスブルック大学哲学科・神学科の先生方とも交流をもつことができ、今後の協力関係の礎を築くことができた。オーストリア2

 21日、ウイーン着。22日、11時より30分間、堀内研究助手が、ウイーン大学で開催されている国際仏教学会第17回大会(17th Congress of the International Association of Buddhist Studies (IABS))にて、「『楞伽経』における外教批判-仏教的観点からの多文化共生哲学の構築に向けて」と題する発表を行った。『楞伽経』という大乗経典が涅槃に対する外教の見解を批判している一段を取り上げ、梵・蔵・漢の資料比較による文献学的考察を行い、その外教批判を分析することにより、今西錦司のいう棲み分けの思想的バージョンである思想的「棲み分け」や、シルバールール(ゴールデンルールではなく)というのが、そこから導き出される多文化・多宗教の共生への智慧ではないかと論じた発表であった。当日夜は学会開催の夕食会にて、国内外の多くの研究者と交流を持った。23日は引き続き国際仏教学会に参加し、発表を聴講した。その後、国立図書館等を見学した。

今回の研究集会・学会発表の成果は、10月22日(水)に第3ユニット出張報告・研究会という形で報告し、また、年度末刊行の年報にも原稿を掲載する予定である。

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