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連続研究会「明治期における人間観と世界観」 第5回「西田幾多郎『善の研究』の人間観と世界観」

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第1ユニット連続研究会「明治期における人間観と世界観」
第5回「西田幾多郎『善の研究』の人間観と世界観」

 11月12日に、東洋大学白山キャンパス5号館5303教室にて、白井雅人IRCP研究助手による「西田幾多郎『善の研究』の人間観と世界観」と題された研究会が開催された。この研究会は、「明治期における人間観と世界観」をテーマとした連続研究会の一つとして開催されたものである。

 白井氏は、『善の研究』の人間観と世界観を明らかにするために、まずは『善の研究』執筆に至るまでの西田幾多郎の半生について概観し、その背景となるものを明らかにしようとした。漢学と数学を学び、高校時代には宗教を否定する手紙を書いていた西田であったが、大学卒業後には就職と家庭の不幸の問題に苦しみようになった。その苦しみの中で、キリスト教宣教師達との交流や禅仏教の参禅修行を通し、宗教に対する理解を深めていった。こうした背景から、『善の研究』の世界観や人間観には、仏教だけではなく、キリスト教の影響も大きかったということが指摘された。また、西田の漢学の素養から、儒教とりわけ陽明学の影響も見過ごすことができないということも指摘された。

講演者:白井雅人氏

 以上のような見通しのもと、『善の研究』の内容が検討された。『善の研究』の人間観として大きな特徴の一つは、個人の独立性を強調する人格主義である。『善の研究』の重要な術語である「純粋経験」は、統一を求める働きであるが、統一を通じて個を際立たせる働きとして考えられているのである。また、世界の統一を善なるものとみなす世界観をもっていた。ただし、西田自身は他力を強調するため、自己を救い出す他者としての神という問題が潜在的に含まれていることが指摘された。

 西田幾多郎の『善の研究』には、漢学や仏教といった伝統的な要素が含まれているだけではなく、キリスト教や個人を重視するリベラルな思想という明治期の新しい要素が含まれているのである。研究会では、伝統と革新性の両方を含む多面的な書物として『善の研究』の姿が描き出された。このことによって、明治期の思想の流れの中での『善の研究』の意義を明らかにしたことがこの研究会の大きな成果であった。