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第1ユニット 第6回研究会報告

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第1ユニット第6回研究会
「「中国哲学」学問領域の創立者としての井上円了」

1 2013年12月18日(水)、東洋大学白山キャンパス9号館2階第4会議室にて、講師に中華民国国立台湾大学副教授の佐藤将之氏を迎え、「「中国哲学」学問領域の創立者としての井上円了」という題目で、第1ユニット第6回研究会が開催された。

 従来の井上円了研究では、西洋哲学の受容、仏教の近代化といった問題が注目されてきたが、佐藤氏の講演では、「中国哲学」からの影響とその学問領域の確立への貢献に焦点があてられた。

 円了は、井上哲次郎「東洋哲学史」、島田重礼「支那哲学」、中村正直「漢文学」などの講義を東京大学在学中に受けており、その卒業論文は、日本における本格的な『荀子』注釈の嚆矢となった荻生徂徠の「読荀子」とまったく同じタイトルで『荀子』内容の哲学的解明を目指したものであった。また、中国哲学を主題にした論文を東洋学芸雑誌などに寄稿した。円了が荀子を主題に卒業論文を書いた理由として、上記の講義を受けたこと、荀子を読んで「活眼」したこと、『荀子』のもつ科学的・経験論的な思考様式に魅了されたということ、当時の日本の荀子研究の水準に対する自負、などが挙げられる。

 円了は、「読荀子」の執筆を通じて、経験認識による世界の正しい措定、礼儀の学による人格修養の必要性などを学んだと推測できる。これらは、妖怪学や修身教会運動といった、円了のその後の活動に活かされることになる。また、「易を論ず」という中国哲学に関する論文では、形而上学的本体への考察についての示唆を得たと考えられる。

2 中国哲学が円了の思想形成に大きな影響を与えたことが推測されると共に、中国哲学という学問領域の確立に果たした円了の役割も大きかった。井上哲次郎と共に、井上円了は、中国の古典思想を哲学的に論じた。こうした取り組みは、中国哲学という学問領域を開拓する、先駆的な試みであった。

 佐藤氏は、こうした中国哲学と井上円了の関係を明らかにするためにも、井上円了の中国哲学関係の著作集の刊行が望まれるとした。

 以上のような発表の後、質疑応答が行われ、積極的な意見交換が行われた。井上円了の思想に新たな光を投げかける、充実した研究会となった。