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第1ユニット 第4回研究会報告

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第1ユニット第4回研究会
「井上円了と哲学宗」

1 2013年10月16日(水)、第1ユニット第4回研究会が行なわれ、天理大学教授の岡田正彦氏が「井上円了と哲学宗」と題した発表を行なった。

 岡田氏は、とりわけ大正8年2月に『東洋哲学』に発表された「哲学上に於ける余の使命」を中心に、井上円了の後半生の事業について考察した。この最晩年のエッセイにおいて、円了は自らの生涯を前半生と後半生に分けてふり返り、これまでの事業を集大成する「哲学宗」の構想について詳しく述べている。哲学宗のバイブルを編纂し、「道徳山哲学寺」の本山である哲学堂を中心に、全国の同志を集めて教団を組織するという円了の構想は、同年6月に講演旅行中の大連で本人が逝去したために実現されることはなかった。しかし、井上円了の思想的営為の全体像を理解するためには、この晩年の構想を無視することはできないだろう。

 宗教の価値を哲学・理学の真理との一致に求める円了の宗教論は、これまで仏教思想の合理的側面を強調し、宗教の価値を相対化する「哲学仏教」の営みとして評価されてきた。しかし、井上円了にとって「哲学」の価値は相対的ではなく、むしろ絶対的であった。円了が目指したのは、宗教/仏教を哲学化することではなく、むしろ哲学/近代的思惟を宗教化することだったのではなかろうか。

 今回の発表では、円了の「哲学宗」の構想の起点として、明治23年に哲学書院から刊行された『星界想遊記』に注目しながら、円了が構想した哲学宗のバイブルや教団の組織化について、残された資料から類推していく作業を行なった。

2 主に後半生の事業に結実していく、井上円了のユートピア的な愛国思想については、大日本帝国憲法の制定に連動した、新しい近代国家への期待感や国民意識の高揚といった当時の思潮の動向に目を向けつつ、内村鑑三のような同時代の宗教思想家の言説とも比較しながら検討していく必要があるだろう。

 井上円了のユニークな「哲学宗」の構想を詳らかにすることは、近代国家形成期における日本の宗教・倫理思想の特質について、広く考察していくための重要な足がかりになるはずである。