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「ポスト福島の哲学」シンポジウム「風化と闘う技術」

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「ポスト福島の哲学」シンポジウム「風化と闘う技術」

 2014年11月30日(土)、東洋大学白山キャンパス9号館第4会議室にて、「ポスト福島の哲学」連続研究会の一環として、「風化と闘う技術」と題したシンポジウムが開催された。講演者は、CRMS市民放射能測定所の岩田渉氏および福島原発告訴団団長の武藤類子氏であった。

0 シンポジウムは村上勝三センター長のあいさつではじまった。2011年3月12日からの東京電力福島第一原子力発電所事故以降、政府やマスコミをはじめ、有効な手立てをもたないばかりか、情報が隠ぺいされ対策が進んではいないかのようである。これから長い年月にわたってこの風化と隠ぺいという状況にいかに立ち向かうかという問題関心のもと本シンポジウムは開催された。

 1まず、岩田氏の講演は「“フクシマ”の記念碑化」と題され、海外やあるいは日本国内でもしばしば見られるように、東京電力福島第一原子力発電所事故が「フクシマ」というかたちで総称されることがどうしても隠ぺい、過小評価ないし風化を孕んでしまうことを論じた。放射能による土壌汚染にしても、県境でとどまるのではなく、複数の県にまたがっており、大気中の放射性物質は、国境を越えて拡散している。にもかかわらず「フクシマ」という総称によって一つの県の名前を全面に押し出し「記念碑化」することで、事故影響の過小評価を可能とし、この「出来事」を「終わったこと」にしてしまうという「認識の罠」を含んでいるのではないか。岩田氏の講演は、具体的な事例や数値データを用いて、このことを説得的に論じるものであった。

2 続く武藤氏の講演は、「福島からの報告」と題された。使用済み燃料の取り出しや汚染水など現在の東京電力福島第一原子力発電所の様子、現在も高線量の汚染の続く福島県内の地域の様子、除染の問題、子どもたちの健康被害など、福島の現況について具体的な数値を用いて示した後、現在携わっている福島原発告訴団の活動を紹介した。2012年6月に発足したこの団体は、総勢1万4千人を超える告訴人からなり、原発事故の厳正な捜査と法的責任の追及を求めてきた。しかし2013年9月に福島地検が事件を東京地検に移送し、その直後に被告訴人全員の不起訴が決定される。そのなかで福島原発告訴団がどのような姿勢で引き続き取り組んでいくかが詳しく説明された。最後に、武藤氏自身が現在も住み続ける福島県三春町でこれまでどのような生活を行ない、原発問題にどのように関心を抱いていったのかが、美しい写真とともに紹介された。

 いずれの講演も、原発事故後も福島県内で生活を続け、現地で何が起きているのかをつぶさに見つづけてきた論者ならではの具体的で説得力のともなう講演であった。二つの講演の後にフロアとのあいだで行なわれた討論では、福島の現状がどうなっているのか、広島と福島では放射能被害にどのような差異があるか、被災者に対する差別の問題をどう考えるかといった問いが提起された。2011年3月から1000日が過ぎ、ますます「風化」が進むなか、実りの多い講演会であったと言えよう。