MENU CLOSE

第1ユニット 第2回研究会報告

  • English
  • 日本語

第1ユニット第2回研究会
「三宅雪嶺の哲学 ――儒教心学再生の試み」

渡部清先生 第1ユニットは、2013年7月10日(水)に、上智大学名誉教授の渡部清先生を講師として招き、東洋大学白山キャンパス2号館3階第1会議室にて研究会を開催した。この研究会では、二つの中心的なテーマについて論じられた。第一点は、原坦山の『大乗起信論』の講義が日本の哲学の形成に決定的な役割を果たしていたこと。もう一点は、東京大学哲学科初期の若い哲学者たちは東西洋の思想体系を総合しようと熱心に試みていた事実の指摘である。大乗仏教との対決とは別の例として、三宅雪嶺による儒教心学と西洋哲学を融合させた宇宙論の提示があるが、そうした総合化の事実が未解明のまま今日に至っているのである。

 原坦山は明治12年から21年まで東京大学で「仏書講読」を担当し、『大乗起信論』が主なテキストとして使渡部清先生用された。この『大乗起信論』の講義に触れた井上円了や井上哲次郎たちは、それに基づく「現象即実在論」を展開した。のちの西田幾多郎の『善の研究』も、大乗起信論の中心的論理を西洋哲学の枠組みの中で展開したものである。しかし西洋哲学に力点が置かれた現今の日本哲学研究は、原坦山と井上哲次郎の役割を見過ごした結果の偏向したものとなっている。先人の研究成果が見すごされた結果の「西田哲学」評価は学問性に欠陥のあるものであり、それは決して独自の独創的な思想ではないと知るべきである。そうした意味で、日本哲学研究は未だ正しく開始されていないといわざるをえない。

聴衆 三宅雪嶺は『哲学涓滴』の中で、哲学を中国哲学(情)、印度哲学(意)、西洋哲学(智)、の三つに分類している。彼によれば、「智」の立場はヘーゲルで極まり、ショーペンハウエルが「智」の立場に印度哲学の「意」の立場を加えた。そして今後は、さらに中国哲学の「情」の立場を加えることが望まれると結論付けられる。このような希望を三宅本人が実行したのが、『我観小景』と『宇宙』という二つの著作なのである。また、ここで彼が中国哲学として念頭に置いていたのは儒教であり、特に陽明学である。それ故、三宅雪嶺の『宇宙』とは、印度哲学と西洋哲学に陽明学を加えた哲学体系と言えるのである。

 以上のような発表の後、一般の参加者を交えた質疑が行われた。明治期の哲学をどのように受け止め、どのように研究するのか、重要な示唆を含む研究会となった。