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第2ユニット 第1回研究会報告

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呉正嵐氏(南京大学副教授)連続講演会を開催

go1 東洋大学国際哲学研究センター第2ユニットでは、2013年6月に南京大学中国思想家研究中心副教授の呉正嵐氏をお招きし、三度にわたる講演を行なっていただいた。呉正嵐氏は、六朝・明代の文学と思想を専門とする気鋭の研究者である。40代半ばの若さで主著に『六朝江東士族的家學門風』(南京大学出版社、2003年)、『金聖嘆評傳』(南京大学出版社、2006年)など多数あり、この方面での研究をリードする研究者である。

 この度の来日では、まず、6月14日(金)に、東洋大学大学院博士前期「中国文学特論2」(担当:坂井多穂子研究員)の枠内で、本学中国哲学専攻の大学院生らを対象にした特別講義を行なっていただいた。「六朝江東の士族文学の発展と変化」を主題とした、実りの多い講義であった。

 翌6月15日(土)には、早稲田大学早稲田キャンパス16号館308教室において、当センターと第17回宋代文学研究談話会の共催というかたちで、呉氏に講演をしていただいた。主題は「“根本六経”と“通釈教”――銭謙益の論じた“経を経とし史を緯とす”と蘇軾文学の模倣対象」(中国語での発表)であり、日本における宋代文学の研究者らとの活発な意見交換がなされた。

go2 第三に、6月19日(水)に、東洋大学白山キャンパス5号館5103教室にて第2ユニット主催研究会において、「明代中後期における文人の経学と文学思想との関係について」という題目の中国語での講演をいただいた。司会・通訳を坂井多穂子研究員が担当し、討論通訳を本学非常勤講師の馬雪峰氏に行なっていただいた。

 この講演では、明代の文人の経学が、北宋の欧陽脩・蘇軾の経学を継承・発展させたものであることを示すために、とくに次の三点について経学の刷新と文学思想の変革との関連が分析された。

 第一は、文人の経学の「自得の見を以て聖人の心を求む」(自らの見解によって聖人の心を追求する)と、文学の「文は以て道を載せる」(文学は道をのべる)と「文は変相を主とする」(文学は創新を主とする)の結合との関係である。

 第二は、経学において「親子の情」のなかの「自然の人性」(自然な人間性)が重んじられることと、文学において拘束を受けぬ深情が尊重され、胸の内を直叙することが重視されることとの関係である。

 第三は、経学における「道器合一」(道――現象の背後にある依拠や規律など、無形のもの――と器――具体的現象・有形のもの――を一体化させる)と、文学における「神明」(「法を超越した内在的魅力)ならびに「法度」(声律や修辞などの規則)の一体化との関係である。

go3 これらの点をめぐって、まず思想史の流れを確認したのち、明代の自然人性論の出現が「親子之情」の一端に始まること、「文以載道」と「文主於変相」とが文論の「結構」(structure)において統一を見ること、さらに唐順之の本色論と宋濂の「生色之融液」説との淵源関係などについて、具体的かつ説得的な議論が展開された。

 国際哲学研究センター研究員はもとより、本学大学院中国哲学専攻の学生など、多くの参加者があった。そのため、中国思想史に関する専門的な質問からはじまり、哲学的方法論に関する中国哲学と西洋哲学との違い、さらには「自然」という言葉/概念についての中国、西洋および日本の差異など、多岐にわたる質疑がなされた。国際哲学研究センターならではの多角的な議論の場であったと言えよう。